92 / 106
7章 全道大会へ向けて
044話 集中と、再覚醒と ②
しおりを挟む
もう一本の藤堂さんのサーブはフォアからバックに逃げていく横回転と思いきや、そのまま曲がらずにフォアに伸びてくるサーブ。バックのツッツキでレシーブの体勢に入っていたため、あわてて身体を入れ替えてフォアでカットをするがタイミングが遅れてレシーブはコートオーバーしてしまう。
結局最後はカットドライブのラリーを押し切られて4-11で第二ゲームも取られる。
だけど、高校女子レベルではない、本物のトップレベルのボールをカットで拾える、自分の卓球脳で考えられる以上のフェイントをかけてこられる嬉しさ。私はタオルで汗を拭くのもそこそこに、すぐに続きがやりたくてコートチェンジをしてその場でトントンと軽く跳ぶ。
第三ゲーム、こちらがギアを上げる以上に藤堂さんの方が出力を上げてきた。
第二ゲームでこちらが予測していたコースとスピード、それが更に速くなってくる。ほんの気持ち程度だがスイングのテイクバックとフォロースルーが大きくなっている。あんなパッと見じゃわからない変化で、打ち出すボールにこんな差を付けられるのか。
だけど、今の私はそのギアの変化についていけた。全ての神経が藤堂さんと卓球をする、藤堂さんのボールを返すことに集中している状態。
強打で打ち抜かれるボールも自分で信じられないほどの反応速度で後ろに下がりしっかりとカットで返球する。
自分のスマッシュの下手さのせいで三球目攻撃を失敗してしまったが、サーブのフェイントで崩して二球目のレシーブをチャンスボールにすることも三回ほどできた。サーブは稔里ちゃんやこの前の村川さんにも通用したように自信はあったが、実際に藤堂さん相手でも崩すことができたのはより大きな自信となる。
何より、第三ゲームはとにかくラリーが楽しかった。
常にこちらの予測よりも速く厳しいコースへ飛んでくるボールに対し、少しずつ反応できていく自分が楽しかったし、フェイントを含めたラリーの流れが、自分では思いも付かない組み立てで、一球ごとに勉強をさせてもらった。
ほとんど得点はエッジボールだったが、一点だけ渾身のカットが決まって藤堂さんのドライブがネットを越えずに得点した時は思わずガッツポーズが出た。
最後はこちらのカットがネットインしたところを藤堂さんが咄嗟に伸ばした腕でちょこんとストップボールでネット際に落とされゲームセット。
2-11、4-11、4-11の0-3での負け。
ただ、正直試合前は一点も取れない可能性も考えていたし、何より今回は最初から最後までしっかりと自分の卓球ができたことが嬉しかった。
「ありがとうございました!」
礼をして、試合後の握手をしてもらう。
「直美の言っていた通り、試合していてこんな楽しい子がいるんだってびっくりしちゃった。ありがとう」
「そんな、こちらこそありがとうございます!」
前原先生から藤堂さんに、私のことはどういう風に伝わっていたんだろう。
「両面裏であれだけカット拾えるのは凄いね。自信を持っていいよ。あとはせっかくサーブ上手いから三球目はしっかり練習した方がいいかな」
「はい!」
「具体的なアドバイスは四人全員と試合が終わってからね」
世界のメダリストの人から直接アドバイスを受ける。一言一句聞き流さないようにしないと。と思っていたが具体的なものは全員試合後に再度行ってもらえるらしい。
「よし。じゃ次の人は?」
「お願いします」
試合を終わった人が審判をすることに決めていたので、美夏から得点ボードを受け取る。
次の藤堂さんの試合相手は、稔里ちゃん。
うちのエースが、どこまで藤堂さんに通用するのか。
私は、試合中の昂った気持ちのまま、審判の位置についた。
結局最後はカットドライブのラリーを押し切られて4-11で第二ゲームも取られる。
だけど、高校女子レベルではない、本物のトップレベルのボールをカットで拾える、自分の卓球脳で考えられる以上のフェイントをかけてこられる嬉しさ。私はタオルで汗を拭くのもそこそこに、すぐに続きがやりたくてコートチェンジをしてその場でトントンと軽く跳ぶ。
第三ゲーム、こちらがギアを上げる以上に藤堂さんの方が出力を上げてきた。
第二ゲームでこちらが予測していたコースとスピード、それが更に速くなってくる。ほんの気持ち程度だがスイングのテイクバックとフォロースルーが大きくなっている。あんなパッと見じゃわからない変化で、打ち出すボールにこんな差を付けられるのか。
だけど、今の私はそのギアの変化についていけた。全ての神経が藤堂さんと卓球をする、藤堂さんのボールを返すことに集中している状態。
強打で打ち抜かれるボールも自分で信じられないほどの反応速度で後ろに下がりしっかりとカットで返球する。
自分のスマッシュの下手さのせいで三球目攻撃を失敗してしまったが、サーブのフェイントで崩して二球目のレシーブをチャンスボールにすることも三回ほどできた。サーブは稔里ちゃんやこの前の村川さんにも通用したように自信はあったが、実際に藤堂さん相手でも崩すことができたのはより大きな自信となる。
何より、第三ゲームはとにかくラリーが楽しかった。
常にこちらの予測よりも速く厳しいコースへ飛んでくるボールに対し、少しずつ反応できていく自分が楽しかったし、フェイントを含めたラリーの流れが、自分では思いも付かない組み立てで、一球ごとに勉強をさせてもらった。
ほとんど得点はエッジボールだったが、一点だけ渾身のカットが決まって藤堂さんのドライブがネットを越えずに得点した時は思わずガッツポーズが出た。
最後はこちらのカットがネットインしたところを藤堂さんが咄嗟に伸ばした腕でちょこんとストップボールでネット際に落とされゲームセット。
2-11、4-11、4-11の0-3での負け。
ただ、正直試合前は一点も取れない可能性も考えていたし、何より今回は最初から最後までしっかりと自分の卓球ができたことが嬉しかった。
「ありがとうございました!」
礼をして、試合後の握手をしてもらう。
「直美の言っていた通り、試合していてこんな楽しい子がいるんだってびっくりしちゃった。ありがとう」
「そんな、こちらこそありがとうございます!」
前原先生から藤堂さんに、私のことはどういう風に伝わっていたんだろう。
「両面裏であれだけカット拾えるのは凄いね。自信を持っていいよ。あとはせっかくサーブ上手いから三球目はしっかり練習した方がいいかな」
「はい!」
「具体的なアドバイスは四人全員と試合が終わってからね」
世界のメダリストの人から直接アドバイスを受ける。一言一句聞き流さないようにしないと。と思っていたが具体的なものは全員試合後に再度行ってもらえるらしい。
「よし。じゃ次の人は?」
「お願いします」
試合を終わった人が審判をすることに決めていたので、美夏から得点ボードを受け取る。
次の藤堂さんの試合相手は、稔里ちゃん。
うちのエースが、どこまで藤堂さんに通用するのか。
私は、試合中の昂った気持ちのまま、審判の位置についた。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる