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第一章
第三話
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溜息をひとつ吐くと、自分の無力感が全身に染み渡る。
気づいたら俺は夢の中にいた。
ここは水中、それとも宇宙空間だろうか。
心身ともにふわふわとした感覚が、ここが現実世界ではないことを如実に物語っている。
このまま流されていけばどこに行きつくのだろうか、もし何も憂慮しないで生きていける世界ならばどんなに楽だろうか。でも、何も考えなくてもいいような世界で生きがいを見つけることは出来るのだろうか……。
夢の中でそんな取り留めもないことに思考を巡らせる。普段から考えることは割と好きな方だが、その枠から脱することができないのが俺の短所だ。巡らせるだけ巡らせた後、決断をした頃にはもう遅い。行動まで至らずしておけばよかったと後悔する。何度もそんな経験をした。そう思うことは出来ても、また同じことをしてしまう。堂々巡りで悪循環の日々だ。それは夢の中であっても変わらなかった。
『……あつき!』
ふと後ろの方から名前が呼ばれた。
ゆっくり後ろを向くと、男の人がこちらに手を伸ばしていた。派手なアロハシャツを着ていることだけは分かったが、それ以外は靄がかかっており、誰だか分からない……分からないのだが確実に俺はその人を知っていた。
記憶の糸を手繰り検索するが、そこに辿り着くにはまだ距離が遠いらしい。徐々に靄が晴れていきそれと同時に音もはっきりしてくる。
――――ピーンポーン。ピーンポーン。
重い瞼を上げると、ようやく来客のベルが鳴っているのに気づいた。
ボロアパートで男一人暮らし宅のベルが鳴るのは、決まって新聞の勧誘か某テレビ局の支払い請求くらいであり、居留守を使うのが妥当と相場は決まっている。妹や親友であればベルなんて鳴らさず玄関外の植木鉢の下にある合鍵を使い勝手に入ってくる。些かベタではあるが、ベタにはベタになるほどの効率の良さがあるのだ。
――――ピーンポーン。ピーンポーン。
時間を確認するともう日は変わっていた。
耳を澄まして扉の向こう側の様子を伺うが、物音ひとつしない。帰るなら帰るで足音がするのだが、まだいるのだろうか。それとも俺が聞き逃しただけでもう帰ったのだろうか。
――――ピーンポーン。ピーンポーン。
そんな俺の思考を読んでか、すかさず三回目のベルが鳴る。
いつもなら二回くらいで諦めるのに、今日はやけにしつこい。
疲れで寝落ちしてしまったが、まだ風呂も入っていないためいち早く入ってもうひと眠りしたいところである。明日も面接の予定が入っているのだ。そろそろお暇してほしい。
――――…………。
ベルが止んだ。しかし、俺は経験上知っている。ここで油断して物音をひとつでもたてようものなら、今度はドアを叩いて声をかけられる。
『かんださーん。いるのは分かってますよー。大人しく出てきてくださーい。かんださーん』
過去に出会った手合いである。俺は誰かを誘拐しているのか、と錯覚してしまうほどだが、あちらも好きでやっているわけではないということは分かっているので仕方ないのだろう。しかし、心の中でそうは思っても決して出ることはしない。世の中は無常なのだ。それにこの手の手合いは少しでも隙を見せるとそこから噛みついてくる。そして、離さない。すっぽんのようにしつこいのだ。
鳴り止んでからおよそ三分の時間が経過した。
階段を降りる音が聞こえないのが気になるところではあるが、恐らく車の音にかき消されて聞こえなかったのだろう。
堪えていた息をひとつ吐く。
もう大丈夫だろうと腰を上げたその時。
――――ズドン、バンッ‼
物凄い音が僕の鼓膜と腹部を刺激した。一瞬何が起きたのか分からなかったが、恐る恐るドアの方に顔を向けてみて、粗方の状況を理解することができた。
鍵のかかっていたはずのドアは壊されており、俺よりも頭三つか四つ分ほど小さい少女がそこに立っていた。些か考えにくいことであり信じたくないが、その少女が元凶であることは間違いなかった。
気づいたら俺は夢の中にいた。
ここは水中、それとも宇宙空間だろうか。
心身ともにふわふわとした感覚が、ここが現実世界ではないことを如実に物語っている。
このまま流されていけばどこに行きつくのだろうか、もし何も憂慮しないで生きていける世界ならばどんなに楽だろうか。でも、何も考えなくてもいいような世界で生きがいを見つけることは出来るのだろうか……。
夢の中でそんな取り留めもないことに思考を巡らせる。普段から考えることは割と好きな方だが、その枠から脱することができないのが俺の短所だ。巡らせるだけ巡らせた後、決断をした頃にはもう遅い。行動まで至らずしておけばよかったと後悔する。何度もそんな経験をした。そう思うことは出来ても、また同じことをしてしまう。堂々巡りで悪循環の日々だ。それは夢の中であっても変わらなかった。
『……あつき!』
ふと後ろの方から名前が呼ばれた。
ゆっくり後ろを向くと、男の人がこちらに手を伸ばしていた。派手なアロハシャツを着ていることだけは分かったが、それ以外は靄がかかっており、誰だか分からない……分からないのだが確実に俺はその人を知っていた。
記憶の糸を手繰り検索するが、そこに辿り着くにはまだ距離が遠いらしい。徐々に靄が晴れていきそれと同時に音もはっきりしてくる。
――――ピーンポーン。ピーンポーン。
重い瞼を上げると、ようやく来客のベルが鳴っているのに気づいた。
ボロアパートで男一人暮らし宅のベルが鳴るのは、決まって新聞の勧誘か某テレビ局の支払い請求くらいであり、居留守を使うのが妥当と相場は決まっている。妹や親友であればベルなんて鳴らさず玄関外の植木鉢の下にある合鍵を使い勝手に入ってくる。些かベタではあるが、ベタにはベタになるほどの効率の良さがあるのだ。
――――ピーンポーン。ピーンポーン。
時間を確認するともう日は変わっていた。
耳を澄まして扉の向こう側の様子を伺うが、物音ひとつしない。帰るなら帰るで足音がするのだが、まだいるのだろうか。それとも俺が聞き逃しただけでもう帰ったのだろうか。
――――ピーンポーン。ピーンポーン。
そんな俺の思考を読んでか、すかさず三回目のベルが鳴る。
いつもなら二回くらいで諦めるのに、今日はやけにしつこい。
疲れで寝落ちしてしまったが、まだ風呂も入っていないためいち早く入ってもうひと眠りしたいところである。明日も面接の予定が入っているのだ。そろそろお暇してほしい。
――――…………。
ベルが止んだ。しかし、俺は経験上知っている。ここで油断して物音をひとつでもたてようものなら、今度はドアを叩いて声をかけられる。
『かんださーん。いるのは分かってますよー。大人しく出てきてくださーい。かんださーん』
過去に出会った手合いである。俺は誰かを誘拐しているのか、と錯覚してしまうほどだが、あちらも好きでやっているわけではないということは分かっているので仕方ないのだろう。しかし、心の中でそうは思っても決して出ることはしない。世の中は無常なのだ。それにこの手の手合いは少しでも隙を見せるとそこから噛みついてくる。そして、離さない。すっぽんのようにしつこいのだ。
鳴り止んでからおよそ三分の時間が経過した。
階段を降りる音が聞こえないのが気になるところではあるが、恐らく車の音にかき消されて聞こえなかったのだろう。
堪えていた息をひとつ吐く。
もう大丈夫だろうと腰を上げたその時。
――――ズドン、バンッ‼
物凄い音が僕の鼓膜と腹部を刺激した。一瞬何が起きたのか分からなかったが、恐る恐るドアの方に顔を向けてみて、粗方の状況を理解することができた。
鍵のかかっていたはずのドアは壊されており、俺よりも頭三つか四つ分ほど小さい少女がそこに立っていた。些か考えにくいことであり信じたくないが、その少女が元凶であることは間違いなかった。
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