ヒカリノツバサ~女子高生アイドルグラフィティ~

フジノシキ

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第2章 アイドル同好会!

アイドル勧誘大作戦!

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「(今日もまだ誰とも話ができていない……)」

 玲は、ため息をつきながら次の時間割の教科書を読んでいた。入学三日目にして、玲はすっかり周囲の人間から「ちょっと怖そうなクール系超美人」という評価を受けていたのだが、当の本人だけは、話しかけられないのが自分が内気で容姿も地味なのが原因だと思い込んでいた。


「あ、あの、成瀬さんっ」

 その時、玲に対して呼びかける声があった。玲がびっくりして顔を上げると、そこにはクラスメイトが三人立っていた。三人とも最初のホームルームの自己紹介で名前は聞いていたはずだったが、当時極度の緊張をしていた玲は思い出すことはできなかった。

「……何?」

 緊張をして、ぶっきらぼうな返答をしてしまう。失礼な返し方だったかと思ったが、実際この三人が自分に何の用があるのか玲には見当も付かなかった。

「あ、えっと、今日のお昼休み、わたし達三人で一緒にお昼食べる予定なんだけど、良かったら成瀬さんも一緒にどう、かな?」
「え……?」

 突然の誘いに戸惑う玲。なぜ急に自分を誘ってきたのか理由が見つからない。もしかして、クラスで孤立しているのを見かねて声を掛けてくれたのだろうか。だとしたらとても情けないし恥ずかしい。
 玲が返答をしないことで、声を掛けてくれた生徒が困った顔になる。

「あ、もしかして成瀬さん予定があった? だったらごめんね」
「ううん、予定は特に、ないから……」

 慌てて玲が否定する。慌てているのだが、どうしても緊張してぶっきらぼうな話し方になってしまう。

「良かった。じゃお昼休みになったらまた! あ、私出席番号七番の柿木佑香です。よろしくね」

 そう言って、佑香は、まだ戸惑い気味の玲に笑いかけた。


 昼休みになり、三人は約束通り玲を迎えに行って、佑香と美空の机に亜紀の机を繋げてL字のテーブルを作って四人で囲むように座った。

「佑香ちゃんのお弁当いつも美味しそうだよね」
「うちお店やってるからね。まかない弁当だよー」

 美空の言葉に答えた佑香が、玲に話し掛ける。

「成瀬さんのお弁当もすごい可愛くておいしそう! お母さんが作ってくれるの?」
「うちは両親朝早いから弁当は自分で……」
「すごーい、お弁当手作りなんだ!」

 佑香に褒められて照れた顔を必死に隠そうとする玲。

「ほんまやなー。うちなんか毎日購買やで」
「でも亜紀ちゃん今日はサンドイッチだけど昨日はおにぎりだったよね」
「ここの購買部けっこう種類あるで。目指すは全制覇や」

 そんな話の輪に加われているのがまだ自分でも不思議な玲に対して、佑香が声を掛ける。

「ねえ、成瀬さん。れいちゃん、って呼んでもいいかな? わたしのことはゆうかでいいから」
「え、う、うん……」

 中学時代の友人もみんな苗字にさん付けで呼んでいたので、戸惑う玲。

「私のことも美空でいいよ」
「ウチも亜紀でもアッキーでもなんでもオーケーやで」

 二人からも言われて、悩む玲。「さん」か「ちゃん」を付けた方がいいだろうかと思ったが、逆に呼び捨てでいいと言われているのにちゃん付けだとよそよそしいのかもしれないと思い、言われたままに呼ぶ。

「うん。佑香、美空、亜紀」
「よろしく、れいちゃん!」

 呼び捨てでも失礼に思われなかったようでほっとする玲。そんな玲に佑香が聞いてくる。

「ねえ、玲ちゃんは中学のとき何か部活入ってた? たしか自己紹介のとき部活の話はしてなかったと思って」
「あ、……」

 自己紹介の時のことを思い出して気分が沈む玲。しかし、せっかくの会話に水を差してはいけないと思い、すぐに立ち直ろうと話の内容に意識を集中する。

「中学の時は、合唱部に入ってた……」
「合唱部? 玲ちゃん歌上手なんだ」

 そう聞いてくる美空に対し、少し俯きながら答える玲。

「でも、賞は取ってないから……」
「合唱部だと学校としての賞やから個人の上手い下手とは別やしな」
「れいちゃん高校も合唱部に入るの?」

 佑香の問いに対し、玲が少し考えてから口を開く。

「わかんない……。高校は特に何をするとは決めてなかったから」

 実際、玲の思い描いていた「高校デビュー」はぼんやりとしたもので、部活動をどうするかなどは全く考えていなかった。一昨日昨日と部活動の勧誘にあまり積極的でなかったのもそのためである。
 その答えに対し、三人が顔を見合わせる。目線で合図をして、佑香が話すことに決める。

「あのね、れいちゃん。わたしたち、アイドル同好会に仮入部してるんだ。それでね、今一緒にユニットを組んでくれる人を探しているんだ」
「アイドル同好会? 凄いね、そんな同好会があるんだ」

 自分とは全然別世界の話だと思っている玲は、話の意図に気付かず普通に思ったままの感想を言う。
 そんな玲に対し、佑香が、ぎゅっと背筋を伸ばして玲を見つめる。


「お願い、れいちゃん! わたしたちと一緒にアイドルしよう!」
「え……」


 言われたことが一瞬わからなかった玲だが、本来頭の回転は速いので、すぐに今までの流れを理解する。要するに、三人はアイドル同好会の勧誘として私を昼食に誘ったのだ。
 理解をした玲の心の中が複雑な気持ちになる。孤立していたのを見かねて、ではなく部活の勧誘として声を掛けてくれたというのは嬉しい。だが、なぜ自分を「アイドル同好会」に誘ったのかがわからない。なぜ、こんな地味でアイドルなどという存在とは縁遠い自分なのか。まだバレーボール部やバスケットボール部への勧誘の方が背が高いからという理由でわからなくはない。

「ねえ佑香。なんでアタシを誘ったの?」

 高校に来てから全然話していなかったので、声がかすれて私と言ったつもりがアタシとなってしまう。

「え、それはもちろんうちのクラスで一番れいちゃんがかわいいから」

 その佑香の言葉を勧誘のためのお世辞だと思う玲。

「それは、ないでしょ……」
「玲ちゃんはかわいいというよりは綺麗という形容詞の方が合うかな」
「なんや、れいれいもこの二人と同じように自分の可愛さに気付いてないタイプか?」

 美空と亜紀にもそう言われ、黙り込む玲。自分が可愛いや綺麗などとはとても思えないが、とりあえず服装やメイクが地味ではなくなったのかと思うことにした。元々はこうやって誰かと話すためにやっていたオシャレだ。

「ねえ、れいちゃん。ダメかな?」

 そう困り顔で聞いてくる佑香の顔は、玲から見てもたしかにアイドルの子にいそうなくらい可愛かった。
 そんな可愛い子と一緒でやっていけるか不安ではあったが、それよりも今ここで断ることで、また一人ぼっちの高校生活に戻る不安の方が大きかった。


「あの……、最初は見学だけ、でも大丈夫?」
「うん、もちろんっ!」

 佑香が玲の手を取って満面の笑みを浮かべる。その笑顔に釣られて、玲も高校に入ってから初めての笑顔を見せるのだった。
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