#遠足バス 1年A組

森野あとり

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四 十和田エリカ

囚われたエリカの絶叫

 エリカは独り、商店街の真ん中に立って周りを見渡した。
 こじんまりとした商店街の先は行き止まりで、反対側にある表通りに向かうしかないとわかる。だが、表通りには鵺がいる。
 どうしようかと迷っているエリカの足首が何かに捕まれた。

「ひっ」

 声を上げた途端、店舗の影から音も無く男が現れた。エリカの脚を掴んでいたのも男だ。だが、元が人間の男だというだけだ。五体が人間っぽいというだけ。蝋人形のように弾力の感じない黄味を帯びた灰色の肌には、血管が透けて見えている。ほとんど裸に近い格好で、汚く破れた布が肌の一部にまとわりついているだけの姿だった。
 そのグロテスクな姿に、恐怖を抑えきれなかった。

「ぎゃあ!」

 逃げようとした肩をがっしりと掴まれた。骨ばった手はほとんど肉がないのに、爪だけが異様に鋭い。肩を掴んでいた男の顔は陥没して、口だけしか確認できなかった。

「いや、はなして、はなしてってば! ひぎゃっ」

 泣きながら訴えるが、その口から垂れたよだれを見て、エリカは気を失ってしまった。




 ――意識を取り戻した時、エリカは自分がどこに居るのか理解が追い付かなかった。

 家のベッドではない……保健室でもない……どこかの教室で倒れた?

「どこ……あ、つっ」

 目に映ったのはグレーの無機質な天井。どこにでもあるような応接セット。
 なぜか頭が割れるように痛み、下半身の感覚が無かった。

(地獄……なわけないか)

 バスが潰れて山本が須賀を食い殺し、麻耶たちがぬえに襲われていた、エリカの『今』の現実はすっかり頭から抜けていた。
 しかし、それを思い出させる激痛が、膣を通し内臓へと伝わり、彼女は一瞬で全てを思い出すと同時に、体をのけ反らせ、あらん限りの声で叫んだ。

「ぐああああぁぁぁぁぁ! ぎゃあ、はがっあぁぁぁ!」

(痛い痛い痛い痛い痛いー)

 頭の中はその言葉しか浮かばないが、口から出たのは言葉にならない叫びだった。

「ひがぁ、ひあっ、うぎゃあぁ!!!」

 内臓まで届くかと思うくらいえぐられながら、乱暴なピストン運動を幾度となく繰り返され、体が真二つに裂けてしまうかと思えた。
 涙で歪んだ視界に、さっき見た顔の欠けた餓鬼のような、骸骨に皮を貼り付けた化け物が見える。そいつはエリカの体を持ち上げ、無我夢中で腰を振っていた。

「うがっうがあっ!」

 揺すられるたび、声と涙が溢れ出る。
 これ以上、体が曲げられないというところまで脚を持ち上げられたかと思うと、今度は肛門に何かがあてがわれた。
 何をされるのかと怯える間もなく、それはエリカの体内へと侵入してきた。
 メキメキと、バスがつぶれた時に聞いた音と同じ破壊音が、自分の下半身から聞こえた気がした。
 便を排出するための小さな穴に、ありえないほどの太い何かが無理やり突っ込まれ、またもや容赦なく何度も往復する。流れる血が潤滑油の働きをしてくれたのか、いつしかエリカの泣き声の中に喘ぎが混ざっていた。

「ふぐうっ、ふぐ、あはぁ!はあっは、はがああぁっ」

 何体の化け物がここにいるのかは確認しようも無いが、恐らく二体はいるだろうと思われた。
 エリカの体を揺さぶっている手の感触が、先程の顔の欠けた化け物とは違ったのだ。

「いい、イイよ」

 フギャハハハハ

「ヤラせろ」

「ホシイ」

 ギヒイイヒヒヒイイ

「イクイク」

「いいねぇ、イイ、イイ」

 下卑た笑い声にも聞こえる化け物たちの声の中に時折、人間の言葉が混ざる。
 言葉が通じるなら……と、エリカは泣きながら懇願した。

「お願い、やめて、許して、お、お願いぃお願いします、許して下さい」

 エリカの声が届いたのか、たちまち、ずぼりと乱暴に引き抜かれた。突然、ガマガエルのように腹を揺らした化け物が、エリカの顔をのぞきこんだ。

「オネガィ、ユルシデ?」
「ひぎいぃぃぃーーーーーー!!!」

 エリカの絶叫が部屋に響く。
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