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5章 激闘、二回戦!
025話 第一試合と、コピー能力と ②
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***
SIDE:YUNO
「ミカ、ナイスドライブ!」
相手のカットを美夏が見事なドライブで決める。
おそらく美夏がツッツキとか下回転が苦手なのをみて、カットは打てないと思ったんだろう。
生憎、美夏ははじめてすぐからカットマンである私の相手をしてきた選手だ。私はあんなその場しのぎカットに打ち負けるように美夏を育てた覚えはない。なんていうのは私の勝手な思い上がりだけれど。
相手の刈屋さんは早いテンポでの打ち合いに作戦を変えてきた。
第一ゲームは美夏も互角以上に打ち合えていたが、さすがに本気を出してきた相手はスピードもコースも第一ゲームより一段階ギアを上げてきた。
それでも打ち合える美夏はすごいが、じりじりと点差が詰められてくる。
特にバックハンドで、スピードドライブやカウンターブロックと同じリズムで一瞬だけ手首の返しを早くして打ってくるパワードライブが厄介で、さっきからあれの返球でミスをして失点を繰り返している。
美夏が卓球歴二か月弱の初心者でここまで驚異的な動きができるのは、目で見た技を覚えるという特技を持つ美夏にとって、稔里ちゃんと絵東先輩という最高のお手本がいるからだ。その二人が使用しないバックハンドのパワードライブは返し方がわからないはずだ。
「ミカ、回転しっかり見て!」
ドライブにラケットを被せてとか具体的なアドバイスを言うこともできるが、コートの後ろから叫んでいるので相手に筒抜けの状態だ。向こうは私の声を聞いてナックル気味で打ってくるとかそれくらいの対策をすぐにしてくるレベルの相手なので抽象的なアドバイスしかできない。
それでも美夏はパワードライブが来るときの一瞬の手首の返しを察知して素早く半歩下がってドライブをドライブで受け止めるといった返球をみせるようになってきた。
6-9。三点差のまま終盤まできた。まだ挽回できる点差だ。相手の刈屋さんがまた高速ラリーを仕掛けてくる。
そのとき、美夏がバックハンドの打ち合いから手首を一瞬下げると振り上げるようなパワードライブを放つ。今まで刈屋さんにやられてきた技だ。まさか自分の技をやられるとは思っていなかったであろう、刈屋さんの返球はコートオーバーする。
美夏が人の動きを見てその技を覚えるのは練習中だけでない、試合中でもそうだった。むしろ集中力が研ぎ澄まされている分試合中の方がその才能は発揮されているのかもしれない。
二点差になり、相手の刈屋さんが仕掛けてくる。高速ラリーの途中で急にストップでバックハンド側ネット際に落としてくる。少し甘い球だが相手の体勢を崩すには十分なフェイントだ。
しかし、美夏は試合前の稔里ちゃんの言葉を忘れていなかった。甘いストップボールに瞬時に反応すると、相手のフォア側目掛けて真っすぐにスマッシュを打ち抜く。
8-9。一点差になったところで相手は今度はニゲーム目で見せたパワードライブで二球目攻撃を仕掛けてくるが、数ミリの狂いでボールはネットに引っ掛かる。
9-9の同点になったところで相手側のサーブになるが、刈屋さんは一本目のサーブをなんとネットに引っ掛けてしまう。上手い下手関係なく、直前のボールでなんでもないミスをしているときに卓球ではよく起きる現象だ。
それでもこちらのゲームポイントになっても弱気にならずに強気でコースぎりぎりのサーブを打ってくるのは流石だが、美夏も相手のそういう性格を見抜いていた。強気で打ち合いにくると察して一歩もひかずに打ち合いの応戦。やはり刈屋さんの高低の感覚が若干ずれているらしく、最後は相手のボールがネットを越えられず、11-9で美夏が第三ゲームも取ることができた。
「いいよミカ! あと一ゲームだよ」
「うぃ、イメージ合ってきた」
ベンチに戻ってきた美夏を迎える。スタミナも怪物な美夏は疲れているどころかやっとエンジン全開といった雰囲気だ。
マリ女にとって確実に取れるつもりだった美夏のところを落とすのは単純な勝ち星以上に精神的なダメージになるはずだ。
どうか、あと一ゲーム。
「ミカ、気を抜かないで。次で決めてこよう」
「うっしゃ!」
私は、ただただ美夏の勝利だけを信じてその背中を見送った。
SIDE:YUNO
「ミカ、ナイスドライブ!」
相手のカットを美夏が見事なドライブで決める。
おそらく美夏がツッツキとか下回転が苦手なのをみて、カットは打てないと思ったんだろう。
生憎、美夏ははじめてすぐからカットマンである私の相手をしてきた選手だ。私はあんなその場しのぎカットに打ち負けるように美夏を育てた覚えはない。なんていうのは私の勝手な思い上がりだけれど。
相手の刈屋さんは早いテンポでの打ち合いに作戦を変えてきた。
第一ゲームは美夏も互角以上に打ち合えていたが、さすがに本気を出してきた相手はスピードもコースも第一ゲームより一段階ギアを上げてきた。
それでも打ち合える美夏はすごいが、じりじりと点差が詰められてくる。
特にバックハンドで、スピードドライブやカウンターブロックと同じリズムで一瞬だけ手首の返しを早くして打ってくるパワードライブが厄介で、さっきからあれの返球でミスをして失点を繰り返している。
美夏が卓球歴二か月弱の初心者でここまで驚異的な動きができるのは、目で見た技を覚えるという特技を持つ美夏にとって、稔里ちゃんと絵東先輩という最高のお手本がいるからだ。その二人が使用しないバックハンドのパワードライブは返し方がわからないはずだ。
「ミカ、回転しっかり見て!」
ドライブにラケットを被せてとか具体的なアドバイスを言うこともできるが、コートの後ろから叫んでいるので相手に筒抜けの状態だ。向こうは私の声を聞いてナックル気味で打ってくるとかそれくらいの対策をすぐにしてくるレベルの相手なので抽象的なアドバイスしかできない。
それでも美夏はパワードライブが来るときの一瞬の手首の返しを察知して素早く半歩下がってドライブをドライブで受け止めるといった返球をみせるようになってきた。
6-9。三点差のまま終盤まできた。まだ挽回できる点差だ。相手の刈屋さんがまた高速ラリーを仕掛けてくる。
そのとき、美夏がバックハンドの打ち合いから手首を一瞬下げると振り上げるようなパワードライブを放つ。今まで刈屋さんにやられてきた技だ。まさか自分の技をやられるとは思っていなかったであろう、刈屋さんの返球はコートオーバーする。
美夏が人の動きを見てその技を覚えるのは練習中だけでない、試合中でもそうだった。むしろ集中力が研ぎ澄まされている分試合中の方がその才能は発揮されているのかもしれない。
二点差になり、相手の刈屋さんが仕掛けてくる。高速ラリーの途中で急にストップでバックハンド側ネット際に落としてくる。少し甘い球だが相手の体勢を崩すには十分なフェイントだ。
しかし、美夏は試合前の稔里ちゃんの言葉を忘れていなかった。甘いストップボールに瞬時に反応すると、相手のフォア側目掛けて真っすぐにスマッシュを打ち抜く。
8-9。一点差になったところで相手は今度はニゲーム目で見せたパワードライブで二球目攻撃を仕掛けてくるが、数ミリの狂いでボールはネットに引っ掛かる。
9-9の同点になったところで相手側のサーブになるが、刈屋さんは一本目のサーブをなんとネットに引っ掛けてしまう。上手い下手関係なく、直前のボールでなんでもないミスをしているときに卓球ではよく起きる現象だ。
それでもこちらのゲームポイントになっても弱気にならずに強気でコースぎりぎりのサーブを打ってくるのは流石だが、美夏も相手のそういう性格を見抜いていた。強気で打ち合いにくると察して一歩もひかずに打ち合いの応戦。やはり刈屋さんの高低の感覚が若干ずれているらしく、最後は相手のボールがネットを越えられず、11-9で美夏が第三ゲームも取ることができた。
「いいよミカ! あと一ゲームだよ」
「うぃ、イメージ合ってきた」
ベンチに戻ってきた美夏を迎える。スタミナも怪物な美夏は疲れているどころかやっとエンジン全開といった雰囲気だ。
マリ女にとって確実に取れるつもりだった美夏のところを落とすのは単純な勝ち星以上に精神的なダメージになるはずだ。
どうか、あと一ゲーム。
「ミカ、気を抜かないで。次で決めてこよう」
「うっしゃ!」
私は、ただただ美夏の勝利だけを信じてその背中を見送った。
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