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神子と騎士と幼なじみ
第13話 望むこと**
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男が出ていってからほんの数分が経った頃だった。
ピッタリと閉じられていた扉が、ガチャリと大きな音を立てて開いた。
ぼんやりとベッド脇に座り込んだまま扉を見つめていた瑠璃は、扉から入ってきた人物がすぐに視界に入った。
部屋に飛び込んできたのは、額に大粒の汗をかいて何かに脅えた様子の男だった。
この男には見覚えがある。
今まで何度もこの部屋を訪れて、その度に瑠璃を抱いては首を絞めながら抱くのが好きだと言う悪趣味な男だ。
「なんで…ッなんでグレンツェの騎士がここに来てんだよッ!お前が呼んだのか!?」
けたたましい足音を鳴らして大股でベッド脇に座りこむ瑠璃に近づいて来て、そのまま胸ぐらを無遠慮に掴みあげた。
「ぅ…っ、しらない、です…っ」
騎士がここに来ているということは、つい先程の爆発音は騎士が攻め入ってきた音なのだろうか。
やっと騎士が瑠璃を探し出して始末しに来てくれたのだろうか。
尊い存在である神子として召喚された白の傍で、ずっと過去の罪を隠して日常を享受していた瑠璃は白とは対照的に罪深い存在だ。
きっとそんな瑠璃に騎士が制裁を加えるためにやって来たのだ。
瑠璃にとって罰を与えてくれる存在は願ったり叶ったりではあるが、この部屋から一歩も出ることなく外界との繋がりを遮断された瑠璃に騎士を呼び出す方法など存在しない。
実際の所、瑠璃を裁きに来てくれたというのも瑠璃の願望でしかなく、ここに騎士が訪れたという真の理由は検討もつかなかった。
「チッ!お前が知らねえとか関係ねぇんだよ!!どの道騎士にここがバレたら俺はもうおしまいだ!」
「ぁぐ…っ!」
気が立っている様子の男に腹を蹴り飛ばされ、ベッドサイドに背中を叩きつけられる。
「…この部屋はアイツが結界を張ってるらしいから、いくら騎士と言えど暫くは気づかねぇはずだ…」
胸ぐらを掴まれた瞬間に目を合わせてしまっている。
そのせいですでに男は息を荒らげていた。
ここに来た時から興奮状態だったせいか、目の焦点は合わずいつも以上に常軌を逸した雰囲気を醸し出していた。
「最後だ、どうせ殺されんなら、最期くらい楽しんでもバチは当たらねぇよな」
虚ろな目をしてボソボソと何か呟いた後、瑠璃の胸ぐらを掴み上げたままベッドに無理矢理引き上げて、そのまま押し倒した。
瑠璃はここに来てから下着などは与えられず、下半身を隠すほど丈の長いシャツを1枚身につけているだけで暮らしていた。
今そのシャツが胸元が見える位置まで一気にたくし上げられた。
自分のことを罰して欲しくて、でもこんなことは耐えられなくて、だから殺して欲しいと願ったのに、まだこの行為から逃げることは許されないらしい。
食い入るように瑠璃の目を見つめる男の視線に射止められて体が強ばった。
「い゙ぅ…!?」
男はとっくに硬く屹立していたそれを性急な仕草で下履きから取り出し、慣らしてもいない瑠璃の後孔へと無理に押し入れてきた。
散々嬲られ続けた後孔は本来緩んでしまいそうなものだが、瑠璃のそこは行為から暫く経つと慎ましやかな姿に戻っていた。
そのせいで慣らされずに突っ込まれると毎度酷く裂けて激痛に襲われる。
裂けた傷が治らないまま自分本位に腰を振られるだけならまだマシな方で、わざと傷付けるように動いて治癒魔法でその部分だけ治癒した直後にまた傷付ける、それを何度も繰り返して必要以上に瑠璃に痛みを与えてくる輩もいた。
何度与えられてもこの痛みは慣れるものでは無い。
「あぁ…ッ、やっぱ、何回ヤッてもお前のここは具合良いぜ…っ!」
「っ、ぅ…!ぁあ゙…ッ!、ゃあ…っ、」
パンパン、と肌と肌がぶつかる音が部屋に響く。
その行為は痛いだけのはずだが、長い間じっくりと開発された瑠璃の体は否が応でも快感を拾ってしまうようになっていた。
最初は激痛に顔を歪めていても、暫く腰を振られているだけで瑠璃の下半身は兆して先走りを零し始めてしまう。
喉から漏れる声も苦しさからだけではなく、ほのかに甘さを乗せて掠れていた。
「なぁ…っ、お前も気持ちいいよなあ、っ?オラ、もっと締めろッ!」
「ぅぐ…っ!?」
頬を紅潮させて発情した豚のように醜く荒い息を吐きながら、瑠璃の細い首に手を伸ばして締め上げる。
瑠璃の細首など、体格に見合って手が大きい男からすれば片手で締め上げることなど造作もない。
息が詰まって徐々に脳に酸素が回らなくなってくると思考もままならなくなってくる。
死にたいと願っていたはずなのに、人間の生存本能からか、あまりの苦しさからか、男の手を首から剥がそうともがくが男の腕はビクともしない。
「、は…っ、く、ぅ…っ」
次第に呼吸が浅くなっていき視界がぼやけてくるのが分かるが、男は瑠璃が意識を落とさないように、首を絞める力を調節してくるのだ。
こんなに苦しいのならいっその事意識を刈り取ってくれたら良いのに、それは叶わない。
瑠璃が一番苦しいと感じる瞬間をひたすら続けられる。
ぼやける視界で、下卑た笑みを浮かべる男の姿を見上げた。
(あぁ、このまま殺してくれたら、)
このまま殺してくれたらどれほど楽か。
しかし瑠璃の望み通りに事が動くことなど存在しないのだ。
痛いのは嫌だ、苦しいのは嫌だ。
そう願えば更に痛めつけられる。
死にたい、殺して欲しい。
そう願えば死なないように嬲られる。
自分は一体死ぬまで何度の絶望を抱けば赦されるのだろうか。
しかし、この苦しさを耐えればきっと騎士に殺してもらえる。
その小さな希望だけでなんとか心を保とうとした。
「おいッ、どこ見てるッ!!俺の目を見ろ!!」
「っぅ、げほッ…!」
男が手を離した隙に肺に空気を取り込もうと必死に咳き込む。
ベッドに肩に押さえつけられた状態で必死に空気を吸いこむが、それを邪魔するように男が顎を掴んで瑠璃の瞳を覗き込んだ。
瑠璃の目を見て理性を飛ばす時、その状態に深く入り込めば入り込むほど快感が強くなるらしい。
快楽を求める男ほど瑠璃の瞳を見つめたがった。
目の前の男は騎士が来て終わりを悟ったようで、ならば最期まで愉悦と快楽に浸りたいという欲望が透けて見える、なんとも愚かで醜い人間だった。
「あァ……最高だ……!」
「ぅあ゙…っ!?」
男が恍惚とした表情を浮かべた直後、瑠璃の中のものが更に硬く膨らんだ感覚がした。
中の圧迫感に顔を歪める瑠璃など見えていないのか、男は最奥まで一気に押し進めるように腰を打ち付けた。
ゴリゴリと中のしこりを強く抉られて目の前で火花が散るような快感に襲われ、呆気なく達した瑠璃の性器から白濁が吐き出された。
だがこれで終わるほどここに来る男達が優しい訳が無いと分かっている。
中でまだ欲望が吐き出されていないのなら、瑠璃が達したことなどお構い無しに腰を振り続ける人間しか瑠璃は知らない。
後孔まで垂れた白濁と切れた所から出血した血が混ざりあって、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てる。
「ぃ、だい、っやぁ゙…っ!」
達したというのに腰を止めない男のせいで、痛いほどに快感を高められる。
抵抗することこそしなくなったが、過ぎた快楽から逃げたくなることは抑えられない。
腰がガクガクと痙攣し始めて、自分で体を制御できなくなるこの感覚が瑠璃は大嫌いだった。
男が反射的に逃げようとしてしまう瑠璃の腰を掴んで自らの腰へと強く引き戻した。
「あ゙ぐ、ぅッ…!も、むり、ぃ゙…っ」
腹の奥からドチュンと音が鳴るほど突き入れられ、喉を仰け反らせる。
最奥のもっと奥、そこに入れられるといつもおかしくなってしまうもうひとつの入口をぐりぐりと抉られ、男がそこに入ろうとしているのが分かってしまう。
「やっ、そこやだぁ゙…っいれないで、っ!」
「……っ、…っ!」
やめて、まってなんて言っても止まるわけが無いのだが、今日の男はいつもに増して理性を飛ばしているせいか瑠璃の声すら届いていないようで、ただ荒い息を吐いて涎をダラダラと垂らしていた。
「か、は…ッ、~~っっ、!!あ゙あぁ゙…っ!も、とま、っで、っ」
下生えが当たるほどぴったりと腰を押し付けて奥のもうひとつの入口を貫かれ、腹の奥からぐぽっと音がした。
この絶頂はいつものとは違って深くて降りてこられなくなるような感覚がする。
自分を保っていられなくなるほどの快楽の奔流が恐ろしくて、瑠璃ははくはくと口を開いて体を震わせた。
ーどうして痛いことばかりするの?
ーぼくがこんな目をもって生まれたせい?
ーぼくなんか生まれて来なければよかったのに。
ーぼくなんか、しんじゃえばいいのに。
男に揺さぶられながら、瑠璃は両親を亡くして以降の記憶がフラッシュバックしていた。
瑠璃は両親を亡くしてすぐに叔父に引き取られた。
幼くして両親を亡くした瑠璃に、叔父は毎日心無い言葉を浴びせ続けた。
ーお前のせいでアイツらは死んだ。
そう言って叔父は瑠璃を殴りつけた。
ーお前が生まれて来なければ、アイツらは今でも幸せだったろうな。
そう言って叔父は瑠璃の首を絞めた。
そんな環境で過ごすしか無かった瑠璃が成長するまで死なずに済んだのは、ひとえに白がずっと傍で陽だまりのように暖かい優しさを分け与えてくれていたからだ。
瑠璃の目は宝石みたいで綺麗だと言ってくれた。
誰がなんと言おうと俺は瑠璃の味方だと言ってくれた。
それもそのはずだ。
瑠璃は両親の死は自分が原因だと、白に打ち明けることが終ぞ出来なかったのだ。
白は優しくて暖かくて、とても良い子なのだと瑠璃は知っている。
本当は瑠璃が両親を殺したと知っていたのに、瑠璃がその事実を隠しているのを見て、知らぬ振りをして瑠璃の傍にいてくれたのだろう。
きっとずっと煩わしかったに違いない。
だからこそこちらの世界に来て瑠璃と離れることが出来てからはその事実を隠すことなく、瑠璃は罰されるべき人間だと吹聴したのだろう。
瑠璃が命を繋いでいた理由など、生前の両親との暖かい思い出、そして白がそばに居てくれるから、のただ2つのみだった。
瑠璃の心にはその2つしか無かったのだ。
だと言うのに、そのうちの1つが崩れてしまった。
白に嫌な思いをさせていたに違いない自分なんかが、これからも白のそばに居ていいはずがない。
瑠璃ももうそれを望まない。
あれほど大好きだった白が、今は恐ろしくてたまらない。
瑠璃の中で白は、他の男達と同じ恐怖を抱く対象へと変わってしまった。
ならばもう、生きている意味なんて無い。
そうだ、騎士の到着を待たずに、今目の前の男に殺してもらえばいい。
瑠璃の頭の中に、騎士に助けてもらうという選択肢は存在しなかった。
否、殺してもらうことこそが救いだと、今の瑠璃は本気でそう思っている。
叔父から日常的に受けていた虐待のせいで、図らずも苦境に耐性が出来てしまっていた瑠璃でさえ、こんな環境に耐えられるはずが無かった。
本気で死を望んでしまうほど、瑠璃の心はどうしようもなく壊れてしまったのだろう。
「、て…」
嬌声では無い、囁くような小さな声が瑠璃の口からこぼれる。
「…っ、ころして…」
小さな音が確かな言葉になって瑠璃の口から零れた。
瑠璃の言葉を聞き取った瞬間、男が口角を釣り上げて醜い笑みを浮かべた。
直後、バキッと何か硬いものが折れる音が体の中に響いた。
男に掴まれていた片腕にとてつもない衝撃が走り、燃えるような激痛に襲われた。
もはや声を出すことも出来なくなった瑠璃はぼんやりと、また骨を折られたのか、と考えていた。
瑠璃を犯して暴力を振るう男達は、死ななければ何をしてもいいという考えだったせいで、今まで体中何ヶ所も骨を折られている。
そのせいで歩くこともままならないし、起き上がることも辛くなってしまったのだ。
そもそも、こちらの世界の男達は体も大きければ力も強い。
今目の前にいる男はわざとのようだが、折るつもりがなくても、抱いているうちに力が籠って折られるということも何度かあった。
しかし、骨折の痛みなど慣れる慣れないの次元では無い。
今も激痛に襲われているはずなのに、体は動かないし声も出ないことを不思議に感じた。
確実に骨を折ったはずの瑠璃に反応が無いのが気に食わないらしい男は、不可解そうに顔を顰めてもう片方の腕も折った。
しかしそれでも瑠璃は反応を示さない。
今度は痺れを切らしたように、瑠璃の顔を殴りつけた。
頬が赤く腫れ上がって鼻血が吹き出す。
それでもなお瑠璃はなんの反応も示さなかった。
躍起になった男は、もはや瑠璃の生き死になどどうでもいいと言わんばかりに、瑠璃の体中を何度も何度も殴打した。
殴られ続ける衝撃でベッドの上で体を跳ねさせながら、瑠璃はやはりぼんやりと考えていた。
(なんだ、殺してなんて頼まなくても、もう死ぬんじゃないか)
腕を折られても声すら上げない、殴られても防御姿勢になることも出来ない。
それは心だけではなく瑠璃の体の限界が近いことを示していた。
ひゅうひゅうと風が漏れるような浅い呼吸を繰り返し、顔の至る所から出血した瑠璃は、やっと死ねることへの喜びを感じていた。
(もう、痛いことも悲しいこともされない、やっと死ねるんだ)
ぐったりと四肢を投げ出したまま興奮した男に殴られ続ける瑠璃は、部屋の扉が誰かの手によって開けられた音に気づかなかった
ピッタリと閉じられていた扉が、ガチャリと大きな音を立てて開いた。
ぼんやりとベッド脇に座り込んだまま扉を見つめていた瑠璃は、扉から入ってきた人物がすぐに視界に入った。
部屋に飛び込んできたのは、額に大粒の汗をかいて何かに脅えた様子の男だった。
この男には見覚えがある。
今まで何度もこの部屋を訪れて、その度に瑠璃を抱いては首を絞めながら抱くのが好きだと言う悪趣味な男だ。
「なんで…ッなんでグレンツェの騎士がここに来てんだよッ!お前が呼んだのか!?」
けたたましい足音を鳴らして大股でベッド脇に座りこむ瑠璃に近づいて来て、そのまま胸ぐらを無遠慮に掴みあげた。
「ぅ…っ、しらない、です…っ」
騎士がここに来ているということは、つい先程の爆発音は騎士が攻め入ってきた音なのだろうか。
やっと騎士が瑠璃を探し出して始末しに来てくれたのだろうか。
尊い存在である神子として召喚された白の傍で、ずっと過去の罪を隠して日常を享受していた瑠璃は白とは対照的に罪深い存在だ。
きっとそんな瑠璃に騎士が制裁を加えるためにやって来たのだ。
瑠璃にとって罰を与えてくれる存在は願ったり叶ったりではあるが、この部屋から一歩も出ることなく外界との繋がりを遮断された瑠璃に騎士を呼び出す方法など存在しない。
実際の所、瑠璃を裁きに来てくれたというのも瑠璃の願望でしかなく、ここに騎士が訪れたという真の理由は検討もつかなかった。
「チッ!お前が知らねえとか関係ねぇんだよ!!どの道騎士にここがバレたら俺はもうおしまいだ!」
「ぁぐ…っ!」
気が立っている様子の男に腹を蹴り飛ばされ、ベッドサイドに背中を叩きつけられる。
「…この部屋はアイツが結界を張ってるらしいから、いくら騎士と言えど暫くは気づかねぇはずだ…」
胸ぐらを掴まれた瞬間に目を合わせてしまっている。
そのせいですでに男は息を荒らげていた。
ここに来た時から興奮状態だったせいか、目の焦点は合わずいつも以上に常軌を逸した雰囲気を醸し出していた。
「最後だ、どうせ殺されんなら、最期くらい楽しんでもバチは当たらねぇよな」
虚ろな目をしてボソボソと何か呟いた後、瑠璃の胸ぐらを掴み上げたままベッドに無理矢理引き上げて、そのまま押し倒した。
瑠璃はここに来てから下着などは与えられず、下半身を隠すほど丈の長いシャツを1枚身につけているだけで暮らしていた。
今そのシャツが胸元が見える位置まで一気にたくし上げられた。
自分のことを罰して欲しくて、でもこんなことは耐えられなくて、だから殺して欲しいと願ったのに、まだこの行為から逃げることは許されないらしい。
食い入るように瑠璃の目を見つめる男の視線に射止められて体が強ばった。
「い゙ぅ…!?」
男はとっくに硬く屹立していたそれを性急な仕草で下履きから取り出し、慣らしてもいない瑠璃の後孔へと無理に押し入れてきた。
散々嬲られ続けた後孔は本来緩んでしまいそうなものだが、瑠璃のそこは行為から暫く経つと慎ましやかな姿に戻っていた。
そのせいで慣らされずに突っ込まれると毎度酷く裂けて激痛に襲われる。
裂けた傷が治らないまま自分本位に腰を振られるだけならまだマシな方で、わざと傷付けるように動いて治癒魔法でその部分だけ治癒した直後にまた傷付ける、それを何度も繰り返して必要以上に瑠璃に痛みを与えてくる輩もいた。
何度与えられてもこの痛みは慣れるものでは無い。
「あぁ…ッ、やっぱ、何回ヤッてもお前のここは具合良いぜ…っ!」
「っ、ぅ…!ぁあ゙…ッ!、ゃあ…っ、」
パンパン、と肌と肌がぶつかる音が部屋に響く。
その行為は痛いだけのはずだが、長い間じっくりと開発された瑠璃の体は否が応でも快感を拾ってしまうようになっていた。
最初は激痛に顔を歪めていても、暫く腰を振られているだけで瑠璃の下半身は兆して先走りを零し始めてしまう。
喉から漏れる声も苦しさからだけではなく、ほのかに甘さを乗せて掠れていた。
「なぁ…っ、お前も気持ちいいよなあ、っ?オラ、もっと締めろッ!」
「ぅぐ…っ!?」
頬を紅潮させて発情した豚のように醜く荒い息を吐きながら、瑠璃の細い首に手を伸ばして締め上げる。
瑠璃の細首など、体格に見合って手が大きい男からすれば片手で締め上げることなど造作もない。
息が詰まって徐々に脳に酸素が回らなくなってくると思考もままならなくなってくる。
死にたいと願っていたはずなのに、人間の生存本能からか、あまりの苦しさからか、男の手を首から剥がそうともがくが男の腕はビクともしない。
「、は…っ、く、ぅ…っ」
次第に呼吸が浅くなっていき視界がぼやけてくるのが分かるが、男は瑠璃が意識を落とさないように、首を絞める力を調節してくるのだ。
こんなに苦しいのならいっその事意識を刈り取ってくれたら良いのに、それは叶わない。
瑠璃が一番苦しいと感じる瞬間をひたすら続けられる。
ぼやける視界で、下卑た笑みを浮かべる男の姿を見上げた。
(あぁ、このまま殺してくれたら、)
このまま殺してくれたらどれほど楽か。
しかし瑠璃の望み通りに事が動くことなど存在しないのだ。
痛いのは嫌だ、苦しいのは嫌だ。
そう願えば更に痛めつけられる。
死にたい、殺して欲しい。
そう願えば死なないように嬲られる。
自分は一体死ぬまで何度の絶望を抱けば赦されるのだろうか。
しかし、この苦しさを耐えればきっと騎士に殺してもらえる。
その小さな希望だけでなんとか心を保とうとした。
「おいッ、どこ見てるッ!!俺の目を見ろ!!」
「っぅ、げほッ…!」
男が手を離した隙に肺に空気を取り込もうと必死に咳き込む。
ベッドに肩に押さえつけられた状態で必死に空気を吸いこむが、それを邪魔するように男が顎を掴んで瑠璃の瞳を覗き込んだ。
瑠璃の目を見て理性を飛ばす時、その状態に深く入り込めば入り込むほど快感が強くなるらしい。
快楽を求める男ほど瑠璃の瞳を見つめたがった。
目の前の男は騎士が来て終わりを悟ったようで、ならば最期まで愉悦と快楽に浸りたいという欲望が透けて見える、なんとも愚かで醜い人間だった。
「あァ……最高だ……!」
「ぅあ゙…っ!?」
男が恍惚とした表情を浮かべた直後、瑠璃の中のものが更に硬く膨らんだ感覚がした。
中の圧迫感に顔を歪める瑠璃など見えていないのか、男は最奥まで一気に押し進めるように腰を打ち付けた。
ゴリゴリと中のしこりを強く抉られて目の前で火花が散るような快感に襲われ、呆気なく達した瑠璃の性器から白濁が吐き出された。
だがこれで終わるほどここに来る男達が優しい訳が無いと分かっている。
中でまだ欲望が吐き出されていないのなら、瑠璃が達したことなどお構い無しに腰を振り続ける人間しか瑠璃は知らない。
後孔まで垂れた白濁と切れた所から出血した血が混ざりあって、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てる。
「ぃ、だい、っやぁ゙…っ!」
達したというのに腰を止めない男のせいで、痛いほどに快感を高められる。
抵抗することこそしなくなったが、過ぎた快楽から逃げたくなることは抑えられない。
腰がガクガクと痙攣し始めて、自分で体を制御できなくなるこの感覚が瑠璃は大嫌いだった。
男が反射的に逃げようとしてしまう瑠璃の腰を掴んで自らの腰へと強く引き戻した。
「あ゙ぐ、ぅッ…!も、むり、ぃ゙…っ」
腹の奥からドチュンと音が鳴るほど突き入れられ、喉を仰け反らせる。
最奥のもっと奥、そこに入れられるといつもおかしくなってしまうもうひとつの入口をぐりぐりと抉られ、男がそこに入ろうとしているのが分かってしまう。
「やっ、そこやだぁ゙…っいれないで、っ!」
「……っ、…っ!」
やめて、まってなんて言っても止まるわけが無いのだが、今日の男はいつもに増して理性を飛ばしているせいか瑠璃の声すら届いていないようで、ただ荒い息を吐いて涎をダラダラと垂らしていた。
「か、は…ッ、~~っっ、!!あ゙あぁ゙…っ!も、とま、っで、っ」
下生えが当たるほどぴったりと腰を押し付けて奥のもうひとつの入口を貫かれ、腹の奥からぐぽっと音がした。
この絶頂はいつものとは違って深くて降りてこられなくなるような感覚がする。
自分を保っていられなくなるほどの快楽の奔流が恐ろしくて、瑠璃ははくはくと口を開いて体を震わせた。
ーどうして痛いことばかりするの?
ーぼくがこんな目をもって生まれたせい?
ーぼくなんか生まれて来なければよかったのに。
ーぼくなんか、しんじゃえばいいのに。
男に揺さぶられながら、瑠璃は両親を亡くして以降の記憶がフラッシュバックしていた。
瑠璃は両親を亡くしてすぐに叔父に引き取られた。
幼くして両親を亡くした瑠璃に、叔父は毎日心無い言葉を浴びせ続けた。
ーお前のせいでアイツらは死んだ。
そう言って叔父は瑠璃を殴りつけた。
ーお前が生まれて来なければ、アイツらは今でも幸せだったろうな。
そう言って叔父は瑠璃の首を絞めた。
そんな環境で過ごすしか無かった瑠璃が成長するまで死なずに済んだのは、ひとえに白がずっと傍で陽だまりのように暖かい優しさを分け与えてくれていたからだ。
瑠璃の目は宝石みたいで綺麗だと言ってくれた。
誰がなんと言おうと俺は瑠璃の味方だと言ってくれた。
それもそのはずだ。
瑠璃は両親の死は自分が原因だと、白に打ち明けることが終ぞ出来なかったのだ。
白は優しくて暖かくて、とても良い子なのだと瑠璃は知っている。
本当は瑠璃が両親を殺したと知っていたのに、瑠璃がその事実を隠しているのを見て、知らぬ振りをして瑠璃の傍にいてくれたのだろう。
きっとずっと煩わしかったに違いない。
だからこそこちらの世界に来て瑠璃と離れることが出来てからはその事実を隠すことなく、瑠璃は罰されるべき人間だと吹聴したのだろう。
瑠璃が命を繋いでいた理由など、生前の両親との暖かい思い出、そして白がそばに居てくれるから、のただ2つのみだった。
瑠璃の心にはその2つしか無かったのだ。
だと言うのに、そのうちの1つが崩れてしまった。
白に嫌な思いをさせていたに違いない自分なんかが、これからも白のそばに居ていいはずがない。
瑠璃ももうそれを望まない。
あれほど大好きだった白が、今は恐ろしくてたまらない。
瑠璃の中で白は、他の男達と同じ恐怖を抱く対象へと変わってしまった。
ならばもう、生きている意味なんて無い。
そうだ、騎士の到着を待たずに、今目の前の男に殺してもらえばいい。
瑠璃の頭の中に、騎士に助けてもらうという選択肢は存在しなかった。
否、殺してもらうことこそが救いだと、今の瑠璃は本気でそう思っている。
叔父から日常的に受けていた虐待のせいで、図らずも苦境に耐性が出来てしまっていた瑠璃でさえ、こんな環境に耐えられるはずが無かった。
本気で死を望んでしまうほど、瑠璃の心はどうしようもなく壊れてしまったのだろう。
「、て…」
嬌声では無い、囁くような小さな声が瑠璃の口からこぼれる。
「…っ、ころして…」
小さな音が確かな言葉になって瑠璃の口から零れた。
瑠璃の言葉を聞き取った瞬間、男が口角を釣り上げて醜い笑みを浮かべた。
直後、バキッと何か硬いものが折れる音が体の中に響いた。
男に掴まれていた片腕にとてつもない衝撃が走り、燃えるような激痛に襲われた。
もはや声を出すことも出来なくなった瑠璃はぼんやりと、また骨を折られたのか、と考えていた。
瑠璃を犯して暴力を振るう男達は、死ななければ何をしてもいいという考えだったせいで、今まで体中何ヶ所も骨を折られている。
そのせいで歩くこともままならないし、起き上がることも辛くなってしまったのだ。
そもそも、こちらの世界の男達は体も大きければ力も強い。
今目の前にいる男はわざとのようだが、折るつもりがなくても、抱いているうちに力が籠って折られるということも何度かあった。
しかし、骨折の痛みなど慣れる慣れないの次元では無い。
今も激痛に襲われているはずなのに、体は動かないし声も出ないことを不思議に感じた。
確実に骨を折ったはずの瑠璃に反応が無いのが気に食わないらしい男は、不可解そうに顔を顰めてもう片方の腕も折った。
しかしそれでも瑠璃は反応を示さない。
今度は痺れを切らしたように、瑠璃の顔を殴りつけた。
頬が赤く腫れ上がって鼻血が吹き出す。
それでもなお瑠璃はなんの反応も示さなかった。
躍起になった男は、もはや瑠璃の生き死になどどうでもいいと言わんばかりに、瑠璃の体中を何度も何度も殴打した。
殴られ続ける衝撃でベッドの上で体を跳ねさせながら、瑠璃はやはりぼんやりと考えていた。
(なんだ、殺してなんて頼まなくても、もう死ぬんじゃないか)
腕を折られても声すら上げない、殴られても防御姿勢になることも出来ない。
それは心だけではなく瑠璃の体の限界が近いことを示していた。
ひゅうひゅうと風が漏れるような浅い呼吸を繰り返し、顔の至る所から出血した瑠璃は、やっと死ねることへの喜びを感じていた。
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