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5章 激闘、二回戦!
025話 第一試合と、コピー能力と ①
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SIDE:YUNO
「よしっ!!」
思わずベンチからガッツポーズをしてしまった。
それくらい完璧なスマッシュだった。
第一ゲーム終盤で、リードを奪う貴重な一点。それ以上にスマッシュを反応できずに打ち抜かれるのは精神的にガクッとくる。
案の定、相手の刈屋さんはその後のラリーで明らかに精彩を欠き、というか正確には余計な力みが入り、11-9で美夏が第一ゲームを取ることができた。
跳び上がりたいほど嬉しいが、冷静に美夏を迎える。
「ナイスだよミカ、終盤のスマッシュめっちゃ効果的だった」
「みのりんに事前に聞いてなかったら反応できなかったよ。さすがナイスアドバイス」
汗をふき、スポーツドリンクを飲みながら美夏が答える。
「二ゲーム目、がらりと戦術変えてくるかもしれないから気を付けて。わざとゆるいボールがきても一回戦みたいに前に突っ込まないで」
「うぃ、じゃいってくる」
陸上やバレーボールでなく卓球に変わったとしても、やっぱりユニフォームを着ている美夏はスポーツの申し子の美夏だった。コートへ戻る美夏の後ろ姿が、輝いて見える。
***
二ゲーム目、相手は少し台から離れての打ち合いを選択してきた。
遠めからの威力のあるロングドライブは、とりあえず相手の速さに合わせるだけの初心者の前陣速攻では捌ききれない。
だが、台からの離れてのロングドライブは稔里ちゃんがよく使う打法だ。美夏が直接受けることはあまり無かったと思うが、先輩が打ち合っている姿は美夏の頭の中に入っている。
最初の方こそ記憶の中の先輩のフォームと自分のフォームにずれがあったのか、ミスが多めに出るものの、セットの中盤に入るころにはしっかりと打ち合いができるようになっていた。
2-7まで離されていたスコアを6-8まで接戦に持ち込む。
二点差まできたところで、相手も戦法を変えてきた。美夏のサーブがロングサーブしかないと見抜いたのか山を張ったのか、レシーブからフォアハンドの豪快なパワードライブで打ち抜いてきた。卓球ではサーブを一球目、そのレシーブを二球目、とカウントしていくので二球目攻撃と呼ばれる組み立てだ。
連続での二球目攻撃でゲームポイントを取られ、このゲームは7-11で落としてしまった。
それでも全然打ち負けてはいない。堂々と渡り合ってのゲームカウント1-1だ。
「後ろからのドライブをブロックするやつ、あれで良かった?」
「ばっちりだよ。中盤ほとんど点取れてたじゃん」
打ち方の確認をしてくる美夏を勇気付ける。実際私よりも上手なくらいのカウンターブロックだった。
「たぶんまたセットの初めから戦法変えてくると思うから、なるべく早く慣れて離されないように。美夏ならいけるから」
「うぃ」
美夏は短く頷くと、コートへ戻っていく。
***
SIDE:MEI
「最後のドライブ良かったよ」
「はい」
タオルで全身の汗を拭きながらミク先輩の声を聞く。
二回戦からこんなに汗かくはずじゃなかったのに。
「相手、回転に弱いみたいだから。最後のドライブも速さよりも回転量に打点が追い付いてなかったよ」
「ハイ」
「メイちゃん、もうわかったね。相手の子、強いよ」
「……はい」
どうして今まで無名だったのかはわからないが、相手の工藤って子は確かに強い。フォーム的に有栖川と同じコーチとか何か関係があるのかもしれない。ラクして勝つとか差を見せ付けて勝つなんて甘いことを言っていたら足元をすくわれる。中学もそれで何度コーチに叱られたことか。
「油断さえしなければメイちゃんのラリーはうちのレギュラー級だから。しっかり打ち勝ってきて」
「はいっ」
タオルを持ってコートへ戻る。
第三ゲーム、私はある作戦を考えていた。
レシーブ位置を半歩下げる。
相手の子はコースを変えるだけでロングサービスしか出してこない。
今回も、フォア側へのロングサービス。私は腕を振り上げると、ボールを切るように振り下ろした。
相手がツッツキとか下回転全般が苦手そうなのはこれまでの二ゲームでわかっていた。私はカットマンの経験はないけど、それなりに真似事で下回転ラリーするくらいのことはできる。大体ラリーになる前にカットを打ち返せないはず。
(えっ!?)
私のフォアカットに対し、相手の子はお手本のようなスピードドライブで返球してきた。あわてて連続のフォアカットを打つが、甘い球になったところをスマッシュで決められてしまう。
続けて今度はバックハンドのカットでラリーに持ち込むが、今度はループドライブで体勢を崩されたところをスピードドライブで打ち抜かれる。
こちらのサーブ権になったので、三球目カットの体勢に入りやすいように慣れないバックハンドサーブを出す。やっぱりレシーブのツッツキは素人同然のへろへろな球だ。そのボールをしっかりと下回転をかけてカットマンの体勢に入る。ツッツキはあんなへろってるクセに、カットを返球するドライブは別人のように上手だ。カットとドライブのラリーの末にネットに引っ掛けてしまう。
「メイちゃん、カットはダメだよ!」
ミクさんの言葉に、ハッとする。
そうだ、相手がこちらの想像通り、有栖川と同じコーチだったりするなら、カット打ちは得意に決まっている。私の素人カットマンなんかで点は取れない。
まだ0-3。打ち合いで追い付いて見せる。
「よしっ!!」
思わずベンチからガッツポーズをしてしまった。
それくらい完璧なスマッシュだった。
第一ゲーム終盤で、リードを奪う貴重な一点。それ以上にスマッシュを反応できずに打ち抜かれるのは精神的にガクッとくる。
案の定、相手の刈屋さんはその後のラリーで明らかに精彩を欠き、というか正確には余計な力みが入り、11-9で美夏が第一ゲームを取ることができた。
跳び上がりたいほど嬉しいが、冷静に美夏を迎える。
「ナイスだよミカ、終盤のスマッシュめっちゃ効果的だった」
「みのりんに事前に聞いてなかったら反応できなかったよ。さすがナイスアドバイス」
汗をふき、スポーツドリンクを飲みながら美夏が答える。
「二ゲーム目、がらりと戦術変えてくるかもしれないから気を付けて。わざとゆるいボールがきても一回戦みたいに前に突っ込まないで」
「うぃ、じゃいってくる」
陸上やバレーボールでなく卓球に変わったとしても、やっぱりユニフォームを着ている美夏はスポーツの申し子の美夏だった。コートへ戻る美夏の後ろ姿が、輝いて見える。
***
二ゲーム目、相手は少し台から離れての打ち合いを選択してきた。
遠めからの威力のあるロングドライブは、とりあえず相手の速さに合わせるだけの初心者の前陣速攻では捌ききれない。
だが、台からの離れてのロングドライブは稔里ちゃんがよく使う打法だ。美夏が直接受けることはあまり無かったと思うが、先輩が打ち合っている姿は美夏の頭の中に入っている。
最初の方こそ記憶の中の先輩のフォームと自分のフォームにずれがあったのか、ミスが多めに出るものの、セットの中盤に入るころにはしっかりと打ち合いができるようになっていた。
2-7まで離されていたスコアを6-8まで接戦に持ち込む。
二点差まできたところで、相手も戦法を変えてきた。美夏のサーブがロングサーブしかないと見抜いたのか山を張ったのか、レシーブからフォアハンドの豪快なパワードライブで打ち抜いてきた。卓球ではサーブを一球目、そのレシーブを二球目、とカウントしていくので二球目攻撃と呼ばれる組み立てだ。
連続での二球目攻撃でゲームポイントを取られ、このゲームは7-11で落としてしまった。
それでも全然打ち負けてはいない。堂々と渡り合ってのゲームカウント1-1だ。
「後ろからのドライブをブロックするやつ、あれで良かった?」
「ばっちりだよ。中盤ほとんど点取れてたじゃん」
打ち方の確認をしてくる美夏を勇気付ける。実際私よりも上手なくらいのカウンターブロックだった。
「たぶんまたセットの初めから戦法変えてくると思うから、なるべく早く慣れて離されないように。美夏ならいけるから」
「うぃ」
美夏は短く頷くと、コートへ戻っていく。
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SIDE:MEI
「最後のドライブ良かったよ」
「はい」
タオルで全身の汗を拭きながらミク先輩の声を聞く。
二回戦からこんなに汗かくはずじゃなかったのに。
「相手、回転に弱いみたいだから。最後のドライブも速さよりも回転量に打点が追い付いてなかったよ」
「ハイ」
「メイちゃん、もうわかったね。相手の子、強いよ」
「……はい」
どうして今まで無名だったのかはわからないが、相手の工藤って子は確かに強い。フォーム的に有栖川と同じコーチとか何か関係があるのかもしれない。ラクして勝つとか差を見せ付けて勝つなんて甘いことを言っていたら足元をすくわれる。中学もそれで何度コーチに叱られたことか。
「油断さえしなければメイちゃんのラリーはうちのレギュラー級だから。しっかり打ち勝ってきて」
「はいっ」
タオルを持ってコートへ戻る。
第三ゲーム、私はある作戦を考えていた。
レシーブ位置を半歩下げる。
相手の子はコースを変えるだけでロングサービスしか出してこない。
今回も、フォア側へのロングサービス。私は腕を振り上げると、ボールを切るように振り下ろした。
相手がツッツキとか下回転全般が苦手そうなのはこれまでの二ゲームでわかっていた。私はカットマンの経験はないけど、それなりに真似事で下回転ラリーするくらいのことはできる。大体ラリーになる前にカットを打ち返せないはず。
(えっ!?)
私のフォアカットに対し、相手の子はお手本のようなスピードドライブで返球してきた。あわてて連続のフォアカットを打つが、甘い球になったところをスマッシュで決められてしまう。
続けて今度はバックハンドのカットでラリーに持ち込むが、今度はループドライブで体勢を崩されたところをスピードドライブで打ち抜かれる。
こちらのサーブ権になったので、三球目カットの体勢に入りやすいように慣れないバックハンドサーブを出す。やっぱりレシーブのツッツキは素人同然のへろへろな球だ。そのボールをしっかりと下回転をかけてカットマンの体勢に入る。ツッツキはあんなへろってるクセに、カットを返球するドライブは別人のように上手だ。カットとドライブのラリーの末にネットに引っ掛けてしまう。
「メイちゃん、カットはダメだよ!」
ミクさんの言葉に、ハッとする。
そうだ、相手がこちらの想像通り、有栖川と同じコーチだったりするなら、カット打ちは得意に決まっている。私の素人カットマンなんかで点は取れない。
まだ0-3。打ち合いで追い付いて見せる。
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