誰かのヒーローになりたい俺の第一歩

よーじろー

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第二章

第十九話

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「うーうーうーうー!」
「それと、これは弟の真冬。以上だ。それじゃあ」
「うーうーうーうーうーうーうーうー!」

 さっきよりも激しく唸り声を上げる。
 もはや、獰猛な獣のそれにしか見えない……っていうより、ん? ……何か違和感があるぞ。

「どーどーどーどー、分かった、分かった。今、外してやるからな。大人しくしてろよ」

 真冬に嵌められていた猿轡をゆっくり取る。

「……ぷはー。僕はね! 明楽真冬だよ! 特別にふゆたんって呼ぶことを許そう! 僕もあっちゃんって呼ぶから! それで」
「まふゆ!」
「…………はーい。自重しまーす」

 間にあかりが入り睨みをきかせてくれたおかげか、真冬がそれ以上迫ってくることはなかった。
 しかし、俺の聞き間違いかもしれないので確認のためリチャードに訊く。

「……リチャードさん」
「何でしょうか?」
「今、あかりさん、〝弟〟って言いました?」
「ええ、言いましたね」

 突きつけられる真実と現実のギャップに頭が追い付いていかない。

「……えっと、では、真冬さんは男なんですか?」

 その回答は真冬本人が答えてくれた。

「体はそうだけど、心は乙女かな」
「そうですよね、この見た目の人がおと……おとこ⁉」

 今度は俺が叫ぶ番だった。
 横に目をやり確認すると、あかりは困った顔で肯く。
 明楽真冬が男であることはどうやら確からしい。

「え、でも、じゃ、じゃあ、あの、その、む、む、胸は……」

 言いながら視線を上下させる。狼狽える自分を抑えることが出来ない。童貞の性である。

「胸? ああ、これね」

 そう言って、真冬は自分の胸を触る。すると、みるみるうちに胸が小さくなっていった。

「結構自然だったでしょ、これ。高かったんだ」

 自慢げにブラジャーを取りだす。どういう仕組みで作られているのか、経験のない俺にはさっぱり分からなかったが、とにかく人工物であるということだけは理解出来た。
 金髪ギャル改め金髪おかま。

「おい、神田」
「……はい」

 あかりが小声で話しかける。
 真冬はなぜかブラジャーをリチャードに勧めており、それを冷静にリチャードがいなしている。

「真冬は気になった男を付け回しては自分の物にするまで絶対に諦めない。しかも、それが殺戮の方向に向く」
「……えっと……いわゆる、ヤンデレってやつですか?」
「まあ、簡単に言うとそうだ」

 今になってようやくあかりの言うことが分かった。
 壁を何重に作ってもいとも簡単に壊し、入り込んでくるその性格には仮に女性であっても気を付けなくてはいけないが、それが男であるならば余計に気をつけなくてはいけない。
 しかも、それが己の命にまで関わってくることになるのであれば尚更である。
 金髪ギャル、金髪おかま改め、金髪ヤンデレ男の娘。
 あの作り物の胸の感触が忘れられないなどと少しでも気を抜くとその隙間に付け込まれかねない……ああ、想像しただけで寒気がしてきた。
 真冬との距離には十分に注意しなくてはいけない、と学んだ俺であった。
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