誰かのヒーローになりたい俺の第一歩

よーじろー

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第一章

第一話

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 大学四年生の一月。
 他の同級生はとっくに就職を決め、入社までの余暇を謳歌している頃だった。
 正月が終わるや否や、俺はスーツを着て面接を受けていた。

「次の方、どうぞ」
「はい!」

 大きくなりすぎずそれでいてはっきりとした口調で返事をし、扉を三回ノックし入室する。入室後、一度頭を下げ椅子の隣まで移動する。

「受験番号三十五番、神田蒼月(かんだあつき)です。よろしくお願いします」
「では、そちらの椅子にお座りください」
「はい。失礼します」

 促されてから座り、手は太腿の上に軽く拳を作り置く。
 教授に教えてもらった面接時のマナーは完璧に覚えている。しかし、教授は俺がどれだけ完璧に立ち振る舞ってもどれだけ完璧に答えても、終ぞ及第点をくれることはなかった。

『神田君はね……うーん……面接のないところに就職したらどうかな』

 面接の練習をしてくれたゼミの教授はいつも苦笑いを浮かべながら申し訳なさそうに言う。

 〝面接で人を見るような会社は君には合わないよ〟

 親切心でそう言ってくれているんだと本気で思っていたが、親友に言われてようやく理解することができた。

『いや、それはお前、目つきが悪いから、だから間接的に面接を通るのは無理だから諦めろ、って言われてるんだろ。くっくっくっ』

 親友は小気味よく笑いながら言う。
 それを聞き、俺は絶望した。

『神田君、もっと肩の力抜いてさ、楽にしようよ。笑顔だよ、笑顔』

 小、中、高、大と〝学生〟と言われる時分、友達、先生、バイト先の同僚、先輩その他諸々の方々に散々言われ続けた言葉だった。その時、気づけばこんなことにならずに済んだかもしれないが、ある程度の人格が形成された今になってはもはや後の祭りだった。

 ――どうせ僻んでいるのだろう、彼女がいない奴の戯言だ、と。

 そう思って、俺はその言葉を気にも留めなかったが……それは大きな間違いだったということが、こういう状況になってようやく分かった。冗談や僻みではなく、ただ単純に俺の顔は怖かった。それだけのことだったのだ。

「――はい。お疲れ様でした。結果は後日お知らせしますのでお待ちください。お帰りはあちらからお願いします」

 面接官の人が営業用の笑顔を張り付け、入って来た時とは違う扉に手をかざす。

「ありがとうございました」

 俺は頭を下げて、部屋を後にする。
 エレベーターで一階まで降り、エントランスから外に出る。
 今年初めての仕事の人が多いからだろうか、皺ひとつないスーツを着た人が忙しく行き交うのが目につく。

 ――はあー、またか……。

 大きな溜息をひとつ吐き、空を見上げる。
 時刻は午後四時を回っていたが、太陽光線の勢いは怯むことを知らない。今日は特に強い。まるで俺を嘲笑っているような、責め立てているような……そんなことを考えてしまうのは俺が弱っている証拠だろうか。
 普通であればもっと質問をしてくるはずの面接官が、本日も決まりきった質問を三つ、四つして終了になった。時間にして五分。ここ最近はどこの面接を受けても質問の内容とその順番、対応は判を押したように同じだった。それ故、結果は火を見るよりも明らかだった。
 その会社、面接官によって質問に多少の違いが出るのが普通である。いくら人の機微に疎い俺でもそれが異常であることは感じていた。偶然も重なれば必然になる。

 ――もしかしたら誰かが裏で糸を引いているのかも知れない。

 そんな考えが頭を過るが、それ以上の追及は心身ともに憔悴しきっていた俺に許されなかった。
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