【完結】自己満足が世界を変える時、僕は……。

よーじろー

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九章

自己満足が世界を変える時、僕は……~part4~。

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 翌日、学校からの帰り道。

「――納得いきません」
「まだ言ってるの。もういい加減諦めなよ」
「いえ、諦めきれません。先輩はこれでいいんですか?」
「いや、僕は直接見てないから何とも言えないけど」

 そう言って、うーん、と天を見上げる。

「まあ、仕方ないんじゃない。一組の円城君と加藤さんはドラマとかで活躍してる、言っちゃえば演技のプロなんだから」

 三学年合同組対抗演劇大会のことである。
 結果から言うと、僕たち三組は二位だった。
 茉莉はその結果に納得いってないらしく、一ヶ月以上経った今でもそのことを根に持っている。

「いや、絶対に演技以外に力が働いたんですよ。そうに決まっています。確かに、演技力自体は劣っていたかもしれませんが、劇の構成は確実に優っていました……やっぱりあのハイエナどもを始末しましょうか、それとも」
「まつりさんや、まつりさんや、いつものが出てますよ。抑えて、抑えて」
「……これは失礼しました」

 茉莉がわざとらしく手で口を隠す。
 気温自体はそこまで高くないのだが、湿度が高く蒸し暑い。
 人々はすでに夏の様相を呈している。
 ところどころに冷たい霧を発生させる装置が置かれており、そこで涼む人も多い。
 僕の感覚では繁華街とか都心で見かけるものだと思っていたが、今はそうでもないのかもしれない。

「でも、それだとひとつ何でもしてもらえません」
「ん? ああ、それね」

『優勝したらひとつ何でもする』

 これは茉莉が役者として舞台に上がる際、交わした約束だった。
 しかし、結果は二位であり、それが果たされることはなかった。

「ちなみに茉莉は何して欲しいの?」
「してくれるんですか?」
「いや、優勝してないから、一応聞くだけ」
「それじゃあ、言いませんよ」

 茉莉が歩く速度上げ、僕は少し後方を歩く。
 ここ二か月ほどの出来事を振り返ってみた。

 ――紆余曲折あったけど、思い返せば、最初はこの子の処女を奪うことが目的だったんだよな。

 そう思うと、果てしなく不純でどこまでも最低な動機だが、今ではそれも悪くなかったと思う。非常に不本意ではあるが、月島先生のおかげと言わざるを得ない。
 香椎茉莉という女性と出会い、彼女の過去に触れ、彼女の今を知った。
 そして、そんな彼女を助けたいと思った。
 彼女にとってそれが果たして良かったのか、それとも余計なお節介だったのかは分からない。
 しかし、茉莉の怒った顔や泣いた顔、笑った顔を見ていると、僕のしたことはあながち間違っていなかったのかもしれないと思う。
 幼い頃、僕は思い立ったままに振る舞い、自分の事だけを考え、周りを顧みることはなかった。その時、その瞬間で自分がやりたいことをやっていた……と思うが、若干、いやだいぶ流されることが多かった気もする……それは置いておこう。
 昔も今も僕は自分勝手で、自分本位で、自分が一番可愛い。
 それに変わりはないと思う。
 言ってしまえば、自己満足の塊だ。
 しかし、ここ二ヶ月で色々な経験をした今なら分かる。
 僕は屈折していたのだ。
 幼馴染である雪乃が僕と同じ中学、高校に入ってくれた。
 高校に入り、吉備、月島先生、神居先生に出会った。
 そして、香椎茉莉に出会った。
 全員、僕のかけがえのない人達。
 この人達のおかげで僕は自分を素直に出すことができるようになった。
 折れ曲がった僕の心を矯正してくれた。
 逃げ出していた過去から、立ち向かう現在に変えてくれた。
 自己満足が世界を変える瞬間。
 僕は胸を張って歩くことができるだろうか。
 仮に中心にいなくても、その瞬間の末席にいることができるだろうか。
 そう考えると、畏怖と不安が津波のように襲ってくる。
 それは決して消えることはないだろう。
 しかし、今はそれでいいと思える。
 喜悦。憤怒。悲哀。愉楽。
 その全てが僕の中の一部であり、全部なのだ。
 そう思えるようになっただけ僕は成長したということなのだろう。
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