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第五章
第四十八話
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「あれ? 行かないの?」
真冬がスマホを弄りながら訊く。
その言葉が耳に入るが、無視して虚空を見つめる。
『今すぐここから失せろ! 私の前に現れるな!』
実際、俺があかりの姿を見ることはなかった。
避けていたわけではないのだが、無意識の内にあかりが帰ってきそうな時間を避けていたのかもしれない。
知らず知らずのうちに俺の中には恐怖が住んでいたのだ。
人の役に立ちたいと思ったきっかけは母親の一言だが、日々を生きる中でその思いは強くなっていた。
それは俺が俺である理由であり、そうしないと俺が俺でいられないと感じてしまうほど、俺の心の奥深くに根付いていた。
――……しかし……。
あかりのことが好きだと自覚してからあまり迷うことはなかったしお膳立ては完璧に出来ているのに、あろうことか、ここにきて悪癖が顔を出す。
俺でないといけないような役割があるわけでもなければ、俺が行って何かが変えられるとは思っていない。
それならば、出しゃばって皆の足を引っ張るよりかは傍観していた方がスムーズに進むのかもしれない。
それにおそらく現場は危険であり、最悪の場合、命にかかわることだって十分に考えられる。
ここにいれば、そういったことは全くない。
何も考えなくても、何も行動しなくても時間がくれば事は終わっているだろう。
俺が無理して行かなくても……。
理屈では分かっている……分かっているのだが、それでも逡巡することを止めることは出来ない。それを止めてしまったらまさに思考を失ったロボットになってしまうような気がして怖かったのだ。しかし、だからといって心の中に靄がかかっており晴れることはないのだが……思いは同じところを行ったり来たりして先に進むことはなかった。
考える。
――俺に何かできることはあるのだろうか。
そう考えている時。
――――トゥルルルル、トゥルルルル……。
突然、スマホが着信を告げる。
スマホを耳から離し、ソファーで横になる真冬を見る。
相変わらず緊張感の欠片もない姿に不安を感じずにはいれないが、それでもお膳立てをしてくれた真冬に感謝する。
あかりの重荷になっていたのは朱雀だけでなかった。
俺もあかりの重荷になっていたのだ。
どうしてと考え始めれば分からないことは色々と出てくる。
しかし、結局、分かっているのは、俺はお袋やあかりよりも〝神田蒼月〟という人間のことを知らなかったということだけだった。
――周りがどうとかは関係ない。何が出来るかではない。結局自分が何をしたいのか、どうしたいのか。それだけだ。
その一点だけが俺には欠けていたのだ。
それに気づいた時、俺は玄関に置かれていた車の鍵を手に、事務所を飛び出していた。
――一刻も早くあかりさんの元に向かわなくては……。
真冬がスマホを弄りながら訊く。
その言葉が耳に入るが、無視して虚空を見つめる。
『今すぐここから失せろ! 私の前に現れるな!』
実際、俺があかりの姿を見ることはなかった。
避けていたわけではないのだが、無意識の内にあかりが帰ってきそうな時間を避けていたのかもしれない。
知らず知らずのうちに俺の中には恐怖が住んでいたのだ。
人の役に立ちたいと思ったきっかけは母親の一言だが、日々を生きる中でその思いは強くなっていた。
それは俺が俺である理由であり、そうしないと俺が俺でいられないと感じてしまうほど、俺の心の奥深くに根付いていた。
――……しかし……。
あかりのことが好きだと自覚してからあまり迷うことはなかったしお膳立ては完璧に出来ているのに、あろうことか、ここにきて悪癖が顔を出す。
俺でないといけないような役割があるわけでもなければ、俺が行って何かが変えられるとは思っていない。
それならば、出しゃばって皆の足を引っ張るよりかは傍観していた方がスムーズに進むのかもしれない。
それにおそらく現場は危険であり、最悪の場合、命にかかわることだって十分に考えられる。
ここにいれば、そういったことは全くない。
何も考えなくても、何も行動しなくても時間がくれば事は終わっているだろう。
俺が無理して行かなくても……。
理屈では分かっている……分かっているのだが、それでも逡巡することを止めることは出来ない。それを止めてしまったらまさに思考を失ったロボットになってしまうような気がして怖かったのだ。しかし、だからといって心の中に靄がかかっており晴れることはないのだが……思いは同じところを行ったり来たりして先に進むことはなかった。
考える。
――俺に何かできることはあるのだろうか。
そう考えている時。
――――トゥルルルル、トゥルルルル……。
突然、スマホが着信を告げる。
スマホを耳から離し、ソファーで横になる真冬を見る。
相変わらず緊張感の欠片もない姿に不安を感じずにはいれないが、それでもお膳立てをしてくれた真冬に感謝する。
あかりの重荷になっていたのは朱雀だけでなかった。
俺もあかりの重荷になっていたのだ。
どうしてと考え始めれば分からないことは色々と出てくる。
しかし、結局、分かっているのは、俺はお袋やあかりよりも〝神田蒼月〟という人間のことを知らなかったということだけだった。
――周りがどうとかは関係ない。何が出来るかではない。結局自分が何をしたいのか、どうしたいのか。それだけだ。
その一点だけが俺には欠けていたのだ。
それに気づいた時、俺は玄関に置かれていた車の鍵を手に、事務所を飛び出していた。
――一刻も早くあかりさんの元に向かわなくては……。
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