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六章
窮地に立たされた時、僕は……~Part4~
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気づけば着替えることも風呂に入ることもせず、そのまま眠っていた。夢を見ることはなかったが、どこか暖かいものを感じたことは確かだった。
翌朝、五時に目を覚まし散歩に出かけた。曇り空の土手道には犬の散歩をしている人がちらほらといるだけで閑散としていた。子供の頃から大切な日の前夜は興奮して眠れないことが多く、そういう時はよくこうして外を歩いていたのだが、今日は違う。勿論、不安がないと言えば嘘になるが、それよりも茉莉と一緒に何かをできる喜びの方が大きかった。
日が出ている時に歩けば街中を歩くだけでは感じることのできない優しい温かさを感じることができるのだが、曇っているとその分、こちらの方が幾分肌寒い。
遠くからこちらにやってくる車の音に誘われ車道に目を向けると、何台もの黒塗りの高級車が通り過ぎた。残念ながら〝自動車〟というものの知識が乏しいため、その車種が何なのかまでは分からなかったが、高級車であることは分かるくらいの威厳を放っていた。そんな異様な光景を目にしながらゆっくり歩く。毎日目にしているような光景が、今日は妙に清々しく感じる。
集合時間は八時だったが、逸る気持ちを抑えられず早めに寮を出る。
学校に着くと意外にも多くの人が集合していた。
昨日、舞台に運ぶ小道具などは運び入れていたため、やることは特にない。最後の最後に流れを確認する者、緊張感の欠片もなく友達と話す者、我関せずと一人本を読む者。各々が各々のやり方で本番までの時間を過ごしていた。しかし、どこを見渡しても茉莉の姿は見当たらない。いつでも時間より一〇分以上前には着いているはずなのに……。
カバンを置き、台本を確認する。
緊張していないと言えば嘘になるが、何百回と確認した台詞だけにそれなりの自信はある。最後まで付き合ってくれた茉莉と雪乃には感謝である。
一通り読み終え、時計を確認する。
時刻は八時。集合時間だ。
さすがにおかしいと思い、携帯を手に取る。
その時だった。
「陸奥くん! 陸奥くんはいる⁉」
月島先生が息を切らして飛び込んできた。
「はい」
「今すぐ、来て!」
僕の手を力強く掴み引っ張る。
「いや、僕は」
「いいから来なさい! 説明は後!」
走りながらそう言い階段を駆け降りる。
元々先生の方が僕よりも足が長く、さらに走るのも速い。手を引かれなければ確実についていくのは無理だろう。ついていっているというよりは、牽引されているといった方が適切だ。そのおかげで僕の腕は今にも引きちぎれそうなほど痛いが、そんなことも言っていられない状況なのは先生の慌てようから把握した。
翌朝、五時に目を覚まし散歩に出かけた。曇り空の土手道には犬の散歩をしている人がちらほらといるだけで閑散としていた。子供の頃から大切な日の前夜は興奮して眠れないことが多く、そういう時はよくこうして外を歩いていたのだが、今日は違う。勿論、不安がないと言えば嘘になるが、それよりも茉莉と一緒に何かをできる喜びの方が大きかった。
日が出ている時に歩けば街中を歩くだけでは感じることのできない優しい温かさを感じることができるのだが、曇っているとその分、こちらの方が幾分肌寒い。
遠くからこちらにやってくる車の音に誘われ車道に目を向けると、何台もの黒塗りの高級車が通り過ぎた。残念ながら〝自動車〟というものの知識が乏しいため、その車種が何なのかまでは分からなかったが、高級車であることは分かるくらいの威厳を放っていた。そんな異様な光景を目にしながらゆっくり歩く。毎日目にしているような光景が、今日は妙に清々しく感じる。
集合時間は八時だったが、逸る気持ちを抑えられず早めに寮を出る。
学校に着くと意外にも多くの人が集合していた。
昨日、舞台に運ぶ小道具などは運び入れていたため、やることは特にない。最後の最後に流れを確認する者、緊張感の欠片もなく友達と話す者、我関せずと一人本を読む者。各々が各々のやり方で本番までの時間を過ごしていた。しかし、どこを見渡しても茉莉の姿は見当たらない。いつでも時間より一〇分以上前には着いているはずなのに……。
カバンを置き、台本を確認する。
緊張していないと言えば嘘になるが、何百回と確認した台詞だけにそれなりの自信はある。最後まで付き合ってくれた茉莉と雪乃には感謝である。
一通り読み終え、時計を確認する。
時刻は八時。集合時間だ。
さすがにおかしいと思い、携帯を手に取る。
その時だった。
「陸奥くん! 陸奥くんはいる⁉」
月島先生が息を切らして飛び込んできた。
「はい」
「今すぐ、来て!」
僕の手を力強く掴み引っ張る。
「いや、僕は」
「いいから来なさい! 説明は後!」
走りながらそう言い階段を駆け降りる。
元々先生の方が僕よりも足が長く、さらに走るのも速い。手を引かれなければ確実についていくのは無理だろう。ついていっているというよりは、牽引されているといった方が適切だ。そのおかげで僕の腕は今にも引きちぎれそうなほど痛いが、そんなことも言っていられない状況なのは先生の慌てようから把握した。
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