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第一話 吉宗の隠密
武家娘の身投げ
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「ああっ、流されちまうぞ!」
誰かの叫ぶ声が聞こえた。
その紅い花は、静かに船着場から離れようとしている。
宗次郎は思わずその場に停泊していた猪牙舟に飛び乗り、体を乗り出した。
「おい、あぶねえ!」
船頭が慌てて駆け寄り、舟の頭を縛っていた綱を持つ。
「誰かあいつの体を支えろ!」
「俺が行く」
船頭の呼びかけに応えたのは、先程の若侍。すかさず乗り込んで来たかと思うと、宗次郎の腰をがっしりと抱きとめた。
(もうちょい……)
宗次郎はさらにぐっと身を乗り出し、腕を伸ばす。流れの中をまさぐるようにした手に、女の――おそらく若い女であろう腕が触れた。
「うっ」
流れる水よりも冷たい感触にぞっとした。
水を吸った着物は思った以上に重く、川の流れに宗次郎自身も一緒に持って行かれそうになった時、腰を掴んでいた若侍の手に力がこもった。
「踏ん張れ、もうちょっとだ」
背後の声にならい、女の腕を握る手に力を込め、舟の縁を掴んでいたもう片方の手で揺れる着物を掴んだ。
もう死んでいる――わかってはいたが、それでも何とか舟の下まで引っ張った。
やはり、若い娘である。
宗次郎が娘を舟の下まで引いたと同時に、見守っていた野次馬の一人が櫂でその着物を引っかけ、そろそろと岸まで誘導した。
宗次郎が娘から手を離したことを確認したように、腰を掴んでいた腕が緩んだ。ゆっくりとした動作で体を起こし、舟の縁に背を預け、大きく肩で息を吐いた。
すでに呼ばれていた*番太と、近くの船宿の船頭たちによって、女の水死体は無事に岸へ引き上げられたようだ。その一連の騒動を舟の上でぼんやりと眺めていると、若侍が声をかけて来た。
「無茶をするな。落ちたら仏さんと一緒に流されちまうとこだったぞ」
左右に揺れる猪牙舟の真ん中で睨んでいる。
「大丈夫だ。落ちたところで泳げる」
見ず知らずの男が、赤の他人の自分を真面目に心配していることに戸惑い、つい素っ気なく答え、先に舟を降りた。
ござの上に寝かされた娘の顔は隠されていたが、だらりと力の抜けた手足の異様な白さが、すでに魂が消えていることを示している。
巷の流行色ではない煌びやかな友禅の紅い牡丹が、まるで血のようにも見え、宗次郎は口の中を甘噛みした。
「だいじょうぶか。まるでお前が死人のようだぞ」
さっきの若侍が、いつの間にか隣に立っていた。
「平気だ」
言いつつも、女の死体から目を逸らす。
そのうち町奉行の同心が現れ、死体の検視が始まった。
宗次郎は若侍に背を向け、川の水で手を洗った。あの娘の皮膚の感触が消えるまで、ごしごしと両手を擦り合わせる。
夢中で手を擦っていると、背中に気配を感じた。手を洗うのを止めて振り向くと、さっき死体を検分していた同心が立っていた。
「お前さんが仏さんを見つけたのか」
「いえ、見つけたのはここの船頭で、俺は流されそうになっていた仏さんを引き上げる手伝いをしただけで」
座ったまま言い訳のように、ぼんやり答えていた時だった。
「いやあぁぁぁぁー!」
ひときわ大きく、悲痛な声が響き渡り、一瞬その場がしんと静まった。
「身投げだってよ」
「旗本のお嬢さんらしいぜ」
「可哀そうによ」
気の毒そうに交わされるひそひそ話によると、泣き声の主はあの娘の母親らしい。大八車に載せられた亡骸に縋りついて何度も名前を呼ぶ。
「おみつ、おみつぅ」
宗次郎の背後にいた同心が、大八車の方へ戻って行った。そして、取り乱している女を庇うように支えていた男に、遺書らしき文と草履を手渡す。
「ああいうのを見ると、やり切れねえな」
猪牙舟の上で宗次郎の腰を支えてくれていた若侍が零す。
「やはり、お嬢様で間違いござらぬか……」
同心の問いかけに、男は蒼い顔のまま、こくりと頷いた。娘の父親なのだ。
対し、同心にとっては身投げなどよくある出来事なのだろう。表情を変えず淡々と説明をしている。
「それらが橋のたもとに遺されておりました。あそこの柱に引っかかってくれたおかげで、お嬢様は下に流されずに済んだようです」
使いの者だけではなく、旗本の当主と奥方が直々に駆け付けるとは、余程の事情があったのだろうと、宗次郎なりに感じていた。
「顔が赤くなっておらぬことと、それほど水を飲んでおらぬことから、飛び込んですぐに心の臓が止まってしまったと考えられまする。一応、その他にも傷や痕がないか調べをせねば決めかねまするが、おおよそ、身投げではないかと推し量り申し上げます」
父親が同心から差し出された文を、その場で広げた。その肩ががっくりと落ち、そのまま文を握りしめた。
「まさか身投げ……そんな……」
「心痛、察するに余りまする。しからば、後ほど北番所(北町奉行)にて話を伺いたく存じまする」
亡骸が運ばれていく。大八車が動き出したと同時に、奥方は気をやったように倒れ込み、すぐそばに仕えていた従者に支えられながら駕籠に乗せられた。
「あちらの方々が、お嬢さんを引き上げて下さったようで」
同心がそう説明したせいで、宗次郎の去り時は失われてしまった。
いたたまれない。何と声をかけて良いのかも、どんな態度を取れば良いのかもわからず、ただ軽く顔だけで会釈した。
すぐさま父親が駆け寄り、深々と頭を下げられる。
「御手を穢させてしまい、真にかたじけないことでございまする。それがしは御書院番士の浅井半兵衛と申します。ぜひ、お礼に伺いたく、貴殿らの御尊名を」
宗次郎は慌てて手を横に振った。
「いえ、お構いなく、本当にただ通りすがっただけですから」
しかし若侍の方は、浅井に話しかけた。
「拙者、松……松本求馬と申す不肖の部屋住みでござるが、もし、差し支えなければ事情をお聞かせ願えぬだろうか」
余程、親切心の旺盛な男らしい。さっき宗次郎のことを心配したこともそうであるが。
(ほんま、お節介な男や)
あきれ、横目で睨んだ。
浅井はほんの少しの間、目を瞑ると、すぐに意を決したように話し始めた。
「実は今朝方、いつもは早起きの娘が起きて来ぬことに気付いた妻が娘の部屋に行ったのですが、その時すでに部屋はもぬけの殻で。しかも寝た形跡もなく……そこで初めて娘がいなくなっていることに気付き、慌てて番所に駆け込んだ次第でございます」
握り込んでいた文に目をやる。
「ですがすでにこの有様でして、拙者も何が何やら……。娘は数日後に見合いを控えておりましたゆえ、この様な、身投げなどするはずはないと、よもや美津に似た他人の空似であろうと……」
「顔を見るまでは信じられなかった」
「ええ」
流石に奥方のように取り乱すことなく語り終えると、握りしめていた手を開き、文の皺を伸ばして見せた。
「あいや、それは御内儀殿と」
松本求馬と名乗った若侍が、あわて制止したにもかかわらず、浅井は求馬に向かって差し出した。
「『恋ひ死なば鳥ともなりて君がすむ宿の梢にねぐらさだめむ』……これだけ?」
求馬が読んだのは、ただ一行の和歌。
「妻には伏せておりましたが、実はとある噂を耳にしておりました」
「噂、とな」
眉間の皺を深くした浅井が肯く。
すでに野次馬や同心も散って、船頭らは仕事に戻っていた。日常の戻った川岸には、何事もなかったように燕が低く旋回している。浅井はその燕を見るともなく眺め、皺の寄った眉間を指の先で揉んだ。
「なんでも、娘が叶わぬ恋に溺れていると」
「お相手は。いえ、噂の相手です」
「拙者には見当もつきませぬ。もとより世間知らずの娘ゆえ、未だ恋に溺れて身投げなど信じられませぬ。しかし、これは娘の手(筆跡)ではない」
遺書だと思われた恋歌の紙を、再び握りしめた。
求馬と宗次郎が顔を見合わせる。
「つまり、この文は、相手の男から贈られてきたものだということか」
浅井は震える唇を深呼吸で抑え込むと、まっすぐ求馬の方を見た。
「どうぞ、このことはご内密に。こうやって話を聞いていただけただけでも心が静まりましてございまする」
娘の残した草履と文を胸に抱き、深く辞儀をする。そしてそのまま、武家屋敷の並ぶ川下へと歩き去った。
ーーーーーーー
*番太――江戸時代、警察機構の代わりとなる町村治安の末端担当。主に木戸の隣の粗末な小屋に住み、犯罪予防、摘発、死人の確認等を任されている。身分は非人で被差別身分。
誰かの叫ぶ声が聞こえた。
その紅い花は、静かに船着場から離れようとしている。
宗次郎は思わずその場に停泊していた猪牙舟に飛び乗り、体を乗り出した。
「おい、あぶねえ!」
船頭が慌てて駆け寄り、舟の頭を縛っていた綱を持つ。
「誰かあいつの体を支えろ!」
「俺が行く」
船頭の呼びかけに応えたのは、先程の若侍。すかさず乗り込んで来たかと思うと、宗次郎の腰をがっしりと抱きとめた。
(もうちょい……)
宗次郎はさらにぐっと身を乗り出し、腕を伸ばす。流れの中をまさぐるようにした手に、女の――おそらく若い女であろう腕が触れた。
「うっ」
流れる水よりも冷たい感触にぞっとした。
水を吸った着物は思った以上に重く、川の流れに宗次郎自身も一緒に持って行かれそうになった時、腰を掴んでいた若侍の手に力がこもった。
「踏ん張れ、もうちょっとだ」
背後の声にならい、女の腕を握る手に力を込め、舟の縁を掴んでいたもう片方の手で揺れる着物を掴んだ。
もう死んでいる――わかってはいたが、それでも何とか舟の下まで引っ張った。
やはり、若い娘である。
宗次郎が娘を舟の下まで引いたと同時に、見守っていた野次馬の一人が櫂でその着物を引っかけ、そろそろと岸まで誘導した。
宗次郎が娘から手を離したことを確認したように、腰を掴んでいた腕が緩んだ。ゆっくりとした動作で体を起こし、舟の縁に背を預け、大きく肩で息を吐いた。
すでに呼ばれていた*番太と、近くの船宿の船頭たちによって、女の水死体は無事に岸へ引き上げられたようだ。その一連の騒動を舟の上でぼんやりと眺めていると、若侍が声をかけて来た。
「無茶をするな。落ちたら仏さんと一緒に流されちまうとこだったぞ」
左右に揺れる猪牙舟の真ん中で睨んでいる。
「大丈夫だ。落ちたところで泳げる」
見ず知らずの男が、赤の他人の自分を真面目に心配していることに戸惑い、つい素っ気なく答え、先に舟を降りた。
ござの上に寝かされた娘の顔は隠されていたが、だらりと力の抜けた手足の異様な白さが、すでに魂が消えていることを示している。
巷の流行色ではない煌びやかな友禅の紅い牡丹が、まるで血のようにも見え、宗次郎は口の中を甘噛みした。
「だいじょうぶか。まるでお前が死人のようだぞ」
さっきの若侍が、いつの間にか隣に立っていた。
「平気だ」
言いつつも、女の死体から目を逸らす。
そのうち町奉行の同心が現れ、死体の検視が始まった。
宗次郎は若侍に背を向け、川の水で手を洗った。あの娘の皮膚の感触が消えるまで、ごしごしと両手を擦り合わせる。
夢中で手を擦っていると、背中に気配を感じた。手を洗うのを止めて振り向くと、さっき死体を検分していた同心が立っていた。
「お前さんが仏さんを見つけたのか」
「いえ、見つけたのはここの船頭で、俺は流されそうになっていた仏さんを引き上げる手伝いをしただけで」
座ったまま言い訳のように、ぼんやり答えていた時だった。
「いやあぁぁぁぁー!」
ひときわ大きく、悲痛な声が響き渡り、一瞬その場がしんと静まった。
「身投げだってよ」
「旗本のお嬢さんらしいぜ」
「可哀そうによ」
気の毒そうに交わされるひそひそ話によると、泣き声の主はあの娘の母親らしい。大八車に載せられた亡骸に縋りついて何度も名前を呼ぶ。
「おみつ、おみつぅ」
宗次郎の背後にいた同心が、大八車の方へ戻って行った。そして、取り乱している女を庇うように支えていた男に、遺書らしき文と草履を手渡す。
「ああいうのを見ると、やり切れねえな」
猪牙舟の上で宗次郎の腰を支えてくれていた若侍が零す。
「やはり、お嬢様で間違いござらぬか……」
同心の問いかけに、男は蒼い顔のまま、こくりと頷いた。娘の父親なのだ。
対し、同心にとっては身投げなどよくある出来事なのだろう。表情を変えず淡々と説明をしている。
「それらが橋のたもとに遺されておりました。あそこの柱に引っかかってくれたおかげで、お嬢様は下に流されずに済んだようです」
使いの者だけではなく、旗本の当主と奥方が直々に駆け付けるとは、余程の事情があったのだろうと、宗次郎なりに感じていた。
「顔が赤くなっておらぬことと、それほど水を飲んでおらぬことから、飛び込んですぐに心の臓が止まってしまったと考えられまする。一応、その他にも傷や痕がないか調べをせねば決めかねまするが、おおよそ、身投げではないかと推し量り申し上げます」
父親が同心から差し出された文を、その場で広げた。その肩ががっくりと落ち、そのまま文を握りしめた。
「まさか身投げ……そんな……」
「心痛、察するに余りまする。しからば、後ほど北番所(北町奉行)にて話を伺いたく存じまする」
亡骸が運ばれていく。大八車が動き出したと同時に、奥方は気をやったように倒れ込み、すぐそばに仕えていた従者に支えられながら駕籠に乗せられた。
「あちらの方々が、お嬢さんを引き上げて下さったようで」
同心がそう説明したせいで、宗次郎の去り時は失われてしまった。
いたたまれない。何と声をかけて良いのかも、どんな態度を取れば良いのかもわからず、ただ軽く顔だけで会釈した。
すぐさま父親が駆け寄り、深々と頭を下げられる。
「御手を穢させてしまい、真にかたじけないことでございまする。それがしは御書院番士の浅井半兵衛と申します。ぜひ、お礼に伺いたく、貴殿らの御尊名を」
宗次郎は慌てて手を横に振った。
「いえ、お構いなく、本当にただ通りすがっただけですから」
しかし若侍の方は、浅井に話しかけた。
「拙者、松……松本求馬と申す不肖の部屋住みでござるが、もし、差し支えなければ事情をお聞かせ願えぬだろうか」
余程、親切心の旺盛な男らしい。さっき宗次郎のことを心配したこともそうであるが。
(ほんま、お節介な男や)
あきれ、横目で睨んだ。
浅井はほんの少しの間、目を瞑ると、すぐに意を決したように話し始めた。
「実は今朝方、いつもは早起きの娘が起きて来ぬことに気付いた妻が娘の部屋に行ったのですが、その時すでに部屋はもぬけの殻で。しかも寝た形跡もなく……そこで初めて娘がいなくなっていることに気付き、慌てて番所に駆け込んだ次第でございます」
握り込んでいた文に目をやる。
「ですがすでにこの有様でして、拙者も何が何やら……。娘は数日後に見合いを控えておりましたゆえ、この様な、身投げなどするはずはないと、よもや美津に似た他人の空似であろうと……」
「顔を見るまでは信じられなかった」
「ええ」
流石に奥方のように取り乱すことなく語り終えると、握りしめていた手を開き、文の皺を伸ばして見せた。
「あいや、それは御内儀殿と」
松本求馬と名乗った若侍が、あわて制止したにもかかわらず、浅井は求馬に向かって差し出した。
「『恋ひ死なば鳥ともなりて君がすむ宿の梢にねぐらさだめむ』……これだけ?」
求馬が読んだのは、ただ一行の和歌。
「妻には伏せておりましたが、実はとある噂を耳にしておりました」
「噂、とな」
眉間の皺を深くした浅井が肯く。
すでに野次馬や同心も散って、船頭らは仕事に戻っていた。日常の戻った川岸には、何事もなかったように燕が低く旋回している。浅井はその燕を見るともなく眺め、皺の寄った眉間を指の先で揉んだ。
「なんでも、娘が叶わぬ恋に溺れていると」
「お相手は。いえ、噂の相手です」
「拙者には見当もつきませぬ。もとより世間知らずの娘ゆえ、未だ恋に溺れて身投げなど信じられませぬ。しかし、これは娘の手(筆跡)ではない」
遺書だと思われた恋歌の紙を、再び握りしめた。
求馬と宗次郎が顔を見合わせる。
「つまり、この文は、相手の男から贈られてきたものだということか」
浅井は震える唇を深呼吸で抑え込むと、まっすぐ求馬の方を見た。
「どうぞ、このことはご内密に。こうやって話を聞いていただけただけでも心が静まりましてございまする」
娘の残した草履と文を胸に抱き、深く辞儀をする。そしてそのまま、武家屋敷の並ぶ川下へと歩き去った。
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*番太――江戸時代、警察機構の代わりとなる町村治安の末端担当。主に木戸の隣の粗末な小屋に住み、犯罪予防、摘発、死人の確認等を任されている。身分は非人で被差別身分。
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