誰かのヒーローになりたい俺の第一歩

よーじろー

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第二章

第二十話

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「では、改めて今回の仕事について話す」

 その言葉が合図かのようにリチャードと真冬があかりに注目する。
 先ほどの和やかな雰囲気は消え、一気に空気が張り詰める。
 切り替えの早さが尋常ではない。

「依頼人、崇徳院朱雀すとくいんすざくの話をまとめたのが、これだ」

 あかりの声に合わせ、隣に立っていたリチャードがホワイトボードを裏返す。
 そこには崇徳院朱雀のみならず、その周辺の情報、特に家族の情報が事細かに記されていた。

「崇徳院朱雀は皆も知っての通り、崇徳院組の一人娘である。それで」
「……す、崇徳院組⁉」

 ぼーっと眺めていたホワイトボードの文字とあかりの声で俺は思わず裏返った声を上げてしまった。

「神田、うるさい! 説明の途中だぞ!」

 あかりが眉間に皺を寄せる。
 話を遮られるのが心底嫌な様子である。
 崇徳院組と言えばここ最近新宿周辺を中心に勢力を伸ばしている組事務所であり、その規模はもはや全国レベルである。
 また、近年では珍しく、薬や拳銃の密輸、転売などその他のことに関しても法に触れるようなしのぎは絶対に行わない組で有名である。
 そして、最近内輪揉めがあり何人かの幹部が逮捕されたばかりであり、今は緊張状態にある。
 この手の情報が表沙汰になることは少ない。
 普通に生きている人間であれば関わることはまずないだろう。
 では、なぜ俺が知っているかというと、そういった類のことに詳しい親友から聞いたからであって、なんでその親友は内情に詳しいのかというと……まあ、考えないでおこう。
 あいつのことだから、どうせろくなことにならないだろう。
 そして、そんな崇徳院組は俺にとって苦い思い出の塊であり、もはや聞きたくもない単語のひとつだった。

 それは俺が小学生になって間もない頃。
 何組かの家族が招待されたパーティーに俺たち家族も呼ばれ出席した時、俺は子供ながらこの屋敷にある異様な雰囲気を感じたのでよく覚えていた。
 広く大きな池も、鹿威しの音も、二メートル強もある熊の銅像も……全てに拒否されているようで、それでいて甘くどろっとした匂いが誘っているような、そんなよく分からないその空間が初めて来た俺は嫌だった。
 しかし、それ以上に俺が嫌いな理由はその時のパーティーにあった。
 大広間にそこかしこに並べられた豪華な料理。
 明らかに高そうな服を身に纏う人たち。
 子供である俺でも分かる。
 各々笑顔で話してはいるが、そこに誰一人として本心から笑っている人はいなかった。
 表面だけを取り繕って皆が皆、悟られまいと気を張り詰めながら笑っている。
 そんな空間も時間も吐き気がするほど嫌いだったのだ。
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