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六章
窮地に立たされた時、僕は……~Part5~
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靴を履き替えることもせず、正門に出る。そして、そのまま駐車させていた車の中に押し込まれた。
先生が運転席に座り、物凄い音を立てながら発進する。
初めてこんな先生を見た。いつものような余裕は微塵も感じない。焦っていることはあるのだろうが、それよりも怒っている印象が強かった。
市街地を法定速度の三〇キロくらい越えた速度で走る。運良く歩行者が横切ることも渋滞に巻き込まれることもなかったが、けたたましく聞こえるサイレンの音と『前の赤いBMW、止まりなさい!』という声が心臓の鼓動を早くする。
高速道路に入りギアが一段上がる。一度腕時計に目をやり、煙草に火を点ける。少し落ち着いたようだが、煙草を吹かすスピードはいつもより数倍早い。
「先生、何事ですか⁉」
先生はバックミラーを確認し舌打ちをした後、口を開く。
「竜崎組が香椎組の後継者、香椎茉莉を誘拐したの」
先生が何を言っているのか全く分からない。耳から脳にいくまでの情報伝達が上手くいかない。無意識的に情報をシャットアウトしている。
「陸奥くん⁉」
「……あっ、はい!」
「聞いてた?」
「……えっと……」
「だから、茉莉が攫われたの!」
その言葉を聞いてようやく今どんな状況に置かれているのか理解することが出来た。
竜崎組と言えば、香椎組と並んで裏社会を牛耳る組織の一つである。二つの組が水面下で抗争をしていることはネットで一部熱狂的なファンによって囁かれていたため知っていた。
「竜崎組の奴らが何かしてくるだろうとは思っていたけど、まさか、ここまで早く動いてくるとは……不覚だったわ」
そう言って先生は眉間に皺を寄せ、今一度バックミラーを確認しながら車の合間を縫うように走る。
「目的は何ですか?」
月島先生が言い淀む。
「ここまで連れてきたんですから、教える義務があると思いますが?」
その言葉に先生が大きく息を吐き、重い口を開く。
「十中八九、茉莉を竜崎組の若頭と結婚させて香椎組を吸収することでしょうね」
――茉莉が結婚……。
その言葉を聞いただけで心臓が跳ねる。ぎゅっと掴まれるような苦しさが全身に広がる。徐々に胸の奥がもやもやして黒い塊が蠢いてくる。
「……茉莉は?」
「納得してるわけないじゃない! でも、そうしないと大切な人を殺すとか言って脅されてるのよ、きっと」
それを言われて悩みに染まった茉莉の顔が浮かぶ。同時に僕に打ち明けようとしていた茉莉の表情も鮮明に思い浮かぶ。
『先輩に話さなきゃいけないことがありまして――』
茉莉が言おうとしていたことは予想以上に大きいことであり、辛いことであった。年端もいかない少女にその決断はあまりにも重すぎる。
先生が運転席に座り、物凄い音を立てながら発進する。
初めてこんな先生を見た。いつものような余裕は微塵も感じない。焦っていることはあるのだろうが、それよりも怒っている印象が強かった。
市街地を法定速度の三〇キロくらい越えた速度で走る。運良く歩行者が横切ることも渋滞に巻き込まれることもなかったが、けたたましく聞こえるサイレンの音と『前の赤いBMW、止まりなさい!』という声が心臓の鼓動を早くする。
高速道路に入りギアが一段上がる。一度腕時計に目をやり、煙草に火を点ける。少し落ち着いたようだが、煙草を吹かすスピードはいつもより数倍早い。
「先生、何事ですか⁉」
先生はバックミラーを確認し舌打ちをした後、口を開く。
「竜崎組が香椎組の後継者、香椎茉莉を誘拐したの」
先生が何を言っているのか全く分からない。耳から脳にいくまでの情報伝達が上手くいかない。無意識的に情報をシャットアウトしている。
「陸奥くん⁉」
「……あっ、はい!」
「聞いてた?」
「……えっと……」
「だから、茉莉が攫われたの!」
その言葉を聞いてようやく今どんな状況に置かれているのか理解することが出来た。
竜崎組と言えば、香椎組と並んで裏社会を牛耳る組織の一つである。二つの組が水面下で抗争をしていることはネットで一部熱狂的なファンによって囁かれていたため知っていた。
「竜崎組の奴らが何かしてくるだろうとは思っていたけど、まさか、ここまで早く動いてくるとは……不覚だったわ」
そう言って先生は眉間に皺を寄せ、今一度バックミラーを確認しながら車の合間を縫うように走る。
「目的は何ですか?」
月島先生が言い淀む。
「ここまで連れてきたんですから、教える義務があると思いますが?」
その言葉に先生が大きく息を吐き、重い口を開く。
「十中八九、茉莉を竜崎組の若頭と結婚させて香椎組を吸収することでしょうね」
――茉莉が結婚……。
その言葉を聞いただけで心臓が跳ねる。ぎゅっと掴まれるような苦しさが全身に広がる。徐々に胸の奥がもやもやして黒い塊が蠢いてくる。
「……茉莉は?」
「納得してるわけないじゃない! でも、そうしないと大切な人を殺すとか言って脅されてるのよ、きっと」
それを言われて悩みに染まった茉莉の顔が浮かぶ。同時に僕に打ち明けようとしていた茉莉の表情も鮮明に思い浮かぶ。
『先輩に話さなきゃいけないことがありまして――』
茉莉が言おうとしていたことは予想以上に大きいことであり、辛いことであった。年端もいかない少女にその決断はあまりにも重すぎる。
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