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勇者タツヒコの冒険 ❸ (ギルドマスターside)
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俺はユイナーダ王国の冒険者ギルド王都本部のギルドマスター、マックス。
先日…セイマ殿下の護衛パーティーが、解散した。
しかも恋愛の縺れという、かなりショボい理由で……
殿下の意向で、早急に新しい護衛が必要になり、我々はちょうど回復役を探していた最近活躍も目覚ましい、稀人のA級冒険者パーティーを臨時で護衛につける事にしたのだ。
しかし…コレがとんでもない間違いだった。
あろう事か、アイツら護衛対象である殿下をクビにし、サイド領に置き去りにして帰って来やがった!!
帰りはどうやらサイド家の次男の作った、危ない乗用魔道具の実験に使われたらしく、流石にボロボロだったそうだ。
冒険者ギルドに試乗の依頼が来ていたが、断って正解だったみたいだな。
一応A級冒険者のアイツらが、アレだけボロボロだったという事は依頼書に書いてあった低級冒険者だったら、危うく死ぬところだった。
「君達が何故…呼ばれたかわかっているかね?」
会議室に入って来た元A級冒険者パーティーはやけに堂々としていて、まるで何もわかっていない様だ。
その理由はリーダーのタツヒコという男のとんでもないセリフで判明した。
「オレ達が【勇者】に認定されたからだろ?」
は?何を言っているんだコイツ??
俺達は呆れ…つい可哀想な奴を見る目をしてしまった。
コレはアレだ……
稀人や自称転生者が、よく罹る【チュウニビョウ】とか【ラノベ症候群】とか言う病だな。
前の世界の常識が、こっちでも通用すると思っている、とても危険な心の病。
大概の稀人や自称転生者はギルドの【稀人支援制度】や成長していく中で、克服していくのだが、稀に教育しても『表向きはそういう事にして、真実を隠しているんですね!』と余計に拗らせる者もいる。
おそらくアイツらはその類いだろう。
「君達いったい何を勘違いしているんだ!?」
「お前らは只の稀人のA級冒険者…それもさっきまでだがな。」
技術指導部の指導部長や認定係はかなり怒っている。
「王家と神殿から苦情が来て、お前達の国外追放を要求されている!」
とサブマスが告げると……
『えっ!?何で?』
といった表情をしてタツヒコの仲間の魔法使いが俺達の方を見た。
「あ…あの…冒険者ギルドって、権力者の脅しには屈しないんじゃ!?」
通常ならな…だが、王家から睨まれ神殿から苦情が来る様な奴らは別だろうが!
まったく理解していない奴らを見て俺は頭を抱えた……
「普通ならな……だが、今回はそういう訳にはいかないんだよ!
君達が護衛任務を怠った相手が、相手でね…… 」
キョトンとした表情で顔で顔を見合わせる、奴らを見てまさかという考えが浮かぶ……
「まさか…お前達、知らずに仕事を受けたのか?」
えっ?本当に??
「何という事だ!?」
いや…説明した筈だ。
ちゃんと同意書に署名もしたじゃないか!!
「やはり…急ぎだと言われたからといって、稀人に殿下の護衛を任せたのは間違いだったのだ。」
おい!サブマス!!
裏切ったな!!お前、俺と一緒に説明したじゃないか!!
「嘘だろ?あの、のほほんとしたアイツが殿下?」
斥候兼弓師の男が驚いた声を上げているが、この国で何年も生活していて、何故今までセイマ殿下の事を知らないんだ!?
「ユイナーダ王国第三王子、セイマ・F・ユイナーダ殿下。
聖魔法の使いの【聖人】です。
君達はその殿下の護衛を、途中で放棄したんだよ!」
割と冷静に見える受付課のハーフエルフの課長が、セイマ殿下の説明を奴らにしてくれた。
だが内心はかなり怒っている筈だ、何故なら彼女はセイマ殿下の熱狂的ファンだから。
依頼が来た時、冒険者ギルドを辞めて自分が護衛すると言って騒いでいたのを無理矢理引き留めたが、逆に行かせてやれば良かったと、今では後悔している。
「どのみち君達は王家と神殿の両方から睨まれてしまった。
このままこの国で、仕事をするのは無理だ。
即刻退去した方が身の為だろう。」
ギルド併設の食堂(酒を置くと酔って暴れられると困るので食堂)のマスターのいう通り、王家と神殿から睨まれてこの国で仕事は出来ない!
もちろん冒険者ギルドもクビだ!
「セイマ殿下はユイナーダ王国の、国民的アイドルでもあるのです。
その殿下を君達が蔑ろにした事が、国民にバレたら…… 」
だから、何故いちいち驚いているんだよ!
殿下の写真、町中に貼ってあるじゃないか!!
それにまだ、自分達が【勇者】だと思っているようだがコレから奴らは苦労する事になるだろう。
何しろ冒険者身分証剥奪だから、身分を証明する物も無く、更に国外追放処分だ。
他国に行ったところで、新たに冒険者ギルド証を発行してもらえる可能性は低い。
こうしてオレとサブマス…一部の幹部は今回の件の責任を取って冒険者ギルドを辞める事になった。
因みに受付課のハーフエルフの彼女はこの後、ギルドを辞め本当にセイマ殿下の護衛に加わる事になったが、それはまた別の話し……
先日…セイマ殿下の護衛パーティーが、解散した。
しかも恋愛の縺れという、かなりショボい理由で……
殿下の意向で、早急に新しい護衛が必要になり、我々はちょうど回復役を探していた最近活躍も目覚ましい、稀人のA級冒険者パーティーを臨時で護衛につける事にしたのだ。
しかし…コレがとんでもない間違いだった。
あろう事か、アイツら護衛対象である殿下をクビにし、サイド領に置き去りにして帰って来やがった!!
帰りはどうやらサイド家の次男の作った、危ない乗用魔道具の実験に使われたらしく、流石にボロボロだったそうだ。
冒険者ギルドに試乗の依頼が来ていたが、断って正解だったみたいだな。
一応A級冒険者のアイツらが、アレだけボロボロだったという事は依頼書に書いてあった低級冒険者だったら、危うく死ぬところだった。
「君達が何故…呼ばれたかわかっているかね?」
会議室に入って来た元A級冒険者パーティーはやけに堂々としていて、まるで何もわかっていない様だ。
その理由はリーダーのタツヒコという男のとんでもないセリフで判明した。
「オレ達が【勇者】に認定されたからだろ?」
は?何を言っているんだコイツ??
俺達は呆れ…つい可哀想な奴を見る目をしてしまった。
コレはアレだ……
稀人や自称転生者が、よく罹る【チュウニビョウ】とか【ラノベ症候群】とか言う病だな。
前の世界の常識が、こっちでも通用すると思っている、とても危険な心の病。
大概の稀人や自称転生者はギルドの【稀人支援制度】や成長していく中で、克服していくのだが、稀に教育しても『表向きはそういう事にして、真実を隠しているんですね!』と余計に拗らせる者もいる。
おそらくアイツらはその類いだろう。
「君達いったい何を勘違いしているんだ!?」
「お前らは只の稀人のA級冒険者…それもさっきまでだがな。」
技術指導部の指導部長や認定係はかなり怒っている。
「王家と神殿から苦情が来て、お前達の国外追放を要求されている!」
とサブマスが告げると……
『えっ!?何で?』
といった表情をしてタツヒコの仲間の魔法使いが俺達の方を見た。
「あ…あの…冒険者ギルドって、権力者の脅しには屈しないんじゃ!?」
通常ならな…だが、王家から睨まれ神殿から苦情が来る様な奴らは別だろうが!
まったく理解していない奴らを見て俺は頭を抱えた……
「普通ならな……だが、今回はそういう訳にはいかないんだよ!
君達が護衛任務を怠った相手が、相手でね…… 」
キョトンとした表情で顔で顔を見合わせる、奴らを見てまさかという考えが浮かぶ……
「まさか…お前達、知らずに仕事を受けたのか?」
えっ?本当に??
「何という事だ!?」
いや…説明した筈だ。
ちゃんと同意書に署名もしたじゃないか!!
「やはり…急ぎだと言われたからといって、稀人に殿下の護衛を任せたのは間違いだったのだ。」
おい!サブマス!!
裏切ったな!!お前、俺と一緒に説明したじゃないか!!
「嘘だろ?あの、のほほんとしたアイツが殿下?」
斥候兼弓師の男が驚いた声を上げているが、この国で何年も生活していて、何故今までセイマ殿下の事を知らないんだ!?
「ユイナーダ王国第三王子、セイマ・F・ユイナーダ殿下。
聖魔法の使いの【聖人】です。
君達はその殿下の護衛を、途中で放棄したんだよ!」
割と冷静に見える受付課のハーフエルフの課長が、セイマ殿下の説明を奴らにしてくれた。
だが内心はかなり怒っている筈だ、何故なら彼女はセイマ殿下の熱狂的ファンだから。
依頼が来た時、冒険者ギルドを辞めて自分が護衛すると言って騒いでいたのを無理矢理引き留めたが、逆に行かせてやれば良かったと、今では後悔している。
「どのみち君達は王家と神殿の両方から睨まれてしまった。
このままこの国で、仕事をするのは無理だ。
即刻退去した方が身の為だろう。」
ギルド併設の食堂(酒を置くと酔って暴れられると困るので食堂)のマスターのいう通り、王家と神殿から睨まれてこの国で仕事は出来ない!
もちろん冒険者ギルドもクビだ!
「セイマ殿下はユイナーダ王国の、国民的アイドルでもあるのです。
その殿下を君達が蔑ろにした事が、国民にバレたら…… 」
だから、何故いちいち驚いているんだよ!
殿下の写真、町中に貼ってあるじゃないか!!
それにまだ、自分達が【勇者】だと思っているようだがコレから奴らは苦労する事になるだろう。
何しろ冒険者身分証剥奪だから、身分を証明する物も無く、更に国外追放処分だ。
他国に行ったところで、新たに冒険者ギルド証を発行してもらえる可能性は低い。
こうしてオレとサブマス…一部の幹部は今回の件の責任を取って冒険者ギルドを辞める事になった。
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