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3章 インターハイ予選へ向けて
014話 試合準備と、ユニフォームと ①
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SIDE:YUNO
翌日。
練習を早めに切り上げた私たちは、漫画研究部の部室に来ていた。
絵東先輩いわく、
「四人で一緒に画面見るなら大きいディスプレイがいいでしょ」
とのことだった。
「ユッコありがとねー、パソコン使わせてもらって」
「いいよいいよ、ユキちゃん卓球上手いって本当だったんだー」
「久しぶりすぎるからこうやってユニフォーム買うんだけどね、あはは」
先輩は漫研の部長さんとも仲が良かったらしく、漫研にある大きな画面のパソコンを使わせてもらう約束をしていたらしい。
私も三年になる頃には絵東先輩みたいに友人がたくさん作れるだろうか。そんなことをふと考えながら、私の漫研の友人に話しかける。
「宮ちゃんごめんね。みんなで押し掛けて」
「いいって、今日はインプットの日にするから」
「いんぷっとのひ?」
「そう。イラスト描いたり動画作ったりっていうアウトプットって、漫画見たりゲームやったりっていうインプットがないとインスピレーションが枯れてくるんだよ」
「なるほど」
アウトプットのためにはインプットが必要。卓球にも共通しそうな格言だ。
「そんなわけで部屋の後ろで漫画読んでるからメインPCは適当に使いな。わからんことあったら声かけて」
「ありがとう、宮本さん」
稔里ちゃんが宮ちゃんに礼を言い、卓球部四人が漫研のメインのパソコンを使わせてもらう。
といっても漫画を描いたりするわけではなく、ただネットでユニフォーム販売のページを見るだけだ。高校で配られた個人用のタブレットでも同じことはできるが、画面が小さくて四人同時に見られないということで漫研にお邪魔している。
「どこ見ますか?」
私もユニフォームを買うときは基本ネットだ。『今売れているユニフォームベスト〇〇』というサイトをいくつか見比べながら買うことが多い。
「ん、とりあえずメーカーのサイト見て回ろうか」
「メーカーのですか?」
「そ。うちらはまとめサイト見ても経験則でこれは着やすいとか動きずらいとかわかるけど、くどみかは一から見た方がいいんじゃないかなって」
「あ、そうですね」
つい四人であれがいいこれがいいと言い合うつもりだったが、たしかに美夏を置いてけぼりにはできない。
「メーカーってどこがあるんですか?」
「えっと、卓球専門メーカーだとBATA-FLYにNitakuにVIOTAS、スポーツメーカーだとMIZUHOに……」
「ひとつずつ見ていこう」
***
「ここのは通気性がいいから私は好きかな。細めで体型ハッキリ出るからデザインは人によって好き嫌いあるかも」
「なる。ゆの解説さんきゅー!」
メーカーのサイト一つずつを見て回って、私が美夏に対して解説をしていた。もちろん私だけで全メーカーのユニフォームを着た経験はないので、知らないメーカーは稔里ちゃんや先輩が代わりに解説に入ってくれた。
「大体これで一通りかな。くどみかだけじゃなくゆのちもアリスも、これが着たい、っていうのあった?」
こういうのを聞かれたとき、つい一番で手を挙げるのを躊躇してしまうのが自分の性格だった。そして子供の頃から正反対の性格をしていたのが隣の幼馴染だ。
「二つ目のところの、縞々のやつ可愛かったです!」
「あ、あれ可愛かったよね」
「うん、かわいい」
美夏の発言に、私と稔里ちゃんも同意する。これは意外と早くユニフォームが決まるかもしれない。
と一瞬思ったが、大事なところを見落としていた。
「でもこれ、青緑どころか青も緑も無いモデルだよ」
「あ……」
そうだった。
山花高校団体戦用ユニフォームの第一条件は学校カラーである『青緑色』。そこを完全に忘れてかわいいデザインを探してしまっていた。
「みんな忘れてたでしょ」
「はい……」
「青緑、って限定しちゃうとほとんど無かったんだよね。妥協して青系か緑系にする?」
「とりあえず大きく青系と緑系に絞って見直しませんか?」
「そだねー」
もう一度最初のメーカーから見直していく。青緑色、に絞って考えるとかなり少ないことに気付く。なんとなく卓球のユニフォームは青系が多いイメージがあったのだが、緑系は黄緑に近い緑で、青緑という色は中々見つからない。
「そーいえば、ユニフォームって上下別々に買うんですか?」
「うん、上下お揃いのデザインのもあれば、別々のもあるけど、両方に『JTTA』っていう卓球協会公認マークが付いていないと公式戦では着られない」
「そうなん!?」
「そう。だからミカのお店でテニス用やバドミントン用のそれっぽいユニフォーム買って着ても試合には出られないんだよ」
このあたりは、中体連の区予選くらいなら公認ユニフォームじゃない子もいた気がするが、高校の公式戦だと絶対守らないといけないと思う。
「下の方、短パンじゃなくてスカートのやつもあったね。あれカワイイじゃん?」
「スカートはダメ」
美夏の提案にピシっと反対したのは珍しく絵東先輩だった。
「スカートはよっぽどスタイル良い子が履かないと足短く見えるよ。このページも、他は日本代表選手が着てるのに、スカートタイプだけ関係ないモデルの子が着てるでしょ」
「本当だ」
全然そこまで注意して見ていなかった。
「アリスくらい手足長くてやっと似合うレベルだよ。くどみかもゆのちもスタイル良いけど、それでもスカートは短足に見えちゃうと思う。私みたいなちびっこいのが履いたら目も当てられない」
別に先輩も小柄なだけでスタイルそのものは良いと思うんだけれど。
「そんなわけで下はパンツスタイルでよろしく」
「りょ、りょーかいっす」
翌日。
練習を早めに切り上げた私たちは、漫画研究部の部室に来ていた。
絵東先輩いわく、
「四人で一緒に画面見るなら大きいディスプレイがいいでしょ」
とのことだった。
「ユッコありがとねー、パソコン使わせてもらって」
「いいよいいよ、ユキちゃん卓球上手いって本当だったんだー」
「久しぶりすぎるからこうやってユニフォーム買うんだけどね、あはは」
先輩は漫研の部長さんとも仲が良かったらしく、漫研にある大きな画面のパソコンを使わせてもらう約束をしていたらしい。
私も三年になる頃には絵東先輩みたいに友人がたくさん作れるだろうか。そんなことをふと考えながら、私の漫研の友人に話しかける。
「宮ちゃんごめんね。みんなで押し掛けて」
「いいって、今日はインプットの日にするから」
「いんぷっとのひ?」
「そう。イラスト描いたり動画作ったりっていうアウトプットって、漫画見たりゲームやったりっていうインプットがないとインスピレーションが枯れてくるんだよ」
「なるほど」
アウトプットのためにはインプットが必要。卓球にも共通しそうな格言だ。
「そんなわけで部屋の後ろで漫画読んでるからメインPCは適当に使いな。わからんことあったら声かけて」
「ありがとう、宮本さん」
稔里ちゃんが宮ちゃんに礼を言い、卓球部四人が漫研のメインのパソコンを使わせてもらう。
といっても漫画を描いたりするわけではなく、ただネットでユニフォーム販売のページを見るだけだ。高校で配られた個人用のタブレットでも同じことはできるが、画面が小さくて四人同時に見られないということで漫研にお邪魔している。
「どこ見ますか?」
私もユニフォームを買うときは基本ネットだ。『今売れているユニフォームベスト〇〇』というサイトをいくつか見比べながら買うことが多い。
「ん、とりあえずメーカーのサイト見て回ろうか」
「メーカーのですか?」
「そ。うちらはまとめサイト見ても経験則でこれは着やすいとか動きずらいとかわかるけど、くどみかは一から見た方がいいんじゃないかなって」
「あ、そうですね」
つい四人であれがいいこれがいいと言い合うつもりだったが、たしかに美夏を置いてけぼりにはできない。
「メーカーってどこがあるんですか?」
「えっと、卓球専門メーカーだとBATA-FLYにNitakuにVIOTAS、スポーツメーカーだとMIZUHOに……」
「ひとつずつ見ていこう」
***
「ここのは通気性がいいから私は好きかな。細めで体型ハッキリ出るからデザインは人によって好き嫌いあるかも」
「なる。ゆの解説さんきゅー!」
メーカーのサイト一つずつを見て回って、私が美夏に対して解説をしていた。もちろん私だけで全メーカーのユニフォームを着た経験はないので、知らないメーカーは稔里ちゃんや先輩が代わりに解説に入ってくれた。
「大体これで一通りかな。くどみかだけじゃなくゆのちもアリスも、これが着たい、っていうのあった?」
こういうのを聞かれたとき、つい一番で手を挙げるのを躊躇してしまうのが自分の性格だった。そして子供の頃から正反対の性格をしていたのが隣の幼馴染だ。
「二つ目のところの、縞々のやつ可愛かったです!」
「あ、あれ可愛かったよね」
「うん、かわいい」
美夏の発言に、私と稔里ちゃんも同意する。これは意外と早くユニフォームが決まるかもしれない。
と一瞬思ったが、大事なところを見落としていた。
「でもこれ、青緑どころか青も緑も無いモデルだよ」
「あ……」
そうだった。
山花高校団体戦用ユニフォームの第一条件は学校カラーである『青緑色』。そこを完全に忘れてかわいいデザインを探してしまっていた。
「みんな忘れてたでしょ」
「はい……」
「青緑、って限定しちゃうとほとんど無かったんだよね。妥協して青系か緑系にする?」
「とりあえず大きく青系と緑系に絞って見直しませんか?」
「そだねー」
もう一度最初のメーカーから見直していく。青緑色、に絞って考えるとかなり少ないことに気付く。なんとなく卓球のユニフォームは青系が多いイメージがあったのだが、緑系は黄緑に近い緑で、青緑という色は中々見つからない。
「そーいえば、ユニフォームって上下別々に買うんですか?」
「うん、上下お揃いのデザインのもあれば、別々のもあるけど、両方に『JTTA』っていう卓球協会公認マークが付いていないと公式戦では着られない」
「そうなん!?」
「そう。だからミカのお店でテニス用やバドミントン用のそれっぽいユニフォーム買って着ても試合には出られないんだよ」
このあたりは、中体連の区予選くらいなら公認ユニフォームじゃない子もいた気がするが、高校の公式戦だと絶対守らないといけないと思う。
「下の方、短パンじゃなくてスカートのやつもあったね。あれカワイイじゃん?」
「スカートはダメ」
美夏の提案にピシっと反対したのは珍しく絵東先輩だった。
「スカートはよっぽどスタイル良い子が履かないと足短く見えるよ。このページも、他は日本代表選手が着てるのに、スカートタイプだけ関係ないモデルの子が着てるでしょ」
「本当だ」
全然そこまで注意して見ていなかった。
「アリスくらい手足長くてやっと似合うレベルだよ。くどみかもゆのちもスタイル良いけど、それでもスカートは短足に見えちゃうと思う。私みたいなちびっこいのが履いたら目も当てられない」
別に先輩も小柄なだけでスタイルそのものは良いと思うんだけれど。
「そんなわけで下はパンツスタイルでよろしく」
「りょ、りょーかいっす」
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