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九章
自己満足が世界を変える時、僕は……~part5~。
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少し離れた茉莉の元に急ぎ、手を繋ぐ。
「ど、どうしたんですか⁉ 急に」
「いや、人多いでしょ? はぐれちゃわないようにさ」
「……そうですか。それなら、仕方ないですね」
手から伝わる茉莉の体温が僕の身体を温める。同時に心が和やかになっていくことがありありと分かる。誰の侵入も許さなかった心が大手を振って呼んでいる。
「そういえば、昨日の話だけど」
「……はい」
歩きながら話すようなことではないよな、と内心思いながらも面と向かってだと上手く伝えられない気がする。
どこまでいっても僕は臆病者だ。
「僕は断ろうと思うんだ」
その瞬間、茉莉が動かしていた足を止める。しかし、繋いでいた手を離すことはしなかったので、僕は自然と引かれるように茉莉と対面する位置になった。
「……陸奥先輩は、私の事、嫌いなんですか?」
下を向き、震える唇をぎゅっと噛みしめる。
「いや、そんなことないよ」
「じゃあ」
「でもね」
茉莉の話を遮り言葉を継ぐ。
「今回のことで分かったんだ。本当に大事なことは誰々がどうしたからこうするとかじゃなくて、結局は自分がどうしたいかなんだって」
本心だった。
月島先生に言われたから動く。
香椎貞臣に言われたから結婚する。
信頼している人の言うことを信じそれ通りに行動すること自体は別に悪いことではない。
それで上手くいくことはおそらく多いだろう。
でも、それだけだ。
それはそれだけしかないのだ。
上手くいけばいい。
しかし上手くいかなかった時、最終的に何割かはその人のせいにしてしまう。
本当の意味で向き合っていない気がしたのだ。
それにたとえ自分が決めたことで失敗してしまっても、それは自分だけの経験で誰かが入る余地は全くない。
それが人を前に進めると感じたのだ。
「だからね、一回しっかり断って言われたことをなかったことにする。そこから、僕自身、どうしたいのかを伝える。それが一番いいと思うんだ」
僕は一度、合わせていた視線を外し継ぐ。
「それに本当に大事なことは僕一人だけではなく、僕たちで決めたいって思ったからね」
そうすることでいつも一番近くにあって、それでいて分厚い蓋に抑え込まれている見えない力を味方につけられるような気がしたのだ。
そうすることで一人ではなく二人で前に進むことが出来ると思ったのだ。
恥ずかしいなとは感じつつ、言ってから予想以上の恥ずかしさに身体が熱くなる。
どこまでいっても僕にこういうセリフは似合わないのかもしれない。
「だからさ、これからはしっかり話し合って」
「ただの自己満足ですね」
茉莉が僕の話を遮り一蹴する。
刹那、日差しが茉莉の顔を照らしよく見えないが、一瞬の隙間から覗くその顔に僕は確信する。
――ああ、やっぱり、僕の選択は間違ってなかった。
「うん、そうだね。自己満足だよ。最高のね」
街中では蝉の鳴き声が絶えず響く。
年々気温が上がって暑くなり、より生きづらくなっていく世界を自己満足だけが変えていく中、僕は……。
(了)
「ど、どうしたんですか⁉ 急に」
「いや、人多いでしょ? はぐれちゃわないようにさ」
「……そうですか。それなら、仕方ないですね」
手から伝わる茉莉の体温が僕の身体を温める。同時に心が和やかになっていくことがありありと分かる。誰の侵入も許さなかった心が大手を振って呼んでいる。
「そういえば、昨日の話だけど」
「……はい」
歩きながら話すようなことではないよな、と内心思いながらも面と向かってだと上手く伝えられない気がする。
どこまでいっても僕は臆病者だ。
「僕は断ろうと思うんだ」
その瞬間、茉莉が動かしていた足を止める。しかし、繋いでいた手を離すことはしなかったので、僕は自然と引かれるように茉莉と対面する位置になった。
「……陸奥先輩は、私の事、嫌いなんですか?」
下を向き、震える唇をぎゅっと噛みしめる。
「いや、そんなことないよ」
「じゃあ」
「でもね」
茉莉の話を遮り言葉を継ぐ。
「今回のことで分かったんだ。本当に大事なことは誰々がどうしたからこうするとかじゃなくて、結局は自分がどうしたいかなんだって」
本心だった。
月島先生に言われたから動く。
香椎貞臣に言われたから結婚する。
信頼している人の言うことを信じそれ通りに行動すること自体は別に悪いことではない。
それで上手くいくことはおそらく多いだろう。
でも、それだけだ。
それはそれだけしかないのだ。
上手くいけばいい。
しかし上手くいかなかった時、最終的に何割かはその人のせいにしてしまう。
本当の意味で向き合っていない気がしたのだ。
それにたとえ自分が決めたことで失敗してしまっても、それは自分だけの経験で誰かが入る余地は全くない。
それが人を前に進めると感じたのだ。
「だからね、一回しっかり断って言われたことをなかったことにする。そこから、僕自身、どうしたいのかを伝える。それが一番いいと思うんだ」
僕は一度、合わせていた視線を外し継ぐ。
「それに本当に大事なことは僕一人だけではなく、僕たちで決めたいって思ったからね」
そうすることでいつも一番近くにあって、それでいて分厚い蓋に抑え込まれている見えない力を味方につけられるような気がしたのだ。
そうすることで一人ではなく二人で前に進むことが出来ると思ったのだ。
恥ずかしいなとは感じつつ、言ってから予想以上の恥ずかしさに身体が熱くなる。
どこまでいっても僕にこういうセリフは似合わないのかもしれない。
「だからさ、これからはしっかり話し合って」
「ただの自己満足ですね」
茉莉が僕の話を遮り一蹴する。
刹那、日差しが茉莉の顔を照らしよく見えないが、一瞬の隙間から覗くその顔に僕は確信する。
――ああ、やっぱり、僕の選択は間違ってなかった。
「うん、そうだね。自己満足だよ。最高のね」
街中では蝉の鳴き声が絶えず響く。
年々気温が上がって暑くなり、より生きづらくなっていく世界を自己満足だけが変えていく中、僕は……。
(了)
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