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本日の出来事
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「一連の殺人には、全体的に見て不可解なことが多数あります」
「不可解なこととは?」
隣にいた榊が尋ねる。
「まずは榊さんも疑問に感じた、吉野先輩の自殺に見せかけた殺人だ。犯人が現場に残したメッセージ通りに殺人を行うなら、あんな中途半端な形で殺人を終わらせるはずがない。しかも殺害方法と自殺に見せかける方法が矛盾を出しているという、なんともずさんな偽装だった」
「確かにそうですね」
「俺はこれを見て、同じ人物がやったようには到底思えなかった。つまり吉野先輩を殺害した犯人と、吉野先輩の殺害を自殺に偽装した犯人は別人だと考えたんだ。この考えに辿り着いたのは、榊さんが呟いた殺人はもう行わないために吉野先輩を自殺に見せかけたんじゃないかって言葉だけどね」
「……」
「次に不可解な点は、水瀬先輩が持っていたナイフです」
式は水瀬の遺体の写真を取り出した。
「このナイフですが、何故死んでいた水瀬さんが持っていたのか、まずここが疑問でした。警察が調べたところ、吉野先輩を殺害した凶器はこのナイフで決まりだということがわかった。そしてナイフには水瀬さんの指紋しかついていなかった」
「ああ。調べていて僕もかなり不思議に思ったな」
「吉野先輩を殺害した凶器がなぜか殺害された水瀬さんが手に持っていて、しかもその凶器は水瀬さんに握らせることはできない。つまり水瀬さんが死んだときには、既にナイフを握っていたことになる」
「そして一度ナイフを抜き取ってもう一度握らすこともできないと言っていましたね」
「うん。ここまでの情報がそろえば、水瀬さんが吉野先輩を殺害した犯人だということになるんだ」
式は遠野の表情をうかがう。彼女は相変わらず俯いたままだ。
「ではなぜ水瀬さんが吉野先輩を殺害したのか。まあどっちみち写真の六人全員を殺すつもりだったから、ただ順番が早かっただけなのかもしれないけど、理由はもう一つあった」
「もう一つ?」
隼人が尋ねる。
「はい。それは吉野先輩が取り調べの時にいった、犯人の動機に気づいたことに繋がります」
「そういえば、あれは結局何だったのでしょうか」
榊がずっと疑問に思っていたことだ。
「吉野先輩はあることに気づいていた。そしていつそれに気づいたのかなんだけど、それは俺と榊さんが吉野先輩に話を聞きに行って、水瀬さんと真中さんに話を聞いたときだと思う」
「あのときですか」
「あのとき、水瀬さんは俺たちが昨日何をやっていたのかを聞いたとき、持っていた携帯ゲーム機を取り出して見せてくれた。それを吉野先輩もみていたんだ」
式は携帯型ゲーム機を取り出した。
「これは水瀬さんの遺品だけど、恐らく吉野先輩はこれを見て水瀬さんが井田さんを殺した犯人だと気づいた」
「このゲーム機を見てですか?」
「榊さん、俺たちも真相に近づいていたんだ。俺たちは図書室で情報をまとめていたとき、水瀬さんがゲーム機を通じて井田さんを呼び出したんじゃないかって考えてたよね」
「はい……」
「まさにその通りで、水瀬さんはゲーム機のソフトの機能であるボイスチャットを使って井田さんと連絡を取り、軽音楽部の部室に呼び寄せたんだ」
式はちらりと遠野を見た。
「そして取り調べの時、遠野さんもそれに気づいた。隼人さんが遠野さんに取り調べをしているとき、ボソッと呟いたでしょ。『最後にアクションを起こしたのは水瀬聖奈とのゲームでの対戦か』って」
「ああ、確かに呟いたな。そこで彼女も気づいたのか……」
「ええ。犯人が水瀬さんであることに気づいた遠野さんは、取り調べが終わった後水瀬さんの元に行って彼女に問いただした。吉野先輩も同様に問い詰めたけど、吉野先輩はそのまま殺害されてしまった。だが遠野さんは彼女に殺されることなく、むしろ殺してしまったんだ」
「……そうね」
ここまで黙っていた遠野がようやく呟いた。
「私がやった、ミステリー研究会の部室の密室も解けてるんでしょ」
「ええ。こういうのは失礼ですが、証拠も露骨に残ってましたし、すぐにわかりました」
式は二枚の写真を取り出し、遠野に見せる。
「この写真に写っている鍵のつまみですが、ここに擦れたような跡がありました。そして現場に落ちていたダブルクリップ。これらを組み合わせると簡単に密室が作れるんです」
「よくあるサムターン回しみたいな感じですね」
「そう。まずダブルクリップに紐を通し、鍵のつまみに挟んでおく。そして紐をドアの隙間に通して部屋を出て、ドアを閉めてから紐を引っ張る。こうするとクリップが引っ張られて鍵を閉めてくれるんだ」
「本当に単純な仕掛けなんだな」
「でも勢いよく引っ張りすぎたのか、引っ張ったときにダブルクリップが外れてしまい、部室の中に残ってしまった。しかもつけていた紐もちぎれてしまって、露骨に証拠が残るようになってしまった。まあ遠野さんは水瀬さんを殺害してしまった後でかなり焦っていたようだし、そこまで気が回らないのも無理はない」
式が彼女を見ると、こくこくと頷いていた。
「今日起きた事件の流れをまとめてみましょうか」
式は黒板に本日起きた事件の詳細をまとめた。
朝、登校してきた生徒によって軽音楽部の部室で殺害されている井田が発見される。現場に落ちていたものから犯人は7人の生徒の中にいることが推測され、彼らに取り調べとして話をきくことになる。その前に式と榊が吉野の計らいで真中と水瀬に話を聞いていた。その時に水瀬が取り出した携帯型ゲーム機を見て、吉野は水瀬が井田殺害の犯人ではないかと考えた。
そして取り調べが行われ、吉野は犯人に対して心あたりがあると答え、遠野は隼人が呟いた一言で水瀬が犯人ではないかと推測した。取り調べが終了した後に吉野は水瀬に問いただしたが、水瀬はその時に吉野を殺害してしまった。
その後、水瀬は遠野に呼び出される。遠野も吉野と同じく水瀬が犯人ではないかと問いただすが、水瀬は同じように遠野も殺害しようとした。しかし遠野は武器として竹刀を持っていたため、襲ってきた水瀬に対応することができた。だが不運にも応戦した時に竹刀が折れてしまい、それが水瀬の首を貫いて殺害してしまう。
それに動揺した遠野は自分がこの一連の殺人事件の犯人になってしまうのではないかと考え、隠滅を図ろうとした。
まず水瀬の教室に行ってロッカーからフルートを取り出し、それを水瀬の喉に突き刺した。そして隣に井田の殺人の時と同じように『思い出の場所で永遠に』と書かれた紙を置く。こうすることで水瀬も井田を殺害した犯人に殺害されたように見せかけた。
次に遠野はミステリー研究会の部室に行き、吉野の殺害を自殺に見せかけるために偽装した。遺書をパソコンで作り、それを隣に置いてダブルクリップを使って部屋を密室にする。こうすることで、表面上は吉野が犯人で最後は自殺した、というシナリオを作ることができた。
しかし吉野の死因と自殺というシナリオが矛盾していたために、吉野は自殺ではなく殺害されたという結論になってしまった。
「ちょっと長いですが、これが事件の流れです」
「不可解なこととは?」
隣にいた榊が尋ねる。
「まずは榊さんも疑問に感じた、吉野先輩の自殺に見せかけた殺人だ。犯人が現場に残したメッセージ通りに殺人を行うなら、あんな中途半端な形で殺人を終わらせるはずがない。しかも殺害方法と自殺に見せかける方法が矛盾を出しているという、なんともずさんな偽装だった」
「確かにそうですね」
「俺はこれを見て、同じ人物がやったようには到底思えなかった。つまり吉野先輩を殺害した犯人と、吉野先輩の殺害を自殺に偽装した犯人は別人だと考えたんだ。この考えに辿り着いたのは、榊さんが呟いた殺人はもう行わないために吉野先輩を自殺に見せかけたんじゃないかって言葉だけどね」
「……」
「次に不可解な点は、水瀬先輩が持っていたナイフです」
式は水瀬の遺体の写真を取り出した。
「このナイフですが、何故死んでいた水瀬さんが持っていたのか、まずここが疑問でした。警察が調べたところ、吉野先輩を殺害した凶器はこのナイフで決まりだということがわかった。そしてナイフには水瀬さんの指紋しかついていなかった」
「ああ。調べていて僕もかなり不思議に思ったな」
「吉野先輩を殺害した凶器がなぜか殺害された水瀬さんが手に持っていて、しかもその凶器は水瀬さんに握らせることはできない。つまり水瀬さんが死んだときには、既にナイフを握っていたことになる」
「そして一度ナイフを抜き取ってもう一度握らすこともできないと言っていましたね」
「うん。ここまでの情報がそろえば、水瀬さんが吉野先輩を殺害した犯人だということになるんだ」
式は遠野の表情をうかがう。彼女は相変わらず俯いたままだ。
「ではなぜ水瀬さんが吉野先輩を殺害したのか。まあどっちみち写真の六人全員を殺すつもりだったから、ただ順番が早かっただけなのかもしれないけど、理由はもう一つあった」
「もう一つ?」
隼人が尋ねる。
「はい。それは吉野先輩が取り調べの時にいった、犯人の動機に気づいたことに繋がります」
「そういえば、あれは結局何だったのでしょうか」
榊がずっと疑問に思っていたことだ。
「吉野先輩はあることに気づいていた。そしていつそれに気づいたのかなんだけど、それは俺と榊さんが吉野先輩に話を聞きに行って、水瀬さんと真中さんに話を聞いたときだと思う」
「あのときですか」
「あのとき、水瀬さんは俺たちが昨日何をやっていたのかを聞いたとき、持っていた携帯ゲーム機を取り出して見せてくれた。それを吉野先輩もみていたんだ」
式は携帯型ゲーム機を取り出した。
「これは水瀬さんの遺品だけど、恐らく吉野先輩はこれを見て水瀬さんが井田さんを殺した犯人だと気づいた」
「このゲーム機を見てですか?」
「榊さん、俺たちも真相に近づいていたんだ。俺たちは図書室で情報をまとめていたとき、水瀬さんがゲーム機を通じて井田さんを呼び出したんじゃないかって考えてたよね」
「はい……」
「まさにその通りで、水瀬さんはゲーム機のソフトの機能であるボイスチャットを使って井田さんと連絡を取り、軽音楽部の部室に呼び寄せたんだ」
式はちらりと遠野を見た。
「そして取り調べの時、遠野さんもそれに気づいた。隼人さんが遠野さんに取り調べをしているとき、ボソッと呟いたでしょ。『最後にアクションを起こしたのは水瀬聖奈とのゲームでの対戦か』って」
「ああ、確かに呟いたな。そこで彼女も気づいたのか……」
「ええ。犯人が水瀬さんであることに気づいた遠野さんは、取り調べが終わった後水瀬さんの元に行って彼女に問いただした。吉野先輩も同様に問い詰めたけど、吉野先輩はそのまま殺害されてしまった。だが遠野さんは彼女に殺されることなく、むしろ殺してしまったんだ」
「……そうね」
ここまで黙っていた遠野がようやく呟いた。
「私がやった、ミステリー研究会の部室の密室も解けてるんでしょ」
「ええ。こういうのは失礼ですが、証拠も露骨に残ってましたし、すぐにわかりました」
式は二枚の写真を取り出し、遠野に見せる。
「この写真に写っている鍵のつまみですが、ここに擦れたような跡がありました。そして現場に落ちていたダブルクリップ。これらを組み合わせると簡単に密室が作れるんです」
「よくあるサムターン回しみたいな感じですね」
「そう。まずダブルクリップに紐を通し、鍵のつまみに挟んでおく。そして紐をドアの隙間に通して部屋を出て、ドアを閉めてから紐を引っ張る。こうするとクリップが引っ張られて鍵を閉めてくれるんだ」
「本当に単純な仕掛けなんだな」
「でも勢いよく引っ張りすぎたのか、引っ張ったときにダブルクリップが外れてしまい、部室の中に残ってしまった。しかもつけていた紐もちぎれてしまって、露骨に証拠が残るようになってしまった。まあ遠野さんは水瀬さんを殺害してしまった後でかなり焦っていたようだし、そこまで気が回らないのも無理はない」
式が彼女を見ると、こくこくと頷いていた。
「今日起きた事件の流れをまとめてみましょうか」
式は黒板に本日起きた事件の詳細をまとめた。
朝、登校してきた生徒によって軽音楽部の部室で殺害されている井田が発見される。現場に落ちていたものから犯人は7人の生徒の中にいることが推測され、彼らに取り調べとして話をきくことになる。その前に式と榊が吉野の計らいで真中と水瀬に話を聞いていた。その時に水瀬が取り出した携帯型ゲーム機を見て、吉野は水瀬が井田殺害の犯人ではないかと考えた。
そして取り調べが行われ、吉野は犯人に対して心あたりがあると答え、遠野は隼人が呟いた一言で水瀬が犯人ではないかと推測した。取り調べが終了した後に吉野は水瀬に問いただしたが、水瀬はその時に吉野を殺害してしまった。
その後、水瀬は遠野に呼び出される。遠野も吉野と同じく水瀬が犯人ではないかと問いただすが、水瀬は同じように遠野も殺害しようとした。しかし遠野は武器として竹刀を持っていたため、襲ってきた水瀬に対応することができた。だが不運にも応戦した時に竹刀が折れてしまい、それが水瀬の首を貫いて殺害してしまう。
それに動揺した遠野は自分がこの一連の殺人事件の犯人になってしまうのではないかと考え、隠滅を図ろうとした。
まず水瀬の教室に行ってロッカーからフルートを取り出し、それを水瀬の喉に突き刺した。そして隣に井田の殺人の時と同じように『思い出の場所で永遠に』と書かれた紙を置く。こうすることで水瀬も井田を殺害した犯人に殺害されたように見せかけた。
次に遠野はミステリー研究会の部室に行き、吉野の殺害を自殺に見せかけるために偽装した。遺書をパソコンで作り、それを隣に置いてダブルクリップを使って部屋を密室にする。こうすることで、表面上は吉野が犯人で最後は自殺した、というシナリオを作ることができた。
しかし吉野の死因と自殺というシナリオが矛盾していたために、吉野は自殺ではなく殺害されたという結論になってしまった。
「ちょっと長いですが、これが事件の流れです」
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