家族まるごと異世界に飛ばされた僕達のブログ

異世界での仕事

手続きもだいぶ終わり、とりあえず数ヶ月だけ住む家も決まって落ち着いてきたので、ボスであるケンと異世界での仕事について話をすることになりました。

この世界での私の仕事は風船みたいな生き物の遺伝子を研究することでした。この生き物は海の中で生活する生き物で、沢山現れたり消えたりするので『ゴースト』と呼ばれています。

このゴーストという生き物のDNAの転写産物であるRNAの先端には二十塩基程の特殊な決まった配列がついているものが沢山見つかっていました。

ゴーストにはその配列がついている遺伝子もありますが、ついていないものもあります。

私のプロジェクトはゴーストのRNAをできるだけたくさん調べて、特殊なRNAがついている遺伝子とついていない遺伝子の違いを調べるというものでした。

ですのでできるだけたくさんの遺伝子の先端部分の塩基配列の情報を集める必要がありました。

とりあえず3年間でゴーストのRNAの先端の塩基配列をできるだけ沢山調べて比べることになりました。

塩基配列を調べるということは結構手間ひまがかかります。一般的な技術では、一度に40個のRNAの配列を調べることが出来ます。しかし、読み取る装置にセッティングしてから電気泳動して配列を読み出すまでに約半日かかります。
ですので、一日に二回仕掛けたとして、100%成功しても80個しか読み取ることがてきません。

読み取る技術がまだまだ未熟だった頃はこのような仕事で400個くらい読み取ればそこそこの仕事になったものですが、今の時代ではそれくらいのデータでは大した発見はできません。ですので、今回のプロジェクトでは三年間で一万個の遺伝子を読み取り解析する事が目標になりました。

一日八十個、一週間で四百個、月に千六百個です。失敗をする事もありますから、フルに働いて一年間で一万個です。
塩基配列を読み取る手間ひま考えると気が遠くなる話です。しかし、ちゃんとデーターさえ集まれば論文にはなるという手堅いプロジェクトでした。

まずは塩基配列を読み取るための良質なRNAのプールを準備しなければいけません。どのようなRNAプールを使ってスタートするかは大変肝になる部分です。もし、粗悪なRNAプールを使ってしまえば苦労しても粗悪なデータしか取れないのでやり直しになります。なので慎重に作業をスタートしなければなりませんでした。

ただ、私はRNAやDNAを扱うことに関しては元の世界でかなりのトレーニングと経験をしているので、良質なRNAプールを作成する事には自信がありました。

この異世界でも元の世界と同じようにDNAやRNAが扱えることを願って作業に取りかかりました。