ヒカリノツバサ~女子高生アイドルグラフィティ~

フジノシキ

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第3章 ファーストライブ!

わたし達のための曲

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 放課後。四人は急ぎ足で部室へ向かった。
 コンコンコンッ、と佑香が荒めのノックをして部室のドアを開ける。

「失礼しまーす」

 部室にはまだ紗夜香は来ていないようだった。

「紗夜香先輩まだ来ていないね」
「先輩待った方がいいかなぁ。でも早く曲聴きたいよー!」

 美空と佑香がそんな会話をしていたところ、ちょうど紗夜香が部室に入ってきた。

「あら、みんなお揃いね」
「あ、さやか先輩! できたんですよ!」
「え、何?」
「さやさや先輩、新曲できましたで」

 そう言って亜紀がCDケースを紗夜香に見せる。

「あら! お疲れ様。本当に一週間で作ったのね。先輩方ももっと時間をかけて作ってたから期間ぎりぎりになるのを覚悟してたんだけど」
「ウチは約束は守る女ですで」

 そんな紗夜香と亜紀の会話を遮るように佑香が話す。

「ねえ、亜紀ちゃん早く曲聴こうよ!」
「せやな。ちょっち待ってえな」


 亜紀が部室のPCのドライブにCDをセットする。

「曲のタイトルは『ヒカリノツバサ』。デビュー曲にふさわしい「始まり」をテーマにした曲や。あ、あとボーカルは仮歌だから合成音声ソフトを使ってるで。パート分けは明日楽譜を作てくるからな」

 そう解説を入れて、亜紀が再生ボタンをクリックする。
 古いPCのため、再生までの間少しタイムラグがあり、その後曲が流れ始める。

 曲の出だしは、美しいピアノのアルペジオ。そこから前奏のボーカルが入ってくる。

『♪ヒカリノツバサ広げ 飛び立とう』

 そこからトランペットとストリングスによる四つ打ちの軽快な前奏が始まる。いかにもアイドルソングらしい盛り上がりのままAメロに入る。

『♪駆け出して行く 今日も放課後 いつもの川原へ』

 軽快な四つ打ちのリズム感を保ったままAメロが終わり、Bメロに入っていく。Bメロの前半は、アイドルソングの定番である「PPPH」と呼ばれるコールが入るリズムに変化する。そこからBメロの後半ではまた四つ打ちの軽快なリズムに戻り、徐々に盛り上がっていく。最後は盛り上がりの最高潮でシンバルの三連打が鳴り響く。その後、一小節のブレイク(空白期間)があり、華やかなサビが始まる。

『♪ヒカリノツバサ広げ 飛び立とう』

 ここまで、サビに入るまで佑香、美空、玲の三人とも、一言も発しないで皆真剣に曲に聞き入っていた。自分達のためのオリジナル曲、という興奮が三人を支配していた。それは、三人が想像していた以上のものだった。

『♪頑張りすぎて 翼折れちゃう こともあるけど』

 二番に入って、Aメロの伴奏が歌詞の内容に合わせて落ち着いた感じのものに変わる。アニソンでよくある展開に、佑香はある種の懐かしささえ感じていた。

 その後、二番のサビが終わって間奏に入る。間奏の間も三人は一言も発さずに曲の世界に入り込んでいた。
 大サビ、落ちサビと言われる曲の最後が終わり、短めのファンファーレと共に曲が終了する。 
 もっと曲を聴きながら感想のつぶやきがあると思っていた亜紀が、三人とも曲の間一言も発していなかったので、若干不安気味に聞く。

「ど、どうやった?」
「すごい! すごい良かったよあきちゃん!」

 真っ先に口を開いたのは佑香だった。

「本物のアイドルが歌ってるみたいな曲! BメロがPPPHになってたり完璧だよ!」
「そんなに感動されると照れるわぁ」
「うん、すごい良い曲だと思うよ」
「歌も、静かに歌い上げる部分と元気よく歌う部分がはっきりしていて歌いやすそう」

 美空と玲も感想を言う。

「『ヒカリノツバサ』、わたしたちのための曲かぁ……」

 感慨深げにつぶやく佑香。美空と玲と目を合わせ、三人で頷きあう。


「そういえば、歌はいいけどダンスはどうしよう」

 美空が、ふと思い付いたように口を開く。

「そやなぁ、ウチは曲は作れるけどダンスは専門外やからなぁ」

 亜紀も腕組みをしてうーんと唸る。

「そうね、私がダンスの原案くらいなら作れると思うから、そこから実際に三人が踊りやすいようにアレンジする形でどうかしら」
「はい……」

 紗夜香の提案に、玲が同意する。美空も同意しようとしたが、隣の佑香が何か話したがっていそうに見えた。

「佑香ちゃん?」
「あ、あの、ダンスの振り付けわたしにやらせて下さい!」

 佑香の発言に紗夜香が驚いて返す。

「え、大丈夫?」
「はい、わたし、ライマスや他のアイドルアニメの曲も自分で振り付け真似して踊っているんで、アイドルっぽい振り付けは考えられると思います。それに、せっかくの自分たちの曲なんで、踊りも自分でやってみたいんです!」
「でも、佑香にだけ負担がかかちゃうんじゃ……」

 玲が心配をするが、佑香は笑ってVサインをしながら答える。

「だいじょうぶ! 器用貧乏だけがわたしの取り得だから」

 美空が佑香のやる気が空回り気味ではないかと心配して、声を掛けるか悩んだが、先に佑香のやる気を見た紗夜香が話し出す。

「そうね、それなら振り付けは佑香ちゃんにお願いしようかしら。自分で考えるということは振り付けを覚える手間がなくなるし、曲も聴き込むから歌も覚えるでしょうし」
「ありがとうございますっ、さやか先輩!」
「亜紀ちゃんはとりあえず一段落ついたかしら」
「はい、あとは三人の声が入ってからオケのバランス調整したりはしますけど、それくらいですわ」

 紗夜香の質問に亜紀が答える

「じゃ、亜紀ちゃんは私と一緒に佑香ちゃんのサポートをお願い。ダンスの見本用にビデオカメラで動画を撮ったりすることになると思うから」
「あ、そうですね。わかりやした」
「さやか先輩、あきちゃん、よろしくお願いします!」

 サポートを名乗り出てくれた紗夜香と亜紀に対し礼を言う佑香。そのとき、佑香があることに気付いた。

「あっ、そういえば」
「どうしたの?」

 何かに気付いたような佑香に対し紗夜香が声を掛ける。

「そういえば、キャンストでも思ってたんですけどダンスを考えるのに大事なことが」
「大事なこと? 何かしら」


「わたしたち三人のセンターって誰なんでしょう?」
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