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卒業式と決意
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遠野が自首した後、式は警察に頼んで残り三人に事情を説明してもらった。
三人とも事実を知ると言葉も発さず黙っていたようだ。
事件が起きてしばらくは休校になっていたが、卒業式は予定通り行われることになった。これは卒業生に配慮してのことらしい。
しかし事件があったため、卒業式の準備も急速に行われた。特に来賓関係は出席を断られることもあり、中々集まらなかったという。
もちろん式たち在校生も卒業式に参加した。
一時はどうなることかと思っていたが、無事行われた卒業式に参加して安堵していた。
「無事卒業式も終わりましたね」
卒業式終了後、榊が話しかけてくる。
「うん。まああんなことがあったから、皆笑顔や涙で卒業ってわけにはいかないけどね」
式たちは卒業生たちの顔を見る。
卒業式といえば、皆で写真を撮り合ったり、時には涙を流したり、笑顔で話し合ったりといった光景が広がるものだが、卒業生たちの表情はどこか固い。
卒業生たちの様子を見ていた式は、ふと知り合いの顔を見つける。
「神藤先輩」
その人物は神藤圭介。かつて式たちと灯篭館で起きた殺人事件を経験した一人である。
「おう、式と榊か。久しぶりだな。特に式は灯篭館以来か」
「え、榊さんとはあれからも会ってたんですか?」
「ああ。一応ミス研の部員として何度か顔を出してたぞ」
神藤の言葉を聞いて、いろいろなところに顔を出しているんだな、と式は思った。
「それはそうとお前たち、また殺人事件を解決したらしいな」
「はい。とは言っても式くんがほぼ全て解きましたが」
「そうか。流石だな式」
神藤も式の推理力は知っている。
「いえ……」
「お前たちが初めてミス研に来たときは、部員も俺を合わせて五人いたが、一年経った今では俺一人になっちまったな」
神藤はかつて所属していた部員四名を思い返していた。
四人中三人は殺害され、一人は殺人犯として逮捕されている。自分一人だけ唯一の生き残りと言ってもいい神藤の心中はどうなっているのだろうか。
「俺も吉野も卒業して、沖田たち後輩に見送られて……なんて卒業を夢見てたものだけど、現実はそういかなかったな」
「……」
「だが、お前たちがこうして話しかけてくれたのはありがたいと思ってるよ。後輩に見送られて卒業をするってのが俺の夢だったからな」
神藤は悲し気に笑った。
「まあクヨクヨしてらんないよな。まだ人生は折り返しにも来てないんだ。あいつらの分まで生きていかないと」
「それ、真中さんたちも言ってたらしいですよ。今回亡くなった人たちの分まで必死に生きていくって」
「お、ほんとか。ちょっとあいつらのとこに行ってくるかな。じゃあな式、榊。元気でな」
「ええ。ご卒業おめでとうございます」
先ほどとは違い、悲しさを含まない笑顔で神藤は立ち去った。
「神藤先輩も真中さんたちのグループも、皆笑顔で卒業とはいきませんが、それでも前を向いて次に進もうとしていますね」
「うん。なんか先輩たちの姿を見ていると、学校を休みがちの自分が恥ずかしくなってくるような気がするよ」
「え、式くんがそんなことを言うなんて……」
榊はこれまでの人生で最も驚いたような表情を浮かべていた。
「ちょ、そんなに驚かなくても」
「これはいい機会です。私たちも来月から二年生。後輩も入ってきますし、しっかりと学校に通って勉強をしなくてはいけませんね」
「ま、まあお手柔らかに……」
榊の強引さは、これまでの学校生活で実感していた。
式は今後の学校生活がどうなるのか不安になった。
「大丈夫ですよ。実はちょっとしたサプライズを用意しているのです」
「え、サプライズ?」
「それは後ほどのお楽しみですよ」
榊はにんまりと笑う。
「あ、春崎さんに呼ばれています。それでは失礼しますね」
「うん」
そう言って榊は去っていった。
「……この学校に来てもう一年か」
一人になった式は、学校の校舎を見上げながら思い返していた。
この学校には入学した当初から謎があった。完全学力主義という制度を採用しており、授業に出なくとも成績さえよければ問題はないというこの制度は、学校教育として問題があるのではないか、と思っている。
しかし現にこの学校は存在しているため、完全学力主義は認められているということになる。一体どういう理由で認められるようになったのか、そこが疑問なのだ。
灯篭館の事件後も、事件がなかったかのように扱われていた。被害者の遺族に対する隠蔽行動は、何か大きな力が動いているとしか思えなかった。
一年在学しても、この学校の正体は見えてこない。だがこの学校にお世話になっているのも事実なので、式は一歩踏み出せずにいた。
「……でも、そろそろ解き明かした方がいいのかもな」
具体的にどうするかはまだ考えていないが、式はこの学校の正体を探るために画策しようと決心していた。
三人とも事実を知ると言葉も発さず黙っていたようだ。
事件が起きてしばらくは休校になっていたが、卒業式は予定通り行われることになった。これは卒業生に配慮してのことらしい。
しかし事件があったため、卒業式の準備も急速に行われた。特に来賓関係は出席を断られることもあり、中々集まらなかったという。
もちろん式たち在校生も卒業式に参加した。
一時はどうなることかと思っていたが、無事行われた卒業式に参加して安堵していた。
「無事卒業式も終わりましたね」
卒業式終了後、榊が話しかけてくる。
「うん。まああんなことがあったから、皆笑顔や涙で卒業ってわけにはいかないけどね」
式たちは卒業生たちの顔を見る。
卒業式といえば、皆で写真を撮り合ったり、時には涙を流したり、笑顔で話し合ったりといった光景が広がるものだが、卒業生たちの表情はどこか固い。
卒業生たちの様子を見ていた式は、ふと知り合いの顔を見つける。
「神藤先輩」
その人物は神藤圭介。かつて式たちと灯篭館で起きた殺人事件を経験した一人である。
「おう、式と榊か。久しぶりだな。特に式は灯篭館以来か」
「え、榊さんとはあれからも会ってたんですか?」
「ああ。一応ミス研の部員として何度か顔を出してたぞ」
神藤の言葉を聞いて、いろいろなところに顔を出しているんだな、と式は思った。
「それはそうとお前たち、また殺人事件を解決したらしいな」
「はい。とは言っても式くんがほぼ全て解きましたが」
「そうか。流石だな式」
神藤も式の推理力は知っている。
「いえ……」
「お前たちが初めてミス研に来たときは、部員も俺を合わせて五人いたが、一年経った今では俺一人になっちまったな」
神藤はかつて所属していた部員四名を思い返していた。
四人中三人は殺害され、一人は殺人犯として逮捕されている。自分一人だけ唯一の生き残りと言ってもいい神藤の心中はどうなっているのだろうか。
「俺も吉野も卒業して、沖田たち後輩に見送られて……なんて卒業を夢見てたものだけど、現実はそういかなかったな」
「……」
「だが、お前たちがこうして話しかけてくれたのはありがたいと思ってるよ。後輩に見送られて卒業をするってのが俺の夢だったからな」
神藤は悲し気に笑った。
「まあクヨクヨしてらんないよな。まだ人生は折り返しにも来てないんだ。あいつらの分まで生きていかないと」
「それ、真中さんたちも言ってたらしいですよ。今回亡くなった人たちの分まで必死に生きていくって」
「お、ほんとか。ちょっとあいつらのとこに行ってくるかな。じゃあな式、榊。元気でな」
「ええ。ご卒業おめでとうございます」
先ほどとは違い、悲しさを含まない笑顔で神藤は立ち去った。
「神藤先輩も真中さんたちのグループも、皆笑顔で卒業とはいきませんが、それでも前を向いて次に進もうとしていますね」
「うん。なんか先輩たちの姿を見ていると、学校を休みがちの自分が恥ずかしくなってくるような気がするよ」
「え、式くんがそんなことを言うなんて……」
榊はこれまでの人生で最も驚いたような表情を浮かべていた。
「ちょ、そんなに驚かなくても」
「これはいい機会です。私たちも来月から二年生。後輩も入ってきますし、しっかりと学校に通って勉強をしなくてはいけませんね」
「ま、まあお手柔らかに……」
榊の強引さは、これまでの学校生活で実感していた。
式は今後の学校生活がどうなるのか不安になった。
「大丈夫ですよ。実はちょっとしたサプライズを用意しているのです」
「え、サプライズ?」
「それは後ほどのお楽しみですよ」
榊はにんまりと笑う。
「あ、春崎さんに呼ばれています。それでは失礼しますね」
「うん」
そう言って榊は去っていった。
「……この学校に来てもう一年か」
一人になった式は、学校の校舎を見上げながら思い返していた。
この学校には入学した当初から謎があった。完全学力主義という制度を採用しており、授業に出なくとも成績さえよければ問題はないというこの制度は、学校教育として問題があるのではないか、と思っている。
しかし現にこの学校は存在しているため、完全学力主義は認められているということになる。一体どういう理由で認められるようになったのか、そこが疑問なのだ。
灯篭館の事件後も、事件がなかったかのように扱われていた。被害者の遺族に対する隠蔽行動は、何か大きな力が動いているとしか思えなかった。
一年在学しても、この学校の正体は見えてこない。だがこの学校にお世話になっているのも事実なので、式は一歩踏み出せずにいた。
「……でも、そろそろ解き明かした方がいいのかもな」
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