稚拙図書館

織賀光希

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映画館の座席でギャルに挟まれた話

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【上映まで10分】
僕は、ギャルに興味がある。だから、ここに来た。ここは、有名な場所だ。雑誌やSNSで、たくさん取り上げられることのある場所だ。どんな場所なんだろうと来てみたが、想像通り。ギャルとギャルが、楽しそうに話している。ちらほらと、真面目な人と、老夫婦もいる。そんな感じだ。

【上映から00分】
まわりには、たくさんのギャルがいた。でも、まだ隣は空いていた。正直いうと、そこまでギャルに近づきたくはない。やや距離をもって、ギャルとただいたいタイプだ。嫌な予感がした。別に、そんなに嫌ではないが。やはり来た。僕の右と左の隣に、ギャルが遅れてきた。どこにも逃げられなくなった。

【上映から10分】
オセ口だったら、僕もギャルになってしまっている。右と左を、ギャルに埋められてしまったから。でも、これはオセロではないから。普通の僕で、進めることが出来ていた。映画に出ている俳優を、ふたりで褒め始めた。ギャルが、右と左で褒め始めた。まるで、僕がいないみたいに。ギャルとギャルに挟まれたら、空気になる。それがこの、映画館オセロの、ルールってことか。

【上映から100分】
右と左のふたりのギャルが、喧嘩し始めた。食べたいもので、喧嘩している。ため息が、たくさん出た。普通の映画館で、普通の人だったら、ここで、怒りをギャルにぶつける人もいるだろう。でも、ここはギャル世界の映画館。ギャルが中心だ。ギャル込みで、今見ている映画は完成する。そうであることを、願いたい。

【上映から120分】
映画後に、からあげを食べるか。イタリアンを食べるか。まだ、論争している。本当に、どっちでもいい。でも、映画のなかに出てきたのは、からあげだった。主人公が、はふはふ言いながら、揚げたてを口に含んでいた。だから、僕はからあげ派だ。ギャルたちは、なぜか僕に聞いてきた。どちらがいいかを。僕が食べたいのは、からあげだと答えた。

【上映終わり10分】
仲良くなっていた。ふたりは、仲良くなっていた。僕とギャルのふたりは、仲良くはなっていない。ただ、僕に馴れ馴れしくはなっていた。エンドロールが終わって席を立ってからも、僕の近くにいた。僕は、最短ルートで、からあげのある和食のお店に、向かおうとしていた。ギャルは、ずっとこちらに話し掛けながら、付いてきた。たぶんだが、ギャルと同じ店だ。
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