Winter perdu(ウインターペルデュ)

しまかぜ

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最終章 冬の迷い子、来る春

Final 2 冬と真琴

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12/31
今年最後の日
冬は横たわっている。
「冬っ!」
「ごめんね、真琴。私…」
最後の声を振り絞るように彼女は言う。
「嘘をついてたの。」
「嘘?」
「覚えてなーい?私の事」
…………。
ゆきはら ふゆ ふゆ?
「ふゆ、か…?」
「覚えててくれたんだ。」
ああ、そうか。
あの時感じた。初めて会った時の懐かしさは、覚えていたからだ。
必死に忘れようとしてきた。
目を背けてきた。
考えただけで苦しくなるから。
でも、心のどこかでは覚えていた。
思い出には、ちゃんと残っていた。
「ふゆか…。」
「うん、真琴、ひさしぶり」
俺が好きだったあの子だ、
原田 冬華 本人だと 確信した。
「ごめんっ、俺っ」
泣いた。できる限り謝った。
「違うの、私は本当に、」
そう言って笑う
「あなたのことが心から大好きだった。だからね、嬉しかったの。この冬に、あなたと出会えて。
すごく悲しそうな顔をしていたよ。
だからね、心配したんだよ。私のせいかなって。
私が負けちゃったから、あなたを傷つけたのかなって。」
「そんなこと…ないよ。 俺があの時、ちゃんと伝えていれば、変わったかもしれないんだ。」
そうだ。
俺があんなくだらない友情など信じていたから。
「自分を責めないであげて?
今、この冬休みは、楽しかったでしょ?
仲間になってさ、一緒に色んなことをして、友達もできた。あなたはとても楽しそうだった。
私はそれが嬉しかったんだよ?」
「ふゆか……。」
俺はこんなに弱かっただろうか。
一人でいたから、独りだったから、
大丈夫だと思っていた。
もう何にも、期待もせず、笑うことも無く
感情がない人間として、生きていくと思っていた。

「冬!!」
遅れてみんなが来た。
「おまえっ」
蒼太が言う。
みんな、悲しそうにこちらを見る。

幾度目の冬だろう。
またこの時が来たか。と言うように。泣いている。
みんなが泣いている。
「ねぇ、真琴、お願いがあるの。この冬の、最初で最後のわがまま。」
「なんでも言ってみろよ。」
「一緒に、居たいよ。」
……。
「うん、いつまでも、たとえ、冬が過ぎても、一緒にいよう。」
精一杯の笑顔でそういった。
みんなは見守ってくれていたが、しばらくすると、
みんな解散した。

俺と冬華を除いて。

島のみんなが許してくれた。最後のひと時。

俺と冬華は、夜が明けるまで、話した。
噛み締めるように。
一言たりとも忘れないように。
この瞬間を、思い出に刻むために。
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