龍の錫杖

朝焼け

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第一章

見知らぬ病室

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「あいつはもう運んでやったのか?」
大柄金髪で鷲鼻の白人男性はズタズタになった広場を眺めながら傍らにいる修道女の様な格好をした女性に話しかける。
「ええ、桜ちゃんと一緒に衛生監理局管轄の病院に運んであげたわ」
女性はバインダーに挟まれた書類を持ちそれに何かを書き込みながら左側の手にもったタブレット端末で何かを計算している。
「すまねぇな真理亜、無理いってよ」
「構わないわ、あの青鬼よ? 労働衛生監理局としても話を聞いておきたいしね」
「まぁ、そりゃそうだろうな」
真理亜と呼ばれた女性は書類に書き込む作業を続けつつ右側の腕で白人男性に一枚の紙を渡す。
「はいジェラルド、今回の討伐褒賞金の小切手よ、貴方と桜ちゃんだけで倒したことにしておいたわ、例の彼に渡してあげて」
「つくづくすまねぇな、色々ごまかしてもらって」
真理亜は溜め息をつきながら答える。
「最強のハンターに頼まれたらノーとは言えないわ、でもこっちも忙しいの、少しは感謝してちょうだいね?」
「解ってる、感謝しているさ」
「ならいいわ」
ジェラルドは気まぐれに破壊された広場の中央に目を移す。
そこには首を断ち切られた風の害獣の死体が転がり、周辺では何人かの作業員が死体のサイズ計測や破壊状況の記録取り等を行っている。
「やっぱりそっちも忙しいのか」
真理亜は切れ長の眼をジェラルドの方に向け言葉を返す。
「ええ、とても忙しいわ、害獣の発生件数がいくらなんでも多すぎるの、調査がとても追い付かないわ」
「その事に関して一つ、今年に入ってから気になっているんだが……」
「何?」
「害獣の個体数だけじゃあなくて、明らかに強くなってないか?奴等」
「そうね、去年より明らかにレッドリストの数が増えてるわ、倍以上、今回の奴も判定はレッドリスト相当だしね」
「一体何が起こってるんだろうな……」
「それも調査したいんだけど、何せこの忙しさで全然手が足りてないのよね」
「そんなにあるのにか?」
「…………ぶん殴るわよ」
真理亜はその四本ある腕の一つを振り上げ、ジェラルドを殴る振りをした。

 目を覚ますと見慣れない灰色の天井、ちらつく蛍光灯、カーテンに囲まれたベッドの上、包帯でぐるぐる巻きにされた自身の体、自分はどこにいるのだろう?
ハナサキ クザンは混濁した記憶から現状を導き出すためぼやけた頭を必死で回転させていた。
「一体ここは……」
家族の死、未来の世界、異形の化け物、命懸けの死闘、何処までが夢だったのか、はたまた全部が夢だったのか、考えあぐねているその最中に右隣から声が聞こえてきた。
「おはよう、クザン」
クザンはその声の主を確認するためにカーテンを開ける。
「桜……」
そこにはあちこち痛々しく包帯で包まれベッドに横たわる桜の姿があった。
「どう、体調は?」
「いや、君の方こそ大丈夫なのか!?」
クザンはたまらず彼女の心配をする。
だが彼女は笑いながら返す。
「私は大丈夫よ、体頑丈だし! どうせこの傷もすぐ治るわ」
「そうなのか!? ならいいんだが……」
多少なりとも安堵したクザンに桜は再度同じ質問をする。
「で、どうなの体調は?」
「あぁ、俺は……なんともないが?」
「どこも痛くない?」
「あぁ、なんとも……」
「凄い回復力ね、あの突風で受けた傷が物の二日で治るなんて」
その彼女の言葉にクザンはハッとする。
「傷……あれは夢じゃなかったみたいだな……」
「何が?」
「あの風の化け物と戦ったことだ」
「何処まで覚えてるの?」
クザンは必死に思い出す、しかし記憶の最後がどうしても夢にしか思えない。
敵の攻撃を真正面から受けきり頭を切り落としたと言うあり得ない記憶。
「何処までが現実か判別がつかん……あの化け物は……誰が倒したんだ」
桜はクザンを真剣な眼差しで見据える。
「貴方よ、あの後貴方は気絶して駆け付けたジェラルドの口効きで特別に入院させてもらったの、一昨日の話、貴方のその記憶、多分全部現実よ」
「そうか……」
クザンにまた一つ重苦しい現実がのしかかる、自身の体はもう元の体ではないどころか恐ろしい化け物に改造されていると言う現実。
未来に突然飛ばされ妻子の死を知らされ更に自分は化け物になっている。
その現実にクザンは耐えられず憤る。
「一体なんだって言うんだ……俺が……何をしたって言うんだ……!」
桜は呟く。
「青鬼……」
「なんだ? 突然」
「貴方が変身したあの姿、青鬼って呼ばれてるのよ」
「どう言うことだ?」
「二五年前から三年前までの二十二年間、この街を害獣から護り続けた正体不明の英雄、その姿と全く一緒だったわ、一昨日の貴方」
「俺が? 馬鹿を言わないでくれ、殴り合いの喧嘩すら中学生の時以来していないんだ、そんなこと出来るわけ……」
「出来てたじゃない、しかも青鬼に変身する前から」
「……」
クザンは風の害獣と戦ったときのことを思い返す、確かにあの時は体が勝手に動いていた、戦い方を体が覚えていた様な、そんな感じがしていた。
「貴方はきっとこの街でずっと戦ってきた青鬼よ、記憶さえ取り戻せばきっとこの街に順応できる筈、あまり気を落とさないで」
クザンは自身の思い出せない戦いの過去を恐れると同時にこの街に自身の居場所があったかもしれないと言う事実に少しだけ安堵した。
「そうかもしれないな……すまんな……取り乱してしまって」
「いいのよ、仕方ないわ、色々な事が有りすぎたから……」
二人の間に沈黙が広がる、その沈黙を打ち破るように勢いよく病室のドアが開く。
「おぉい! 桜ぁ! いるか!」
やたら大きい声と共に柄の悪い逞しい男が病室に入り込んできた。
クザンは強盗か何かかと思い思わず身構える。
「猛!」
桜の呼び掛けに気づいた猛と呼ばれた男は二人にずかずかと近づいてきた。
「おう、無事だったか」
「う……うん……」
「よかったな、死ななくてよ、安心したぜ」
「うん……」
知り合いなのだろうが何故か桜はとても気まずそうだ。
「お前の戦い、広場についてた監視カメラで見させてもらった」
その瞬間ギクリとした様子で桜は俯いてしまった。
「何で見捨てなかった、いつもいってるだろ」
「でも……」
「でもじゃねぇ、あの選択が間違いだってのは猿でも解る」
「でも……!」
猛は桜に顔を近づけ語りかける。
「この隣の兄さんが青鬼じゃあなかったら、両方とも死んでた、それどころかこの兄さんすら巻き込んでた、そしてお前がこれから先助けるであろう何人もの人達も成す術なく死ぬんだ、結果的にあの選択でお前は何人もの人間を殺しかけたんだ」
あまりに一方的に威圧的に極論を語り桜の勇気を否定するような発言をする猛にクザンは少し腹を立てた。
「そんな言い方は無いんじゃないか! 彼女の決断は人として間違ってなんかいないだろう!」
鋭い眼光でクザンを見つめながら猛は言う。
「青鬼の兄さん、まだ生きてたことにも正体にもビックリだ、だがまず、桜を助けてくれたこと、本当に感謝してる、ありがとう」
クザンに頭を下げた後、猛は続ける。
「だがな、これは俺たちの問題だ、俺らはこの都市を守る人間として大量のコストをかけて造られてる、たった一人の娘っ子だけの為に命を落とすようなそんな行動は許されてねぇんだよ」
「人の生き死にを前にしてコストだなんだと考えて行動出来るような人間にはなりたくないな」
憮然と話すクザンを小馬鹿にするように猛は返す。
「美しいねぇ、だが現実はちげぇよ、人の命だって足し算引き算でどうするか考えるべきさ、綺麗事で死ぬなんてアホのやることだ」
「正しいが冷酷だな、世の人間が全員君みたいな考えになったら世の中終わりだと思うがな」
恩人の行動を馬鹿にされたように感じたクザンは少しムキになっている。
「はっ! 言ってくれるな、確かにあんた程強くて……」
猛はクザンに歩みよりクザンに巻かれている包帯を引きちぎる。
クザンの体は既に傷一つなく完全に回復していた。
「こんなに傷が直るのが速ければそんな口も軽々しく叩けるってもんだろう、だがよ、そんな口を叩く前に桜を見てくれよ、同年代が人生を謳歌してるなかでこんなに傷だらけのボロボロになってまで戦ってよ、そこまでして人の為に命を懸けるなんて……」
「……!」
ここで猛は口が滑ったとでもいうように黙ってそっぽを向いてしまった。
クザンは自身が軽々しく二人の会話に入ったことを激しく後悔した。
この猛が言うことは全て建前、要は桜に頼むから無茶をしないでくれと遠回しに言っていたのだ。
コストや足し算引き算の例えも人の為に自分の命を軽く見がちな桜を守るために理屈を並べ立てていただけなのだ。
二人の間にある絆に無粋に割って入ってしまったと感じるクザンは返す言葉もなく押し黙ってしまった。
「…………こんな喧嘩をしに来た訳じゃなかったんだがな、すまねぇな……兄さん」
「ふ、二人ともごめんね、私のせいで……」
気まずすぎる雰囲気に何故か桜が謝ってしまう、場の空気は最悪だ。
その空気に事務的な礼儀正しい言葉が割り込んでくる。
「梶さん、此方の準備完了致しましたので面会が終わり次第宜しくお願い致します」
声の主は作業着を来た男だった、逞しい猛と比べるとなんとも頼り無さそうな男だ。
「おう、直ぐ行く、待っててくれ」
「承知しました」
男は丁寧に頭を下げると病室を後にした。
「何、あの男の人?」
桜の疑問に猛が答える。
「建設会社の職員だ、この病院が昔使ってた廃病棟を取り壊すことになったんだがそこで害獣の発見報告があってな、念の為に俺が下見の護衛をすることになったんだ」
「気を付けてね……」
心配そうな桜に猛は笑いながら言う。
「誰に向かってもの言ってるんだよ、大丈夫だ」
「うん……」
「騒がせて悪かったな、桜、兄さん、またな」
踵を返して猛は病室から出ていった、後に残るは気まずそうな二人のみ。
「すまなかったな、余計な口出しをしたようだ……」
心底申し訳なさそうにクザンは桜に謝罪した。
「とんでもないわ! やっぱり優しいのね貴方」
桜はフォローをするがクザンは自身に納得していない様子だ。
「君と猛……だったか、付き合いは長いのか」
「ええ、私と猛は害獣に襲われた孤児院のただ二人の生き残りでね、その時からずっと二人一緒に育ってきて、兄妹みたいなもんかな」
「だからあんなに君の事を心配していたんだな」
少し苦笑いしながら桜は言う。
「ご覧になった通り少し心配の仕方が素直じゃないんだけどね…… 」
「だが何故二人揃ってこんな危ない道を選んだんだ? お互い気が気でないだろう」
「勿論私も猛もこんな危ない事、生業にするなんて思っても見なかった、でも私も猛も身体改造用の細胞に対する適正が常人に比べて何倍も高いのが管理局の調査で判ったの」
「まさか、それで無理矢理……」
クザンの言葉を桜は遮る。
「勘違いしないで、断ることは出来たのよ、でも、私も猛も害獣に対抗する力があると解った以上、私達みたいな目に会う人達を少しでも減らせればって、そう考えた、猛は私の改造には猛反対だったんだけど、義理とは言え兄妹ってのは似るもんだからね」
「二人の間には本当の肉親以上の絆が有るんだな…………浅慮な真似をしてしまってすまなかったな」
額を押さえてクザンは項垂れる、心底落ち込んでいるようだ。
「い、いや猛はそんな事を気にするような繊細な神経してないから大丈夫よ! 言い方もこれ以上無いくらい紛らわしかったし!」
慌てて桜はフォローを重ねるがクザンは自身の軽々しさに完全に自己嫌悪に陥っている。
「男って奴は何でこうどいつもこいつも不器用なのかね……」
桜はちらつく蛍光灯を眺めながら溜め息をついた。
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