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第四章
第四十話
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「…………覚悟はあるんですか?」
「それがなければここまでは言いませんよ」
リチャードが再度、深い溜息を吐く。
「……では、最後にひとつ、訊かせてもらってもよろしいですか?」
「はい、何でしょう?」
リチャードが椅子に座り直し顔の前で両手を合わせる。祈るようなその姿が妙に様になっていた。
「どうして神田様はお嬢様のためにそこまでするのですか? こう言うのは心苦しいですが、お嬢様と知り合ったのもまだ一週間かそこらですし、そこまでする理由はありませんよね」
その質問に対する答えは考えなくても決まっていた。
「あかりさんは俺の命よりも大事な家族の命を助けてくれました。人が命を懸ける理由として、それ以上の理由は必要ないと思います。それに」
「それに?」
これをここで言うつもりはなかった。しかし、その時の俺は頭で考えるよりも早く、心を動かしていた。そして、心は俺の口唇と舌を巧みに操作していた。
「あかりさんのことを、命を懸けてでも守りたい、って思ってしまったから! 好きになってしまったから、だから……」
その続きを言う前にはっとする。
声帯を震わせ言葉が外界に出たと同時に俺の耳にも言葉が入り、そして、それは今度こそ確実に頭の中を伝った。
顔が紅潮していくのが分かる。
一気に体温が三度近く上がったような気がする。
さっきまで鳴っていた音がぱたりと止んだ。
真冬が、ふーん、と呟き俺を見る。
それを聞いたリチャードが席を立つ。
「……分かりました。そこまで言うならもう何も言いません」
そして、部屋を後にする。
リチャードが去った後の部屋は妙に居心地が悪かった。
気まずいわけではない。
心をどこに落ち着けたらいいのか分からない。
そんなふわふわとした感覚が俺の周りを覆っていたのだ。
本当は聞かない方がいいのかもしれない。
俺が下手に首を突っ込まずあかり達に任せておくこと。
それが一番平和だということも薄々感じていた。
しかし、それでも俺はあんな悲しそうな苦しそうな顔をするあかりを見るのは耐えられなかったのだ。
「真冬さん」
「ん?」
「……絶対に言わないでくださいね」
「もちのろん」
そう言って、真冬はノートパソコンを操作する。
画面に映し出したのは身近な人達の相関図だった。
明楽あかり、崇徳院朱雀を始め、今回の仕事で関わる人物の誰と誰がどういう関係で繋がっているのかが分かりやすく書かれている。
物事を客観的にまとめ見やすく整えることは誰にでも出来るようなことではない。
改めて真冬のスペックの高さに感嘆する。
「今から二年前、お姉ちゃんとすーちゃんに起きた事件がこれ」
真冬は相関図の横に過去の新聞記事の切り抜きを画面に映し出す。
――――崇徳院組本部、全焼。死者多数。火の不始末が原因か。
そこには大きな見出しでそう書かれてあった。
その事件自体は知っていた。
というより、その事件自体は当時テレビでも取り上げられていたので覚えている人は多いと思う。
「実はね、その時、お姉ちゃんとすーちゃんもそこにいたんよ」
そこから真冬はゆっくり話してくれた。
いつもの笑顔と口調に変化がなかったのでやや緊張感には欠けたが、詳細を知るには十分だった。
「それがなければここまでは言いませんよ」
リチャードが再度、深い溜息を吐く。
「……では、最後にひとつ、訊かせてもらってもよろしいですか?」
「はい、何でしょう?」
リチャードが椅子に座り直し顔の前で両手を合わせる。祈るようなその姿が妙に様になっていた。
「どうして神田様はお嬢様のためにそこまでするのですか? こう言うのは心苦しいですが、お嬢様と知り合ったのもまだ一週間かそこらですし、そこまでする理由はありませんよね」
その質問に対する答えは考えなくても決まっていた。
「あかりさんは俺の命よりも大事な家族の命を助けてくれました。人が命を懸ける理由として、それ以上の理由は必要ないと思います。それに」
「それに?」
これをここで言うつもりはなかった。しかし、その時の俺は頭で考えるよりも早く、心を動かしていた。そして、心は俺の口唇と舌を巧みに操作していた。
「あかりさんのことを、命を懸けてでも守りたい、って思ってしまったから! 好きになってしまったから、だから……」
その続きを言う前にはっとする。
声帯を震わせ言葉が外界に出たと同時に俺の耳にも言葉が入り、そして、それは今度こそ確実に頭の中を伝った。
顔が紅潮していくのが分かる。
一気に体温が三度近く上がったような気がする。
さっきまで鳴っていた音がぱたりと止んだ。
真冬が、ふーん、と呟き俺を見る。
それを聞いたリチャードが席を立つ。
「……分かりました。そこまで言うならもう何も言いません」
そして、部屋を後にする。
リチャードが去った後の部屋は妙に居心地が悪かった。
気まずいわけではない。
心をどこに落ち着けたらいいのか分からない。
そんなふわふわとした感覚が俺の周りを覆っていたのだ。
本当は聞かない方がいいのかもしれない。
俺が下手に首を突っ込まずあかり達に任せておくこと。
それが一番平和だということも薄々感じていた。
しかし、それでも俺はあんな悲しそうな苦しそうな顔をするあかりを見るのは耐えられなかったのだ。
「真冬さん」
「ん?」
「……絶対に言わないでくださいね」
「もちのろん」
そう言って、真冬はノートパソコンを操作する。
画面に映し出したのは身近な人達の相関図だった。
明楽あかり、崇徳院朱雀を始め、今回の仕事で関わる人物の誰と誰がどういう関係で繋がっているのかが分かりやすく書かれている。
物事を客観的にまとめ見やすく整えることは誰にでも出来るようなことではない。
改めて真冬のスペックの高さに感嘆する。
「今から二年前、お姉ちゃんとすーちゃんに起きた事件がこれ」
真冬は相関図の横に過去の新聞記事の切り抜きを画面に映し出す。
――――崇徳院組本部、全焼。死者多数。火の不始末が原因か。
そこには大きな見出しでそう書かれてあった。
その事件自体は知っていた。
というより、その事件自体は当時テレビでも取り上げられていたので覚えている人は多いと思う。
「実はね、その時、お姉ちゃんとすーちゃんもそこにいたんよ」
そこから真冬はゆっくり話してくれた。
いつもの笑顔と口調に変化がなかったのでやや緊張感には欠けたが、詳細を知るには十分だった。
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