彼女に6回浮気されて婚約破棄になるまでの実話(社会人編)

つむじ

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第一章 リラクゼーションの男

別れ

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「あなたも、彼氏なんですか?」

その言葉で全てを察した。
これは浮気というよりも、"二股だ。"
この人もまた、僕の存在を何も知らないんだ。

「あ、えーと。僕、高校生のときから付き合ってるんですよ。たぶん、あなた騙されてますよ。」

僕は少し震えた声で答えた。

しかし、"石原さん"は冷静だった。

「あー。なるほど。。すみません。本人から直接話を聞くまでは申し訳ないけど信じられません。それと今、仕事中なのでまた改めて連絡してもいいですか?」

そう簡単に向こうも引いてくれないか。
当然の返事だった。

「わかりました。お仕事中に失礼しました。」

そう告げて、僕は電話を切った。

疲れた。
鼻の下に汗が溜まっている。

かえって仕事中に失礼なことをしてしまったか。
石原さんの大人の対応にそんなことを思いながら、僕は汗を拭い、携帯を彼女の鞄にしまいながら男性トイレから出た。

すると、そこには物凄い剣幕で彼女が立っていた。

「なにやってんの!?私の携帯返してよ!!」

そう言うと、彼女は僕から鞄を剥ぎ取った。
それから彼女は携帯を開くと、取り乱しながら叫ぶように僕に言い放った。

「なんで勝手なことするの!?私の幸せ奪わないでよ!!」

僕はその瞬間、彼女が何を言っているのか分からなかった。
彼女の幸せは僕じゃないのか?
じゃあ、僕はなんなんだ。
また、あの日のように怒りが込み上げ、気付けば僕も叫ぶように言い返していた。

「自分が何をしてるのか分かってんのかよ!もうこれって二股じゃん!石原さんも何にも知らなかった!今、お前は僕のことも石原さんのことも傷付けてるんだよ?嘘ついてまで2人とも手に入れて、それって本当に幸せなわけ!?僕には全く理解できないよ!」

彼女は間髪入れずに突っかかってくる。

「うるさい!うるさい!勝手に人の携帯見ておいて説教しないでよ!あんたのそういうところ大嫌い!もう放っておいてよ!」

気づけば周りに沢山の人集りができていた。
その輪の中で彼女は僕を睨みつけている。

「車の中行くよ。」

僕はそう言うと、彼女の腕を掴んだ。

「触らないでよ!」

彼女は僕の手を振り解く。

「いいから来いよ!」

僕は強引に彼女の腕を掴み、そのまま駐車場へと歩きだした。

「痛いなー!!もう離して!!」

駐車場に入ったところで、僕は彼女の腕を離した。
急に悲しくなったからだ。
それに、帰る為の足がない彼女は勝手についてくるだろうと思った。

僕は車へと歩き出す。
少し離れた後ろから彼女は黙ってついてきた。

帰りの車中、しばらくお互いに無言だった。
彼女はずっと外の景色を見ていた。

僕は重い空気に耐えられず、ペットボトルのお茶を飲みながらこう切り出した。

「自分のやってることちゃんと考えなよ。それから石原さんに謝っといて。仕事中に電話かけちゃったから。」

僕がそう言うと、彼女はこちらを見ることもなく、"うん。"と一言返すだけだった。


翌日、いつも通り仕事をしていると、彼女からメールが入っていた。

「ごめんなさい。今回のことについてけじめをつけたい。3人で会ってちゃんと話がしたい。大好きだよ。」

僕は3人で会うことにあまり気が乗らなかったが、"わかった。"とだけ返信をした。

それから、その日の夜に地元のファミレスで3人集まることになった。

仕事を終え、約束の時間まで3時間ほどあったため、一度家に帰ることにした。
シャワーを浴びて夕飯も済ませてから、ファミレスへ向かうことにした。

ファミレスに車を止めると、近所ではあまり見かけないシルバーのワーゲンが止まっていた。

店内に入ると先に彼女と石原さんは席に通されていた。
2人は横並びで座っていて、ドリンクバーを頼んだのか、2人の前にはドリンクが並んでいた。

「あ、お待たせしました。」

そう言って、僕は2人の向かいに座った。
この時点で察しはついた。

「何か頼みますか?」

石原さんが僕に気を遣って話しかけた。

「いえ、僕は結構です。ありがとうございます。」

僕は軽く頭を下げながら答えた。

それから、彼女が不安げな顔をしながら、ゆっくりと口を開いた。

「私は、石原さんと付き合いたい。だからこれ以上あなたとは付き合えない。ごめんなさい。」

2人が横並びで座っている時点で大体のことは分かっていた。
しかし、実際に彼女の口から別れを告げられることは、想像していたよりもはるかに辛いことだった。

きっと今、僕は酷い顔をしているのだろう。
うまく笑顔を作れている気がしない。
僕は少し考えて、今できる精一杯の明るい声で答えた。

「うん!わかった。」

僕が怒ると思っていたのか、あまりに物分かりの良い返事に2人は戸惑っていた。
僕はそんな2人を見てさらに続けた。

「いいんじゃない?石原さんイケメンだし。もう決めたことなんでしょ?僕がここでウダウダ言っても何も変わらないし、僕はもう帰るよ。今までありがとう。楽しかったよ。」

そう告げて僕は席を立った。
これ以上ここにいたら泣いてしまう。
そんな僕の気持ちを察したのか、石原さんは僕を止めることも追いかけてくることもしなかった。

振り返ったらダメだ。
振り返らずに車に乗るんだ。
そう自分に言い聞かせながらファミレスを出た。

車に乗り、運転席のドアを閉めた瞬間。
彼女と過ごした時間が全てが終わったように感じた。
いや、実際に終わったんだ。

目には今にも溢れそうなほど涙が溜まっていた。
僕は車のエンジンをかけ、すぐに発進させた。
ファミレスの駐車場から出た瞬間に僕は嗚咽していた。

人生で初めて経験した苦しみだった。
ずっと一緒だと思っていた。
運命の人だと思っていた。
でも、そう思っていたのは僕だけだったんだ。

人は変わる。
周りの環境も世の中も世界も。
自分の知らない間に、いつの間にか気付かぬうちに変わっている。
今この瞬間にも変わり続けている。

涙で街頭の灯りや対向車のライトが綺麗に見えた。

家にはすぐに着いてしまった。
家の駐車場に車を停めてから、身体中の力が抜け落ち、すぐに動く気にはなれなかった。

そんな僕にFMラジオだけがずっと語りかけていた。

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