27 / 51
第2章 コンビニの訪問者
14
しおりを挟む
(三波家・父親視点)
昨日遅くまで、マサエを呼び出した寺の娘の親と話をしていたので、寝不足だ。
まったく…娘が娘なら、父親も父親だ!
あの男は昔から口が巧かった。
学校でもその口の巧さを生かして、児童会長や中学の生徒会長をしていた。
俺も選挙に出たが、一度も勝てなかった。
奴が寺を継ぐ為に、県外の高校に行った時は喜んだ。
高校こそ、俺が生徒会長になってやる!と思っていた。
ところがここで、思いもよらないライバルが現れた!元庄屋の分家の男が生意気にも生徒会長に立候補したのだ。
家の敷地内には土地神様の流れを組む社がある。親父が家を建てた時から社守をして来たんだ!お前達なんかより、ずっと身分が高いんだぞ!!
それをたかが、元庄屋の分家のくせに生意気な!普通なら、社守の家の俺に遠慮して、立候補しないのが礼儀だろ!結局、高校の生徒会長はソイツに取られた。
アレから20年余り、俺は今度こそあの男に勝ってやる!
俺は車に家族を乗せて、あの男の寺…寛現寺に向かっていた。ところがどういう訳か、車はまったく違うところを走り、車がたどり着いたのは、町を囲む山の麓にある古いお堂の前だった。
確か此処には【閻魔大王と天邪鬼】の像があったはずだ。
「あなた?どうしてこんな所に来たのよ?早くあの寺に行って、マサエを呼び出して脅した事を認めさせましょう!」
「パパ、此処どこ?」
嫌な予感がする。目的地とまったく違う場所に着くなんて、まるで最近のマサエと同じじゃないか!?
俺の予感は当たった。突然、車のエンジンが止まり窓を閉めているのに生臭い風が吹き、辺りは濃い霧に包まれた!
「な…なんだこの風と霧は?」
「何?この臭い!?ガソリン?」
「パパ、ママ早く逃げようよ!」
ところが、いくらやってもドアが開かない。
「故障か?この前点検に出したばかりなのに、ディーラーに電話して文句言わないと!」
「あなた!早く誰かに電話して、此処から出してもらいましょう!」
「いや…それがさっきから掛けてるんだが、電話もメールも繋がらないんだ!」
俺がそう言うと、女房の方も自分の携帯で助けを呼ぼうとしたが、やはり繋がらないらしく、焦っている。
「なんで繋がらないのよ!?」
マサエの方は、携帯すら出さない。
暫くすると、霧の中から誰かの気配がした。そう言えば、お堂の近くに運輸会社があった、もしかしたらそこの連中かもしれん。
「おーい!助けてくれ!!車のドアが開かないんだ!!」
ところがその声に気づいて、俺達の所に来たのは人間じゃなかった!
「「「オ…オバケ!?」」」
ろくろ首や一つ目小僧が車を囲んでいる。
『おー!居た居た!こんな所に居たぞ!』
「「ひっ!!な…何なの!?」」
女房とマサエは怯えた声を出す。
だが俺は平気そうな顔をして、ヤツらに凄んだ!
「お前達、俺が社守の家の者だと知って来たのか!?酷い目にあいたくなかったら、さっさと帰れ!!」
そう言って脅したのに、化け物共はまったく動じず、寧ろバカにした態度をとった。
『社守?それがどうした!?お前には、何の力も無いというのに!』
『お前が社守の仕事をしているところなど、見た事ないぞ!』
な…何故それを!?
『反省しないと此処から出してやらんぞ!嘘つき娘!!』
『社守の家の者が、神の住まいを荒らして、ただで済むと思うなよ!』
『娘の嘘を真に受けて、他人を攻撃してばかりいる愚か者共め!』
そう言ってヤツらは、何度も車を叩き揺さぶって脅す。
先に根を上げたのは、マサエだった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!勝屋さんに呼び出されたなんて、嘘です!!【スクモ塚】を荒らして神様怒らせたのも、私と夕子なの!謝ります!謝りますから、た…助けてください!!」
「どういう事なの?家のマサエちゃんが、そんな事をする訳がないでしょ!!マサエちゃんは学校でも人気者で!」
「嘘なの!学校に友達なんか居ないわ!!中学の時、友達だった夕子だって最近、着信拒否されてるし……
全部、パパとママの所為よ!友達とちょっと何かあったら、直ぐに怒鳴り込んで行って、その所為で皆んなにハブられてるのよ!!」
「そんな…嘘でしょマサエちゃん!?」
俺と女房はマサエの告白に、ショックを受けた。まさかそんな事になっていたなんて!
「パパもママも嫌い!大嫌いよ!!」
そう言ってマサエは、ドアを開けて出て行った。
今なら出れる!そう思ってドアを開けようとしたが、また開かなくなった。
『さて?お前らは、どうする?』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※1
【社守】(やしろもり)
正式な役職名では、ありません。
寺に対する寺男と同じ様な役割で、この作品では、社の掃除をしたりする人の事を言います。
昨日遅くまで、マサエを呼び出した寺の娘の親と話をしていたので、寝不足だ。
まったく…娘が娘なら、父親も父親だ!
あの男は昔から口が巧かった。
学校でもその口の巧さを生かして、児童会長や中学の生徒会長をしていた。
俺も選挙に出たが、一度も勝てなかった。
奴が寺を継ぐ為に、県外の高校に行った時は喜んだ。
高校こそ、俺が生徒会長になってやる!と思っていた。
ところがここで、思いもよらないライバルが現れた!元庄屋の分家の男が生意気にも生徒会長に立候補したのだ。
家の敷地内には土地神様の流れを組む社がある。親父が家を建てた時から社守をして来たんだ!お前達なんかより、ずっと身分が高いんだぞ!!
それをたかが、元庄屋の分家のくせに生意気な!普通なら、社守の家の俺に遠慮して、立候補しないのが礼儀だろ!結局、高校の生徒会長はソイツに取られた。
アレから20年余り、俺は今度こそあの男に勝ってやる!
俺は車に家族を乗せて、あの男の寺…寛現寺に向かっていた。ところがどういう訳か、車はまったく違うところを走り、車がたどり着いたのは、町を囲む山の麓にある古いお堂の前だった。
確か此処には【閻魔大王と天邪鬼】の像があったはずだ。
「あなた?どうしてこんな所に来たのよ?早くあの寺に行って、マサエを呼び出して脅した事を認めさせましょう!」
「パパ、此処どこ?」
嫌な予感がする。目的地とまったく違う場所に着くなんて、まるで最近のマサエと同じじゃないか!?
俺の予感は当たった。突然、車のエンジンが止まり窓を閉めているのに生臭い風が吹き、辺りは濃い霧に包まれた!
「な…なんだこの風と霧は?」
「何?この臭い!?ガソリン?」
「パパ、ママ早く逃げようよ!」
ところが、いくらやってもドアが開かない。
「故障か?この前点検に出したばかりなのに、ディーラーに電話して文句言わないと!」
「あなた!早く誰かに電話して、此処から出してもらいましょう!」
「いや…それがさっきから掛けてるんだが、電話もメールも繋がらないんだ!」
俺がそう言うと、女房の方も自分の携帯で助けを呼ぼうとしたが、やはり繋がらないらしく、焦っている。
「なんで繋がらないのよ!?」
マサエの方は、携帯すら出さない。
暫くすると、霧の中から誰かの気配がした。そう言えば、お堂の近くに運輸会社があった、もしかしたらそこの連中かもしれん。
「おーい!助けてくれ!!車のドアが開かないんだ!!」
ところがその声に気づいて、俺達の所に来たのは人間じゃなかった!
「「「オ…オバケ!?」」」
ろくろ首や一つ目小僧が車を囲んでいる。
『おー!居た居た!こんな所に居たぞ!』
「「ひっ!!な…何なの!?」」
女房とマサエは怯えた声を出す。
だが俺は平気そうな顔をして、ヤツらに凄んだ!
「お前達、俺が社守の家の者だと知って来たのか!?酷い目にあいたくなかったら、さっさと帰れ!!」
そう言って脅したのに、化け物共はまったく動じず、寧ろバカにした態度をとった。
『社守?それがどうした!?お前には、何の力も無いというのに!』
『お前が社守の仕事をしているところなど、見た事ないぞ!』
な…何故それを!?
『反省しないと此処から出してやらんぞ!嘘つき娘!!』
『社守の家の者が、神の住まいを荒らして、ただで済むと思うなよ!』
『娘の嘘を真に受けて、他人を攻撃してばかりいる愚か者共め!』
そう言ってヤツらは、何度も車を叩き揺さぶって脅す。
先に根を上げたのは、マサエだった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!勝屋さんに呼び出されたなんて、嘘です!!【スクモ塚】を荒らして神様怒らせたのも、私と夕子なの!謝ります!謝りますから、た…助けてください!!」
「どういう事なの?家のマサエちゃんが、そんな事をする訳がないでしょ!!マサエちゃんは学校でも人気者で!」
「嘘なの!学校に友達なんか居ないわ!!中学の時、友達だった夕子だって最近、着信拒否されてるし……
全部、パパとママの所為よ!友達とちょっと何かあったら、直ぐに怒鳴り込んで行って、その所為で皆んなにハブられてるのよ!!」
「そんな…嘘でしょマサエちゃん!?」
俺と女房はマサエの告白に、ショックを受けた。まさかそんな事になっていたなんて!
「パパもママも嫌い!大嫌いよ!!」
そう言ってマサエは、ドアを開けて出て行った。
今なら出れる!そう思ってドアを開けようとしたが、また開かなくなった。
『さて?お前らは、どうする?』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※1
【社守】(やしろもり)
正式な役職名では、ありません。
寺に対する寺男と同じ様な役割で、この作品では、社の掃除をしたりする人の事を言います。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる