異世界召喚されたら時の神子になりました

森崎優嘉

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第一章 2代目時の神子 ユーリ

メイリラルド歴610年(2)

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巨大な歪みが発生して1ヶ月が経った。各国の了承も終えて着々と準備が進められていたある日、最近は研究室に篭って出てこなかったラトルクが嬉しそうにやってきた…相変わらずの無表情で。

「母上、ついに完成しました」
「…え!?まさか、アレが?」

私の言葉に頷くラトルク…ついに、完成したのね!

「よくやったわラト!さすが私とルドの息子!!」
「後は母上が使って結果が分かります」

―――キーン―――

「丁度発生したからついでにラトも来なさい、そっちのほうが早いわ」

ということで私とラト、ルドで歪み直しと言う名の実験をしに瞬間移動した。

ちなみに説明をしましょうか。
ラトがルドと協力して研究していたのがラトのように歪みが見えていても直す力が無い人が歪みを直すことができる魔道具、赤、青、黄色の宝石みたいな形をしている物がそれ。色が違うのは役割が合って赤は小さい歪みを直すのに使う、青は大きい歪みを直す時に使って黄色はこの魔道具でも直せない歪みがある所に置くことによって私に場所が伝わるようになっている。付属に紙が付いているのだけどこれは世界地図みたいなものでどこにどのような歪みが発生したのか…地球だとタブレットみたいな物で縮小したりできるので詳しい場所も分かる、紙なので丸めたり折ったりできるし魔法が掛かっているから燃えることも濡れることも破けることもない便利もの、これを考えた我が息子に末恐ろしいと感じたのは無理もない。

「しっかりと歪みが治ってる、黄色い方も地図も作動しているし…これは成功ね」
「よかった」
「よくやったラト」
「父上と母上のお陰です」

…可愛いなぁ

「さ、陛下へ報告しましょうかね」

面倒だから執務室に直接瞬間移動したら陛下の驚き顔いただきました。

「びっくりさせんなっ」
「こっちの方が早く報告ができるので」
「そういう問題じゃねーよ!」
「まぁすいません…それではご報告、ラトルクの研究が完成し先ほど検証してみました…使えますよこれ、大成功でした」
「…まじか」
「まじです」

驚き過ぎて口が空いてる…王様ともあろうお方が、ほら、お義父様が呆れ目で見てますよ。

「おめでとう、ラトルク」
「ありがとうございます」

もうすぐで召喚の時もやってくる…魔王討伐に役立つわね。



   *   *   *



日を改めて再び私達は集まった。

「ユーリ、どうしたんだ?」
「実は…ラトに旅をさせようと思っています」
「!?」

後ろでラトが驚いているのが気配で分かる。

「…ラトルクにも言っていないようだな」
「今初めて言いました」
「急だな」
「巨大な歪みが発生してから細かい歪みの発生率が高くなってきました、正直多すぎて大変です。先日に魔道具も完成しましたし、ラトが動きたいと思っているのも知っていましたから調度いいかと」
「…母上、気付いて」

ずっと知ってた。歪みが見えるのに何もできない自分が嫌で魔道具の開発を初めていたのを、ずっと窓から外を見ていたことも…いつかラトはこの国に引きこもるのではなく大空へ羽ばたくだろうと思ってた。

「本来見えるはずのない歪みを見ることができるのに何もできない、それは破壊していくのを見ることしかできないのと同じ…ラト、貴方はどうしたい?」

ラト、いろんな道は用意してある…あとは貴方が選ぶだけ。

「僕は…行きたい、見ているだけなんて嫌だ」
「そう、分かったわ…時の神子からラトルク・ミドル・サーベイトに命令します。各地の歪みを直し、これから召喚される勇者が動きやすいように道を作りなさい」
「ご命令、承りました」

自分で言ってなんだけど、どこの劇よこれ。

「ふふ、無理せず頑張るのよ?いつでも相談しなさい」
「はい、ありがとうございます母上」
「んじゃあ決まりだな、国からも正式に許可しよう」
「ありがとうございます陛下」

こうしてラトルクの旅立ちが決まった。



   *   *   *



あれから一週間…ついに今日、ラトが旅立つ。

「無理せず、悩んだら相談するのよ」
「分かってますよ母上」
「気をつけてな」
「はい、父上」

この一週間で陛下とレイフィア、アランシスとのお別れも言ったようだし極力騒がず行動したいため偽名を使ってギルドカードも作ってある。

「役目も大切だけど、様々な人と触れ合いなさい」
「はい…行ってきます」

最後は滅多に見ない笑顔を浮かべラトルクは旅だった…この世界って平均寿命が地球と比べて500歳だから感覚が分からなくなるけどラトルクは81歳…地球での老人がこの世界では若いなんて。
ラトルクもこれから頑張っていくのだし、私も頑張らなくてわね。

私はそう決意した。
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