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神子と騎士と幼なじみ
第9話 神殿へー白sideー
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馬を早駆けさせて、1時間と少しをかけて白達は王都に到着した。
本来であれば先に王宮に立ち寄って浄化の旅の報告をするべきではあったが、白にとっての最優先事項は何よりも瑠璃だと、真っ先に神殿に向かった。
たどり着いた神殿は召喚された初日に見た頃と変わらず、王都の中で王宮の次に大きく、金銀様々な意匠が施された華美な建物だ。
神殿の正面に位置する見上げるほど大きな両扉の前に立ち、白は神殿を見上げる。
「たのもーー!!!」
大声で呼びかけ扉を右拳でドンドンと叩く。
「ちょっ……!怒られる!俺らが怒られる!!落ち着いて!」
「止めんなオルキナス!」
神殿の前で大声を出す白をオルキナスが大慌てで羽交い締めにして止める。
いくら大柄で力が強い白でも、白よりも更に上背があり騎士として鍛錬を詰んだオルキナスには適わず扉から引っペがされるが、なおジタバタと暴れる。
離せ!と白が騒いでいると、神殿の両扉がガチャリと開かれた。
「あら、オルキナス様に神子様?どうなされたのですか?」
扉からひょこりと顔を出したのは、ふわふわとした綺麗な亜麻色の髪を揺らした可憐な女性だった。
日本生まれの白からすれば女性にしては高身長だと感じるが、おそらくこちらの世界だと女性の平均身長くらいだろう。
にこにこと人好きのする笑顔を浮かべてこちらを見上げている。
神子である白の手前そんな勝手はしないと思いたいが、出てきた人物がもし他の神官だった場合、近衛騎士団が騒いだだのなんだのケチをつけてくるに決まっている。
出迎えたのがマリアで良かったとオルキナスは安堵した。
「ああ、良かったマリア様!神子殿が騒がしくてすみません、王宮に立ち寄る前に少し気になることがございまして、」
「マリア様、突然押しかけて申し訳ございません。近衛騎士団第1部隊が隊長、アルフォンス・フォン・ボールドウィンでございます」
暴れる白を羽交い締めにしたままで格好のつかないオルキナスだが、表情だけは柔らかな笑顔を取り繕って女性に声をかける。
未だにじたばたしている白とオルキナスを隣にぐいと押しやって、アルフォンスが腰を折って礼をとる。
扉を開けた目の前の女性が神殿の監視役のマリアという女性だったらしい。
物腰柔らかで非常に穏やかそうなマリアは瑠璃に危害を加えるようには見えなかったため、白も暴れるのをやめていったん大人しくなる。
暫定ではあるにしろ、魔族の可能性がある瑠璃に危害を加えるかもしれない神官達が出てくれば、出会い頭に一発ぶん殴って対抗心をへし折ってやろうと画策していた。
荒事にはならなそうで良かったとこっそり考えていたことはアルフォンス達には黙っておく。
「押しかけるだなんて、とんでもございませんわ。浄化の旅から帰ってこられたのですよね。長旅でお疲れでしょうし、まずは神殿でゆっくりお茶でもいかがですか?あ、ですが神殿だと羽を伸ばすことは難しいでしょうか……?」
意外だ。第一印象では何も考えてなさそうなのほほんとした女性かと思ってしまったが、白やオルキナスが神殿に対して快く思っていないことを悟ったらしい。
神殿での休憩を提案した直後、こちらの様子を伺って申し訳なさそうな顔を浮かべたマリアを見て、認識を改める必要があるなと感じた。
「お気を遣わせてしまい申し訳ございません。羽を伸ばせないなどとんでもないことでございます。しかし本日はルリ殿の様子を見る為に足を運んだのです。お気遣いは大変ありがたいですが、ルリ殿の元へ案内していただいてもよろしいですか?」
アルフォンスがマリアに向けてにこりと微笑む。
普段の堅物でつんけんした様子はなりを潜めていて、こいつはそんな顔ができるのかと、白は怪訝な顔でアルフォンスを見つめてしまった。
「まあ、そうでしたのね。ルリさんでしたら本日も神殿のお掃除をされていると思いますわ」
白のことは神子様と他人行儀な呼び方なのに対して、瑠璃のことは名前で呼ぶマリアをじとーっと睨めつけてしまう。
「……あの……?」
「……あんた瑠璃と仲良いの」
「ああ、そういう事でしたか!安心してくださいまし、私とルリさんはただのお友達です!神子様の大事なルリさんを横取りしたりしないですから」
「え、なに、もしかしてマリア様に嫉妬しちゃったの?男の嫉妬は見苦しいよ~?」
何かを察した様子のマリアが嬉しそうに白の問いかけを一部否定する。
それに対してオルキナスはいちいち白の気に障るいじりをしてくる。
うりうりと肘でつついてくるオルキナスにイラッとした白は甲冑の上から拳を1発お見舞いしてやった。
「あだッ!」
「2人とも何をしているのです……マリア様が困っております。そもそも、早くルリ殿を見に行かなくて良いのですか?」
茶番を繰り広げる白とオルキナスを一瞥して、アルフォンスが頭を押えてやれやれと呆れている。
「あぁっそうだった!オルキナスのバカに構ってる暇なんかねえんだよ!マリア、さん?早く案内してくれ!」
「ふふ、そんなに焦らなくても大丈夫ですのに。神子様はルリさんのことが大好きなんですのね」
近衛騎士を堂々とぶん殴った白に一瞬キョトンとしていたものの、慌て出した白の姿を見てマリアはくすりと顔を綻ばせた。
花が咲くような笑顔でころころと笑う彼女は、どんな男でも虜にしてしまいそうな魅力があった。
まあ、長い間瑠璃一筋の白には全くもって無縁の話だったのだが。
「ほんとに容赦ないよね神子殿……ぐすん」
オルキナスが殴られた場所をさすりながらわざとらしい泣き真似をする。
女性が見たら、母性本能がくすぐられる、とか言われるのだろうが、白にとってはでかい男が泣き真似をするだなんて胸焼けがするような光景を見せられて、思いっきり顔を顰めて見せた。
「神子様達も仲良くやってらっしゃるようで安心いたしましたわ。この時間ですとルリさんは恐らく厨房にいらっしゃると思いますので案内しますね」
にこにこと嬉しそうな表情を浮かべるマリアが扉を開けたまま、こちらへどうぞ、と手招きをする。
白達一行は先導して案内するマリアに追従して、神殿の奥へと足を進める。
「そういえば、瑠璃なら今日も掃除してるって言ってたけど、あいついつも掃除ばっかしてんの?」
移動する間に瑠璃の近況でも聞いておこうとマリアに尋ねる。
「そうですね、ルリさんは基本的に神殿内の環境維持のお仕事をされているそうです。ここには怪我人や病人も訪れますし、自分に出来ることは少ないからとルリさん自ら清掃の仕事をすると申し出たそうですよ」
環境維持というと壮大に聞こえるが、要は病院と同じで清潔に保っておく必要があるということだろう。
清掃と言っても神殿内はかなり広いようだからひとつの仕事として体を成しているのだろう。
「なるほどな。だから本日も、って言ったのか。雑用押し付けられてんのかと思って焦ったわ」
「そんなことございませんわ!ルリさんはこれくらいしか出来ることが無いからと卑下されておりましたが、いつも患者さまのことを考えて神殿中ぴかぴかにして下さるんです。立派なお仕事だと思いますわ」
上手くやれているのかと心配していたが、マリアが話す瑠璃のここでの様子を聞くに、ちゃんと自分の仕事も見つけて頑張っているらしいと少し安心した。
「なんだ、あのチビちゃん上手いことやってんだね。良かったじゃん神子殿」
「ああ、まぁそうだな」
しかし、いくら仕事を見つけて上手く生活出来ているとはいえ、神官達が瑠璃を冷遇していないとも限らない。
まだ神官達に瑠璃の目を見られていないという可能性もあるが、万が一のことがあってはいけない。
やはりまだ安心はしきれないと、白は歩みを早めた。
本来であれば先に王宮に立ち寄って浄化の旅の報告をするべきではあったが、白にとっての最優先事項は何よりも瑠璃だと、真っ先に神殿に向かった。
たどり着いた神殿は召喚された初日に見た頃と変わらず、王都の中で王宮の次に大きく、金銀様々な意匠が施された華美な建物だ。
神殿の正面に位置する見上げるほど大きな両扉の前に立ち、白は神殿を見上げる。
「たのもーー!!!」
大声で呼びかけ扉を右拳でドンドンと叩く。
「ちょっ……!怒られる!俺らが怒られる!!落ち着いて!」
「止めんなオルキナス!」
神殿の前で大声を出す白をオルキナスが大慌てで羽交い締めにして止める。
いくら大柄で力が強い白でも、白よりも更に上背があり騎士として鍛錬を詰んだオルキナスには適わず扉から引っペがされるが、なおジタバタと暴れる。
離せ!と白が騒いでいると、神殿の両扉がガチャリと開かれた。
「あら、オルキナス様に神子様?どうなされたのですか?」
扉からひょこりと顔を出したのは、ふわふわとした綺麗な亜麻色の髪を揺らした可憐な女性だった。
日本生まれの白からすれば女性にしては高身長だと感じるが、おそらくこちらの世界だと女性の平均身長くらいだろう。
にこにこと人好きのする笑顔を浮かべてこちらを見上げている。
神子である白の手前そんな勝手はしないと思いたいが、出てきた人物がもし他の神官だった場合、近衛騎士団が騒いだだのなんだのケチをつけてくるに決まっている。
出迎えたのがマリアで良かったとオルキナスは安堵した。
「ああ、良かったマリア様!神子殿が騒がしくてすみません、王宮に立ち寄る前に少し気になることがございまして、」
「マリア様、突然押しかけて申し訳ございません。近衛騎士団第1部隊が隊長、アルフォンス・フォン・ボールドウィンでございます」
暴れる白を羽交い締めにしたままで格好のつかないオルキナスだが、表情だけは柔らかな笑顔を取り繕って女性に声をかける。
未だにじたばたしている白とオルキナスを隣にぐいと押しやって、アルフォンスが腰を折って礼をとる。
扉を開けた目の前の女性が神殿の監視役のマリアという女性だったらしい。
物腰柔らかで非常に穏やかそうなマリアは瑠璃に危害を加えるようには見えなかったため、白も暴れるのをやめていったん大人しくなる。
暫定ではあるにしろ、魔族の可能性がある瑠璃に危害を加えるかもしれない神官達が出てくれば、出会い頭に一発ぶん殴って対抗心をへし折ってやろうと画策していた。
荒事にはならなそうで良かったとこっそり考えていたことはアルフォンス達には黙っておく。
「押しかけるだなんて、とんでもございませんわ。浄化の旅から帰ってこられたのですよね。長旅でお疲れでしょうし、まずは神殿でゆっくりお茶でもいかがですか?あ、ですが神殿だと羽を伸ばすことは難しいでしょうか……?」
意外だ。第一印象では何も考えてなさそうなのほほんとした女性かと思ってしまったが、白やオルキナスが神殿に対して快く思っていないことを悟ったらしい。
神殿での休憩を提案した直後、こちらの様子を伺って申し訳なさそうな顔を浮かべたマリアを見て、認識を改める必要があるなと感じた。
「お気を遣わせてしまい申し訳ございません。羽を伸ばせないなどとんでもないことでございます。しかし本日はルリ殿の様子を見る為に足を運んだのです。お気遣いは大変ありがたいですが、ルリ殿の元へ案内していただいてもよろしいですか?」
アルフォンスがマリアに向けてにこりと微笑む。
普段の堅物でつんけんした様子はなりを潜めていて、こいつはそんな顔ができるのかと、白は怪訝な顔でアルフォンスを見つめてしまった。
「まあ、そうでしたのね。ルリさんでしたら本日も神殿のお掃除をされていると思いますわ」
白のことは神子様と他人行儀な呼び方なのに対して、瑠璃のことは名前で呼ぶマリアをじとーっと睨めつけてしまう。
「……あの……?」
「……あんた瑠璃と仲良いの」
「ああ、そういう事でしたか!安心してくださいまし、私とルリさんはただのお友達です!神子様の大事なルリさんを横取りしたりしないですから」
「え、なに、もしかしてマリア様に嫉妬しちゃったの?男の嫉妬は見苦しいよ~?」
何かを察した様子のマリアが嬉しそうに白の問いかけを一部否定する。
それに対してオルキナスはいちいち白の気に障るいじりをしてくる。
うりうりと肘でつついてくるオルキナスにイラッとした白は甲冑の上から拳を1発お見舞いしてやった。
「あだッ!」
「2人とも何をしているのです……マリア様が困っております。そもそも、早くルリ殿を見に行かなくて良いのですか?」
茶番を繰り広げる白とオルキナスを一瞥して、アルフォンスが頭を押えてやれやれと呆れている。
「あぁっそうだった!オルキナスのバカに構ってる暇なんかねえんだよ!マリア、さん?早く案内してくれ!」
「ふふ、そんなに焦らなくても大丈夫ですのに。神子様はルリさんのことが大好きなんですのね」
近衛騎士を堂々とぶん殴った白に一瞬キョトンとしていたものの、慌て出した白の姿を見てマリアはくすりと顔を綻ばせた。
花が咲くような笑顔でころころと笑う彼女は、どんな男でも虜にしてしまいそうな魅力があった。
まあ、長い間瑠璃一筋の白には全くもって無縁の話だったのだが。
「ほんとに容赦ないよね神子殿……ぐすん」
オルキナスが殴られた場所をさすりながらわざとらしい泣き真似をする。
女性が見たら、母性本能がくすぐられる、とか言われるのだろうが、白にとってはでかい男が泣き真似をするだなんて胸焼けがするような光景を見せられて、思いっきり顔を顰めて見せた。
「神子様達も仲良くやってらっしゃるようで安心いたしましたわ。この時間ですとルリさんは恐らく厨房にいらっしゃると思いますので案内しますね」
にこにこと嬉しそうな表情を浮かべるマリアが扉を開けたまま、こちらへどうぞ、と手招きをする。
白達一行は先導して案内するマリアに追従して、神殿の奥へと足を進める。
「そういえば、瑠璃なら今日も掃除してるって言ってたけど、あいついつも掃除ばっかしてんの?」
移動する間に瑠璃の近況でも聞いておこうとマリアに尋ねる。
「そうですね、ルリさんは基本的に神殿内の環境維持のお仕事をされているそうです。ここには怪我人や病人も訪れますし、自分に出来ることは少ないからとルリさん自ら清掃の仕事をすると申し出たそうですよ」
環境維持というと壮大に聞こえるが、要は病院と同じで清潔に保っておく必要があるということだろう。
清掃と言っても神殿内はかなり広いようだからひとつの仕事として体を成しているのだろう。
「なるほどな。だから本日も、って言ったのか。雑用押し付けられてんのかと思って焦ったわ」
「そんなことございませんわ!ルリさんはこれくらいしか出来ることが無いからと卑下されておりましたが、いつも患者さまのことを考えて神殿中ぴかぴかにして下さるんです。立派なお仕事だと思いますわ」
上手くやれているのかと心配していたが、マリアが話す瑠璃のここでの様子を聞くに、ちゃんと自分の仕事も見つけて頑張っているらしいと少し安心した。
「なんだ、あのチビちゃん上手いことやってんだね。良かったじゃん神子殿」
「ああ、まぁそうだな」
しかし、いくら仕事を見つけて上手く生活出来ているとはいえ、神官達が瑠璃を冷遇していないとも限らない。
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