誰かのヒーローになりたい俺の第一歩

よーじろー

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第四章

第三十九話

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 俺が部屋を後にしようとするが、その背中にかけられる言葉が足を止める。

「……分かりました。訊くことだけは許可しましょう。しかし、これだけは約束してください。絶対にお嬢様の邪魔をしないと」

 リチャードはこちらを向き言葉尻を強くする。
 細い目から覗く翡翠の瞳が俺の行動を制限する。
 手足を動かそうとするがなぜか自由に動かせない。
 心なし呼吸も苦しくなってきた。
 リチャードの瞳にはメデューサのような効果があるのかもしれない。

「でも、その言い方だと、聞いた後、俺が何か手を出したくなるような、そんな内容ということですよね?」

 珍しくリチャードがはっとした表情を作る。

「…………否定はしません」
「それなら尚更引くことは出来ません」

 そう言って、リチャードを見る。
 リチャードの翡翠の瞳は優しさを失ってはいなかったが、その輝きの中に若干の朱色が混じっているような感覚を受ける。

 ――――バンッ!

 リチャードが机を叩き立ち上がる。

「私はあなたにどうにか出来るようなことではないと言っているのです! お嬢様にも言われたのでしょう、関わるな、と! それにこれはあなたのためでもあるのですよ! それがどうして分からないのですか!」

 リチャードが大きな声で圧をかける。
 ここまで激昂するリチャードを見るのが初めてだったということもあり、どくんどくんと心臓が跳ねる。
 血流が早くなり若干の頭痛もしてきた。
 しかし、それはほんの数秒で、意外にも俺の心が落ち着くのは早かった。

「俺のため、ですか……」

 ひとつ息を吐き、強く目を閉じる。

 ――あかりは俺のためを思ってこの事案、下手したら最悪の場合、命を落としかねないこの事案から遠ざけようとしている。あかりの性格を考えるとそうかもしれない程度で可能性の一つに過ぎなかったが、リチャードさんがここまで言うのだ。それは本当なのだろう。しかし、それでも俺は……。

 ここに入るまでの俺であれば、考えて考えて、迷いに迷って、その挙句何も行動せず何も選択せずに傍観していただろう。
 しかし、その時の俺ではない。
 俺の命以上に大切なものを守ってくれたのだ。
 何を迷うことがあるだろうか。
 そう思うと、俺が立ち止まる理由はどこにもなかった。

「ありがとうございます。その気持ちは素直に嬉しいです。でも、こんな俺でもまだやれることがあるのであれば、それをやりたいんです! あかりさん……いえ、皆さんが危険な場所にいるのに、俺だけ安全な場所で指を咥えて見ているなんて、そんなのできません!」

 俺とリチャードに挟まれた真冬が目をきょろきょろさせながらキーボードを叩く。
 一触即発。
 その言葉が最もふさわしい空気であった。
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