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第3章 噂の真相
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「理子ちゃん、知らないで慌ててたの?【猿猴】って言うのは【河童】の一種で、猿に似てるって言われてるの。」
「えっ?【河童】?」
「世間一般で知られてる【河童】とは、だいぶ違うと思うわ。絵を見た方が早いかな?」
そう言って、大谷さんがタブレットで見せてくれたのは、《薄茶色で毛深く、猿に河童のお皿を乗せた様な姿をした、不気味な妖怪の姿》だった。
「へぇ~コレが【猿猴】かぁ。」
「全国的に有名な【河童】のイメージは、たぶん【遠野】の【河童】のイメージね。」
「大谷さんって妖怪とか詳しいんですか?」
「職業柄いろいろ調べたりしてるから。
ところで、ここ裏口は大丈夫なの?」
「裏口なら、たぶん大丈夫だと思いますよ。坂野君が戻って来る前に、満月が出て行きましたから。」
と徳さんが言って直ぐの事、満月が裏口から入って来た。どうやら誰か連れて来た様ね。
「お前ら何やってんだ?黒瀬さん店に入れなくて困ってたぞ。」
「どうも~。こんにちわ黒瀬です。」
「「「こんにちわ…… 」」」
「「いらっしゃい黒瀬さん。」」
黒瀬さんは最近、家が立ち退きになった為に、この辺りに引越して来たオネエさん。何時もサングラスにマスク、キャスケットにロングスカート姿で、だいたいこのくらいの時間にやって来るお客さん。
「アレ?その声…もしかして、さっき坂野君に、落とし物届け様としてたのって?」
「あ!そうそう、はい坊ちゃん落とし物。」
そう言って、落とし物を渡そうとする黒瀬さん。ところが、坂野君は……
「いや、それ俺んじゃねぇし!!しかも、びしょ濡れじゃないか!」
黒瀬さんが差し出したのは、びしょ濡れのビニール袋に包まれた黒いバッグみたいだった。
「えー違うの?じゃあどうしよう?」
「とりあえず、中身確認してみたら?何か手掛かりがあるかもしれないわよ?テンプレだと、大量の現金とか金塊とか死体とか白骨だったりするのよね~♪」
確かに大谷さんの言う通り、開けて見れば解る。どうか後ろの2つじゃありません様に……
万が一を考えて、ビニール袋を開ける為に、皆んなで近くの空き地に移動する事になった。と言ってもお店に誰も居ないと困るから満月と徳さんはお留守番。
びしょ濡れの床も掃除しないと行けないし……
ホントは、何かあった時に身元の怪しい2人が居ると、話がややこしくなるからなんだけどね。
黒瀬さんも『せっかくコーヒー飲みに来たのに、もし変な物が見つかったら飲む時間が無くなるし、この後仕事だから…… 』と言って来なかった。
どうやら黒瀬さんの職業は、夜のお仕事らしい。
「そう言えば、大谷さんと黒瀬さんって背格好似てますよね?」
移動する途中で、薫ちゃんが少し前を歩く大谷さんを見てそんな事を言い出した。確かにさっきは気が付かなかったけど、ぱっと見は似ているかも……
どちらも似たようなサングラスにマスク、ロングスカートだし。違いは黒瀬さんがいつも被っているキャスケットくらいかな?
「そう言えばそうかも……
まぁ似た様な格好の人なんかたくさん居るわよ。」
そうこうしている間に、目的地の空き地に着いた。
「この辺でいいか?じゃあ開けるからな!」
坂野君が家から持って来たハサミで、ビニール袋に巻いてあったテープを切ってバッグを取り出す。
ビニール袋に入れてあったから、バッグは濡れて無かった。慎重にバッグを取り出し、そっと開けてみる。
皆んなで中身を確認すると、中にはテンプレ通り大量の現金が!!
「「「「マジ!?」」」」
「冗談で言ったのに、ホントに現金入ってた!」
「どうしよう?山分け???」
「阿保か!!そんな事したら、俺達まで捕まるかもしれないだろ!!
落とし主が現れなかったら、その時山分けにすればいいだろ!!」
「「なるほど!!」」
「ちょっと、皆んな何言ってるのよ!とりあえず警察呼ばないと!!」
その後直ぐ、通報で駆けつけた警察に、バッグとそれを包んでいたびしょ濡れのビニール袋は回収された。
「君達ねぇ…こういう時は直ぐ警察に、知らせてくれないと…… 」
「「「「は~い!次から気をつけま~す!」」」」
「次からって、君達ねぇ…… 」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(その頃ストロベリームーンでは…… )
「オイ、黒瀬!!わりゃ何やっとるんじゃ!?」
「えっ?何って???」
「「『何』じゃないわ!この馬鹿タレが!」」
「なんじゃこの【ずぶ濡れの幽霊の目撃情報】の数は!?ほぼ毎回見られとるじゃないか!!」
「あれほど『見つからん様に、気いつけぇ!』言うたのに!!」
「えーだって、あそこ隠れる所無いし……
この時間に出て支度しないと、仕事に間に合わないんだよー。」
「お前の所為で、あの池は暫く住めなくなるぞ!」
「えぇっ!?何で~???せっかく住み慣れて来たのに~!」
「お前があがぁな物拾うて来たから、この後あの池は警察が見張りを立てたり、池さらいするに決まっとるじゃろ!!」
「警察が来る前にサッサと引越しせぇ!!」
「そんなぁ~。」
「早う行かんと、荷物を取りに行く時間が無うなるぞ!」
「うわぁー大変!急がなきゃ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そう言って黒瀬さんは、慌てて【猿池】に帰って行ったそうです。
黒瀬さんの正体……
それは…一部地域を騒がす【ずぶ濡れの幽霊】猿猴だった。
近くの運送会社で、夜勤専門の事務員をしているんだそうです。
何それ?私聞いて無いわよ!!
そして、あのずぶ濡れのビニール袋を拾ったのは、いつの間にか坂野君という事になっていた。
どうやら豆狸が、何かやったらしい。
数日後…あのお金の出所を警察より早く、薫ちゃんから知らされた。
「バッグの中身は【2カ月前に空き巣に盗まれた、現金と宝石】だったそうよ…… 」
「それって、もしかして?」
「まぁ、時期的に考えても犯人はたぶん三盛の親じゃね?」
「たぶん、今日のお昼のニュースの時間には警察から発表があると思うわ。」
流石は薫ちゃん!情報早いわね!それにしても、ここで三盛さんの両親に繋がるとは思わなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♪♪♪砂月ちゃんのミニ広島弁コーナー♪♪♪
※1
《あがぁな》→『あんな』
バリエーションとして
《そがぁな》→『そんな』
《こがぁな》→『こんな』
というのもあります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※2
第2章参照。
「えっ?【河童】?」
「世間一般で知られてる【河童】とは、だいぶ違うと思うわ。絵を見た方が早いかな?」
そう言って、大谷さんがタブレットで見せてくれたのは、《薄茶色で毛深く、猿に河童のお皿を乗せた様な姿をした、不気味な妖怪の姿》だった。
「へぇ~コレが【猿猴】かぁ。」
「全国的に有名な【河童】のイメージは、たぶん【遠野】の【河童】のイメージね。」
「大谷さんって妖怪とか詳しいんですか?」
「職業柄いろいろ調べたりしてるから。
ところで、ここ裏口は大丈夫なの?」
「裏口なら、たぶん大丈夫だと思いますよ。坂野君が戻って来る前に、満月が出て行きましたから。」
と徳さんが言って直ぐの事、満月が裏口から入って来た。どうやら誰か連れて来た様ね。
「お前ら何やってんだ?黒瀬さん店に入れなくて困ってたぞ。」
「どうも~。こんにちわ黒瀬です。」
「「「こんにちわ…… 」」」
「「いらっしゃい黒瀬さん。」」
黒瀬さんは最近、家が立ち退きになった為に、この辺りに引越して来たオネエさん。何時もサングラスにマスク、キャスケットにロングスカート姿で、だいたいこのくらいの時間にやって来るお客さん。
「アレ?その声…もしかして、さっき坂野君に、落とし物届け様としてたのって?」
「あ!そうそう、はい坊ちゃん落とし物。」
そう言って、落とし物を渡そうとする黒瀬さん。ところが、坂野君は……
「いや、それ俺んじゃねぇし!!しかも、びしょ濡れじゃないか!」
黒瀬さんが差し出したのは、びしょ濡れのビニール袋に包まれた黒いバッグみたいだった。
「えー違うの?じゃあどうしよう?」
「とりあえず、中身確認してみたら?何か手掛かりがあるかもしれないわよ?テンプレだと、大量の現金とか金塊とか死体とか白骨だったりするのよね~♪」
確かに大谷さんの言う通り、開けて見れば解る。どうか後ろの2つじゃありません様に……
万が一を考えて、ビニール袋を開ける為に、皆んなで近くの空き地に移動する事になった。と言ってもお店に誰も居ないと困るから満月と徳さんはお留守番。
びしょ濡れの床も掃除しないと行けないし……
ホントは、何かあった時に身元の怪しい2人が居ると、話がややこしくなるからなんだけどね。
黒瀬さんも『せっかくコーヒー飲みに来たのに、もし変な物が見つかったら飲む時間が無くなるし、この後仕事だから…… 』と言って来なかった。
どうやら黒瀬さんの職業は、夜のお仕事らしい。
「そう言えば、大谷さんと黒瀬さんって背格好似てますよね?」
移動する途中で、薫ちゃんが少し前を歩く大谷さんを見てそんな事を言い出した。確かにさっきは気が付かなかったけど、ぱっと見は似ているかも……
どちらも似たようなサングラスにマスク、ロングスカートだし。違いは黒瀬さんがいつも被っているキャスケットくらいかな?
「そう言えばそうかも……
まぁ似た様な格好の人なんかたくさん居るわよ。」
そうこうしている間に、目的地の空き地に着いた。
「この辺でいいか?じゃあ開けるからな!」
坂野君が家から持って来たハサミで、ビニール袋に巻いてあったテープを切ってバッグを取り出す。
ビニール袋に入れてあったから、バッグは濡れて無かった。慎重にバッグを取り出し、そっと開けてみる。
皆んなで中身を確認すると、中にはテンプレ通り大量の現金が!!
「「「「マジ!?」」」」
「冗談で言ったのに、ホントに現金入ってた!」
「どうしよう?山分け???」
「阿保か!!そんな事したら、俺達まで捕まるかもしれないだろ!!
落とし主が現れなかったら、その時山分けにすればいいだろ!!」
「「なるほど!!」」
「ちょっと、皆んな何言ってるのよ!とりあえず警察呼ばないと!!」
その後直ぐ、通報で駆けつけた警察に、バッグとそれを包んでいたびしょ濡れのビニール袋は回収された。
「君達ねぇ…こういう時は直ぐ警察に、知らせてくれないと…… 」
「「「「は~い!次から気をつけま~す!」」」」
「次からって、君達ねぇ…… 」
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(その頃ストロベリームーンでは…… )
「オイ、黒瀬!!わりゃ何やっとるんじゃ!?」
「えっ?何って???」
「「『何』じゃないわ!この馬鹿タレが!」」
「なんじゃこの【ずぶ濡れの幽霊の目撃情報】の数は!?ほぼ毎回見られとるじゃないか!!」
「あれほど『見つからん様に、気いつけぇ!』言うたのに!!」
「えーだって、あそこ隠れる所無いし……
この時間に出て支度しないと、仕事に間に合わないんだよー。」
「お前の所為で、あの池は暫く住めなくなるぞ!」
「えぇっ!?何で~???せっかく住み慣れて来たのに~!」
「お前があがぁな物拾うて来たから、この後あの池は警察が見張りを立てたり、池さらいするに決まっとるじゃろ!!」
「警察が来る前にサッサと引越しせぇ!!」
「そんなぁ~。」
「早う行かんと、荷物を取りに行く時間が無うなるぞ!」
「うわぁー大変!急がなきゃ!!」
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そう言って黒瀬さんは、慌てて【猿池】に帰って行ったそうです。
黒瀬さんの正体……
それは…一部地域を騒がす【ずぶ濡れの幽霊】猿猴だった。
近くの運送会社で、夜勤専門の事務員をしているんだそうです。
何それ?私聞いて無いわよ!!
そして、あのずぶ濡れのビニール袋を拾ったのは、いつの間にか坂野君という事になっていた。
どうやら豆狸が、何かやったらしい。
数日後…あのお金の出所を警察より早く、薫ちゃんから知らされた。
「バッグの中身は【2カ月前に空き巣に盗まれた、現金と宝石】だったそうよ…… 」
「それって、もしかして?」
「まぁ、時期的に考えても犯人はたぶん三盛の親じゃね?」
「たぶん、今日のお昼のニュースの時間には警察から発表があると思うわ。」
流石は薫ちゃん!情報早いわね!それにしても、ここで三盛さんの両親に繋がるとは思わなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♪♪♪砂月ちゃんのミニ広島弁コーナー♪♪♪
※1
《あがぁな》→『あんな』
バリエーションとして
《そがぁな》→『そんな』
《こがぁな》→『こんな』
というのもあります。
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第2章参照。
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