白犬物語〜しくじりヒロインと愉快な仲間たち【ユイナーダ王国シリーズ外伝】

砂月ちゃん

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しくじりヒロイン 辺境編

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その後、私は1時間くらいずっとアヤメたん♡がいかに可愛いかと言う惚気話を聞かされた。


本当はもっと話したかったらしいけど、部下の人達に『仕事が詰まっているから。』と言って連れて行かれた。


世話を任された私は辺境伯家に、住み込みで働けるようになったので、宿は引き上げたわ。


アヤメたん♡は確かに可愛いい……
コレを相手に、ゲーム通りの行動をしろというのは無理がある。


それで今朝からお世話をしているんだけど……


アヤメたん♡はボール遊びが大好きで、朝からずっと《取って来い》を続けている。


クルンと巻いた尻尾を振り、期待に満ちてキラキラした瞳で見つめられたら、シナリオ通りに、『アヤメに虐められた!』とリュウ様に訴えるとか、絶対無理よ~。


だってこんなに可愛いのよ!
小さくてふわふわのもこもこで、皆んなに愛されているアヤメたん♡。


たとえ、腕が痛くてパンパンになっても、自分で回復魔法を使って治してでも相手をしてしまった。


うぅっ何やってるのよ私ってば……


『それ以外の世話はしなくて良い。』と言われたから、ラッキーって思ってたけど、まさかこんなにキツイとは……


『雇っても直ぐ辞めてしまうから、困っていたんだ。助かるよ。』


って言ってたけど、そりゃ辞めるでしょうよ!
広い辺境伯家の庭で、毎日延々とボール遊び。
しかも、次の《取って来い係》が決まるまで、辞められない。


コレはもう罰ゲームでしょ!
なるべく早くお金を貯めて、王都に帰ってやるわ。


アレから約1か月……
アヤメたん♡の《取って来い係》から解放されました。


次の人が来たからじゃなくて、アヤメたん♡が、《取って来い》に突然飽きたから……


私はそこそこのお金を貰って、円満退職。


もちろんその間、リュウ様との恋愛が発展する事も無く。


辺境伯領を出る為に、遠距離馬車の手続きをしていたら、アヤメたん♡を人化した様なイメージの人とすれ違ったの。


すると辺境伯の屋敷の方から、砂埃りと共にリュウ様が走って来て、彼女を抱き上げてこう言った!


「お帰りアヤメ♡寂しかったよ~!!」

「リュウ様…王都になかなか来れないから、アヤメも寂しかった。」


えっ!?
あの人がアヤメ?
じゃあ、私が世話をしていたアヤメたん♡は?


「家の職人に頼んでいた、婚約チョーカーが昨日、やっと出来たんだ!
ほら♪」


そう言って、リュウ様は部下から受け取った木箱から、緑色のサイズ違いの首輪を取り出して、嬉しそうにアヤメに填めて貰っていた。


お返しにアヤメにも、緑色の首輪を填めてた。


アヤメの方も、頬を染めながら嬉しそうにしている。


すると、それまで静かにしていた周りの人達が一斉に、お祝いの言葉を投げかけ始めたわ。


領主の婚約にそのまま町はお祭り騒ぎになってしまったのよ。


苦労して2週間もかけて遠距離馬車で来たのに、憧れのリュウ様はおっさんでほぼ犬。


あんなに仲良くなったアヤメたん♡は獣人じゃなくて、リュウ様のペットだった。
ペットに婚約者と同じ名前付けるとか、紛らわしいのよ!!


私、辺境伯領ここにいったい何しに来たのかしら?


*アヤメたん♡
キシュウ辺境伯リュウ様の愛犬。


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