ヒカリノツバサ~女子高生アイドルグラフィティ~

フジノシキ

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第3章 ファーストライブ!

振り付けとイメージカラーと

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 曲が始まり、ヒカリノツバサの前奏と共に三人の佑香が踊り始める。

『♪ヒカリノツバサ広げ 飛び立とう』

 前奏のバラード後半部分は玲が担当のようである。長袖ジャージの玲役佑香が左手を高く掲げながら口パクで歌っている。
 そこから、アップテンポになる前奏に合わせて三人が横に大きく開いて、左右、右左のステップを踏む。いわゆるツーステップ。ダンス練習で一番最初に練習したステップだ。
 Aメロではその基本ステップのまま、歌詞の内容に合わせて手を動かす。玲が、休憩がなくて大変だなと思いながら見る。

『♪苦しい時あっても』

 すると、Bメロでは一転してPPPHのリズムに合わせて、ゆっくりと大きな振り付けになる。体力的に心配していた玲がほっとする。

『♪その何倍もの楽しさ待ってる』

 Bメロの最後で、それまでセンターだった袖まくり佑香が向かって右側にすっと動く。それに合わせるように右側にいた美空役のTシャツ佑香が真ん中後方に下がる。センターが美空に入れ替わった形だ。


 そして、Bメロ最後のシンバル三連打で美空役の佑香が大ジャンプをする。サビに入る前の一小節のブレイクは着地のための時間だったのだ。

「ここだけは、みそらっちのジャンプをイメージして曲を作うたんでどうしてもこれを入れて欲しかったんや」

 亜紀が話す。美空と玲はそんな亜紀の声が聞こえてたかどうか、そのままモニターに映るダンスに見入っている。


『♪ヒカリノツバサ広げ 飛び立とう』

 サビでは歌詞に合わせて、佑香が両腕を翼に見立てて、腕全体を大きく動かす。玲、美空、佑香の順に順番に腕を動かすなど、ダンスも凝ったものとなる。
 その後、二番ではAメロの動きが曲に合わせてゆったりとしたものに変わったりした。
 二番のサビが終わった後の間奏では、最低限のツーステップだけの振り付けとなる。佑香が美空と玲に説明を入れる。

「間奏は、そのうち慣れてきたらお客さんを煽ったりできるように振り付けは特に入れなかったんだ」

 玲は、キャンストの動画で、先輩達が間奏部分で腕を突き上げてお客さんを煽っていたのを思い出した。果たして自分に踊りながら途中でそこまでする余裕は生まれるのだろうか。


『♪素敵な冒険を今始めよう』

 最後のサビが終わって、歌い終わった三人が中央に集まって決めのポーズを取る。
 曲が終わった後、しばらく動かない美空と玲。不安になった佑香が二人に話し掛ける。

「ど、どうだったかな? 家にあったいろんなアイドルアニメのライブDVDとか見て研究してみたんだけど……」

 その声に美空が佑香の方に振り返る。

「うん、凄い良いよ。本当のアイドルみたいでびっくりしちゃった」
「わたしのジャンプ力じゃあれが精いっぱいだったけど、みそらちゃんは思いっきり跳んでね」
「うん、任せて」

 そう言って笑顔になる美空。玲も佑香に話し掛ける。

「凄い。この短時間で三人分全部考えたんだ……」
「うん、やっぱり三人一緒の部分と別々の動きをする部分と両方あった方がいいと思って」
「アタシ、運動苦手だから振り付けも簡単にしてくれたんだね」

 その言葉を手をぶんぶん振って否定する佑香。

「え、そんなことないよ! たしかにみそらちゃんは運動神経良いからけっこう難しい部分もあるけど。あ、そうか。たぶんね、れいちゃんは手足が長いから、それを活かしたダンスになるようにゆったりと手足を伸ばした動きが多いかもしれないかな」
「そうだったんだ。ゴメン、勝手に勘違いしちゃって……」
「そんなあやまらないでっ。れいちゃんが手足長いから、きっちり伸ばして踊ったら絶対にかっこいいから!」
「うん」


「あ、みんな良いかしら」

 そこへ、紗夜香が話に入ってきた。

「はい、なんですか。紗夜香先輩」
「これで二曲とも曲も振り付けもできて、あとはみんなは本番へ向けて練習ね」
「はいっ」
「そこで、私の方でも本番へ向けて自分の仕事を始めたいの」
「さやさや先輩の仕事?」

 亜紀が紗夜香に聞いてくる。

「ふふ、私も亜紀ちゃんと同じ本職は裏方よ。三人のライブ衣装を作り始めたいの」
「あ、衣装」

 そうだったと手をぽんと叩く佑香。

「服のデザインは、『ヒカリノツバサ』の歌詞イメージを私なりに形にしたものにするわ」
「おお、曲作ったらダンスだけじゃなく衣装もできるなんて、ウチほんまアイドル同好会に入ってよかったですわ」

 そう言って大袈裟にうんうんと頷く亜紀。

「それでね、デザインは私の仕事として、三人のイメージカラーはみんなで決めて欲しいの」
「イメージカラーですか?」

 紗夜香の言葉に、美空が聞き返す。

「ええ、先輩達も赤、白、青って衣装の基調になっている色があるでしょう? アイドルはこういうふうに自分のイメージカラーを決めるのが普通なの」
「ライマスのライブでも自己紹介のときに客席がイメージカラーのペンライトになるのきれいでした!」

 佑香がDVDで見ていたライブの風景を思い出す。

「ふふふ、そうね。今回は初ライブだからお客さんがどれだけ来るかはわからないけど、秋の文化祭ではお客さんにペンライトを振ってもらいたいわよね」
「でも、イメージカラーってどうやって決めれば……」

 玲が困った顔をしてつぶやくのに対し、紗夜香が安心させるように答える。

「イメージカラーといってもそんなに難しく考える必要はないわ。自分の名前に入っている色でもいいし、単純に自分の好きな色でもいいわ」
「みそらちゃんは空だから空色とか!」
「佑香ちゃんいくらなんでも単純すぎるよ」

 佑香の発言に苦笑する美空だったが、美空以外の反応は良かった。

「美空ちゃんは青系統なイメージがあるわ。スカイブルーはいいかも」
「みそらっちは爽やか系が合ってるんちゃう?」
「うん、スカイブルー良いと思う」

 皆の反応が良いので、どうしようか一瞬迷った美空だったが、他に特に好きな色もなかったので素直に受け入れることにした。

「じゃ、スカイブルーで」
「決まりね。次は佑香ちゃん?」

 自分の話になった佑香が、好きな色を思い出そうとする。

「うーん、好きな色かぁ。ぱっとは思い浮かばないなぁ」
「ゆかっち『柿木』だから柿色とかどうやん?」
「えー、柿の色ってくすんだオレンジみたいな色だよ? 色指定でも柿色ってあるけど地味だから使ったことないもん」

 思わず「色指定」というデザイン用語を使っていまった佑香だったが、そこには誰も気付かなかった。不満そうな佑香に対し、紗夜香が口を挟む。

「柿色、って考えるから地味なんじゃないかしら。オレンジ色にしたらアイドルっぽくなるわよ。特にセンターのアイドルの子はオレンジが多いし」
「ああ、ライマスの神奈もオレンジだ! わあ、神奈と一緒のイメージカラーだと思ったら急にやる気が出てきたっ」
「かんな?」

 美空の疑問に紗夜香が答える。

「ライマスのセンターの子よ。神奈ちゃんのイメージカラーもオレンジなの。さて、スカイブルー、オレンジときて最後は玲ちゃんね」
「え、アタシ名前に色関係ないし……」

 『空』『柿』からイメージカラーが決まった二人に対し、成瀬玲という名前には色に関係するものがなかった。

「そこはもう単純にれいれいの好きな色でいいんちゃう?」
「好きな色……」

 そう言われて玲が口篭ってしまう。好きな色はあるのだが、あることが玲の中で引っ掛かっていた。

「そういえばれいちゃんってアクセとか紫色が多いよね」

 玲の好きな色ということで佑香がつぶやく。美空も続く。

「たしかに、シューズも黒に紫が入ったのだね。紫色が好きなの?」
「う……」
「あれ、違った?」

 聞き返す美空に対し、玲が少し俯きながら答える。

「紫って、暗くてアイドルっぽくないし……」

 玲の中では、赤や青はアイドルっぽい華やかな色だが、紫は地味でアイドルらしくないという意識があった。そもそも心理学か何かで紫を好きな人は良くない、というような記事を見たことがあったので、自分から好きな色が紫だと公言したことは無かった。

「そんなことないよ! ライマスの明海ちゃんもパープルだし」
「そうね、イメージカラーがパープルのアイドルも普通にいるわよ。どちらかというと大人っぽいイメージのアイドルが付けるから、玲ちゃんのイメージにピッタリだと思うわ」
「うん、玲ちゃん紫色を綺麗に着こなしているから、イメージカラーに良いと思うよ」

 皆から勧められ、玲はそれでもなお考え込んだものの、やがて決心をする。

「じゃ、パープルで、お願いします」

 三人のイメージカラーが決まり、紗夜香が笑顔で話す。


「よし、スカイブルーにオレンジにパープルね。バランス的にも良いと思うわ。私もライブに向けて最高に可愛い衣装を作るからね。頑張っていきましょう!」
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