はじまりはいつもラブオール

フジノシキ

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3章 インターハイ予選へ向けて

014話 試合準備と、ユニフォームと ②

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***

 各メーカーサイトの見直しも一通り終わろうとしていた頃。

「柚乃さん、これ」

 稔里ちゃんがあるユニフォームを指差す。表示されている色はブルーだが、色違いのグリーンが青緑色、制服のヤマコーカラーとそっくりな色味だった。

「あ、制服と同じ色だ」
「おー、よく見つけたアリス!」
「デザインもけっこう派手でかっこいい!」

 青緑色の色味、デザインについては四人とも合格点だ。

「アリスこのメーカーの持ってるよね。着心地どう?」
「はい、動きやすくて好きです」

 稔里ちゃんが着心地良いということは性能面の問題はないだろう。あとは練習試合までに届くかどうかだけど。

「じゃこれに決めようか。ゆのちどっか納品早いサイト知ってる?」
「それならわたしにまかせてくださいっ!」

 美夏が勢いよく手を挙げる。

「スポーツのオンラインショップは大体わかります! 納期早くて商品の梱包丁寧で卓球用品扱ってるところは、っと」
「おー、さすが工藤スポーツの跡取り」

 先輩が驚いているが、美夏は普段あんな感じでもスポーツ店の娘だ。それにことスポーツに関しては真面目で勉強熱心だ。

「ここならわたしもよく使ってるところで、ちょうど新学期セールもやってます!」
「あ、けっこう大きく割引になるんだね」
「連休前に届くから練習試合に間に合いそうだね。サンキューくどみか」
「ありがとう工藤さん」
「えへへ」

 自分達で決めた団体戦用のユニフォーム。しかも学校のカラーと同じ色。
 すごい嬉しくてテンションが上がりっぱなしだ。

「おー、ヤマコーカラーだ」
「ね、制服と同じ色だよね」

 後ろからのぞき込んできた宮ちゃんに答える。

「ジャージはくどみかん家で揃えるん?」
「あ、そうだ」

 ユニフォームのように絶対強制ではないけれど、運動系の部活ならジャージもお揃いのものが着たい。

「ミカ、ジャージってミカの家で作れる?」
「ん、後ろに学校名と部活名入れるんでしょ? 文字データあればすぐだよ」
「絵東さん、みのりちゃん、せっかくだしジャージのデザインも決めません?」

 つい勢いで言ってしまってから、漫研の部室を借りていることを思い出す。

「ってごめん宮ちゃん、漫研もうパソコン使うよね」
「それは全然構わないよー。そうだ、部長―」
「なに、晶クン」

 宮ちゃん部活ではあきらくんって呼ばれてるんだ。たしかに宝塚の男役ができそうなボーイッシュだけど。

「漫研で卓球部のロゴ作りません? タイトルロゴの作成ってやってみたかったんです」
「あー、いいねいいねやろう」
「ちょっとユッコ」
「わかってるってユキちゃん。もちろんお代なんて取らないよ。ウチらの趣味だから」


 なぜか流れでジャージの背中の文字デザインを漫研が作ってくれることになったようだ。

「文字は日本語? 横文字?」
 
 他の部活のジャージを思い出す。日本語と英語半々な気がする。

「マリ女って漢字でしたよね」
「そうだね。本当かどうか知らないけど、私が先輩に聞いた話じゃ、最初は英語だったけどよくテニス部と間違われたので漢字にしたらしいよ」
「それを聞くとうちも漢字にしたいですね……」

 たしかに卓球は英語だと「テーブルテニス」だ。テーブルが見えなくてテニス部に間違われるというのは冗談でなくありそうだ。

「『北海道札幌山花高等学校 卓球部』でいいかい? じゃサイズは卓球部を大きくして、頭文字だけいじって、フォントは……」

 みるみるうちにただの漢字が強豪校とか実業団チームっぽいロゴに変わっていく。

「みやもっちゃんすごいすごいー!」
「うん。かっこいい」

 作り始めてから一時間も経っていないんじゃないだろうか。そこには立派な山花高校卓球部のロゴが出来上がっていた。

「くどみか、これどうすればいい? PNGかJPG?」
「うん、PNGでうちのホームページの、そう、そこから……」

 小学生のまだ卓球を始めたばかりの頃、一時期漫画家に憧れて絵を描いては人に見せられるようなものを描けなかった私には魔法のような工程だった。

「よし、じゃこれから行く?」
「行く? どこへ?」

 稔里ちゃんはピンと来ていないようだ。

「わたしんち。どのジャージにするか決めるっしょ?」
「うちらは近いから問題ないけどアリスは? 時間大丈夫か」
「はい、お母さんに連絡入れておけば大丈夫です」


 ユニフォームを決めるだけのはずが、一気にジャージまで決めることになってしまった。
 でも、このみんなの勢いで物事を進めていく感じが、なんだかすごい高校生活、という感じがして私はひとりドキドキしていた。
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