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1号線 ときどき 6号線
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僕には、うすうす気づいていた。英樹さんに、新しい彼が出来ていることを。ある日の夜、疲れた顔をした英樹さんが、ため息をつきながら帰ってきた。
「英樹さん、疲れてるの?」
僕は、心配な気持ちを表面に見せて、英樹さんに尋ねた。
「あ、うん。ごめん。篤史には、最近寂しい思いさせてへんかな?」
英樹さんの少し慌てたような仕草が、僕の感覚を確かにさせた。
「英樹さん、僕に隠し事してるでしょ?知ってるんだ、僕と他の人と付き合ってるの。でも、僕よりうんと趣味の悪い人と付き合ってるよね?」
僕は、英樹さんを怒らせるような言葉をわざと並べた。その答えは、予想通りに僕の頬に返ってきた。僕は、何も言わずに、英樹さんに叩かれたのを後に、部屋を出た。
それから僕は、最終の下り電車で大阪のバーへ向かった。すると、最近知り合って友達になった、輝彦さんが、先客でお酒を飲んでいた。
「お、篤史君やないか。」
輝彦さんは、僕を隣に誘った。僕は、何のためらいもなく、輝彦さんの隣に座った。
「どないした?元気ないみたいやけど。」
「ちょっと、部屋を出てきたんです。」
輝彦さんの質問に、僕は、坦々と答えた。僕の彼が、浮気をしていたこと、悔しくなった僕は、彼に意地悪して、叩かれてきたこと、別れるか、決めかねていること。何故か、輝彦さんの前では、素直に全てを打ち明けられた。
「そっか。困ったもんやな・・・。しばらくの間だけやけど、俺の部屋に来るか?」
輝彦さんは、しばらく僕の部屋がないことを心配して、自分の部屋に誘ってくれた。
翌日から、しばらくの間、僕は、いつも乗っている河原町行きの特急とは、違う電車で帰ることになった。最初の日は、場所が全く分からないので、輝彦さんに教えられて、宝塚線のホームから発車する、特急「日生エクスプレス」という、日生中央行きの電車に乗った。英樹は、神戸線沿線に住んでいた人だったので、宝塚線は、ほとんど初めてに等しかった。
それから、しばらくの間、1号線ホームの電車から、6号線ホームの電車に乗ることになった。定期券も、日生中央までの定期に変えた。
その年のクリスマスイブの夜。
「篤史君、今日は、大阪新阪急ホテルのレストランで、フランス料理や。」
輝彦さんは、突然僕を誘った。そして、約束の時間に行くと、見覚えのある顔。それは、しばらく会っていなかった、英樹の顔だった。頬には、軽い痣があった。
「て、輝彦さん。どうして?」
僕が、驚いて尋ねると、
「英樹は、俺と同じ会社で働いとるんや。」
と、輝彦さんが答えた。
「じゃあ、その痣は?」
再び尋ねると、
「こいつに、殴られたんや。篤史の心の痛みは、こんなもんやないって。」
と、英樹が答えた。そして、
「ごめんな、篤史。俺が悪いのに、篤史を殴ってもうて。やっぱり、俺には、篤史しかいないんや。今度同じことしてもうたら、俺を殴ってええ。そやから、帰ってきてくれへんか?」
と、続けて、僕のことを抱きしめてくれた。僕も、英樹のことを抱き返した。そして、久しぶりに触る英樹の丸刈りの頭を撫でながら、涙を流した。
食事をした後。
「ほな、今日は、高槻市の家に帰ると良えで。」
輝彦さんが、僕と英樹に薦めた。
「輝彦さんは、もう僕とは会えないんですか?」
僕は、お世話になった輝彦さんに、申し訳なさそうに話した。すると、
「まぁ、恋人にはなれへんでも、親友として、これからもよろしく。今度は、篤史君と英樹と、二人で来てくれたら、良えな。」
と、輝彦は答えた。
「輝彦は、寂しくならへんのか?」
英樹が尋ねると、
「友達いっぱいおるし、新しく親友が二人増えたんやで。寂しくあらへんわ。」
と、キザっぽく答えた。僕は、それがとてもかっこ良く見えた。
あれから、僕は、再び1号線の特急で帰ることになった。でも、時々遊びに、英樹と二人で、夕方の6号線の特急に乗って、輝彦さんの家へ遊びに行くようにしている。
「英樹さん、疲れてるの?」
僕は、心配な気持ちを表面に見せて、英樹さんに尋ねた。
「あ、うん。ごめん。篤史には、最近寂しい思いさせてへんかな?」
英樹さんの少し慌てたような仕草が、僕の感覚を確かにさせた。
「英樹さん、僕に隠し事してるでしょ?知ってるんだ、僕と他の人と付き合ってるの。でも、僕よりうんと趣味の悪い人と付き合ってるよね?」
僕は、英樹さんを怒らせるような言葉をわざと並べた。その答えは、予想通りに僕の頬に返ってきた。僕は、何も言わずに、英樹さんに叩かれたのを後に、部屋を出た。
それから僕は、最終の下り電車で大阪のバーへ向かった。すると、最近知り合って友達になった、輝彦さんが、先客でお酒を飲んでいた。
「お、篤史君やないか。」
輝彦さんは、僕を隣に誘った。僕は、何のためらいもなく、輝彦さんの隣に座った。
「どないした?元気ないみたいやけど。」
「ちょっと、部屋を出てきたんです。」
輝彦さんの質問に、僕は、坦々と答えた。僕の彼が、浮気をしていたこと、悔しくなった僕は、彼に意地悪して、叩かれてきたこと、別れるか、決めかねていること。何故か、輝彦さんの前では、素直に全てを打ち明けられた。
「そっか。困ったもんやな・・・。しばらくの間だけやけど、俺の部屋に来るか?」
輝彦さんは、しばらく僕の部屋がないことを心配して、自分の部屋に誘ってくれた。
翌日から、しばらくの間、僕は、いつも乗っている河原町行きの特急とは、違う電車で帰ることになった。最初の日は、場所が全く分からないので、輝彦さんに教えられて、宝塚線のホームから発車する、特急「日生エクスプレス」という、日生中央行きの電車に乗った。英樹は、神戸線沿線に住んでいた人だったので、宝塚線は、ほとんど初めてに等しかった。
それから、しばらくの間、1号線ホームの電車から、6号線ホームの電車に乗ることになった。定期券も、日生中央までの定期に変えた。
その年のクリスマスイブの夜。
「篤史君、今日は、大阪新阪急ホテルのレストランで、フランス料理や。」
輝彦さんは、突然僕を誘った。そして、約束の時間に行くと、見覚えのある顔。それは、しばらく会っていなかった、英樹の顔だった。頬には、軽い痣があった。
「て、輝彦さん。どうして?」
僕が、驚いて尋ねると、
「英樹は、俺と同じ会社で働いとるんや。」
と、輝彦さんが答えた。
「じゃあ、その痣は?」
再び尋ねると、
「こいつに、殴られたんや。篤史の心の痛みは、こんなもんやないって。」
と、英樹が答えた。そして、
「ごめんな、篤史。俺が悪いのに、篤史を殴ってもうて。やっぱり、俺には、篤史しかいないんや。今度同じことしてもうたら、俺を殴ってええ。そやから、帰ってきてくれへんか?」
と、続けて、僕のことを抱きしめてくれた。僕も、英樹のことを抱き返した。そして、久しぶりに触る英樹の丸刈りの頭を撫でながら、涙を流した。
食事をした後。
「ほな、今日は、高槻市の家に帰ると良えで。」
輝彦さんが、僕と英樹に薦めた。
「輝彦さんは、もう僕とは会えないんですか?」
僕は、お世話になった輝彦さんに、申し訳なさそうに話した。すると、
「まぁ、恋人にはなれへんでも、親友として、これからもよろしく。今度は、篤史君と英樹と、二人で来てくれたら、良えな。」
と、輝彦は答えた。
「輝彦は、寂しくならへんのか?」
英樹が尋ねると、
「友達いっぱいおるし、新しく親友が二人増えたんやで。寂しくあらへんわ。」
と、キザっぽく答えた。僕は、それがとてもかっこ良く見えた。
あれから、僕は、再び1号線の特急で帰ることになった。でも、時々遊びに、英樹と二人で、夕方の6号線の特急に乗って、輝彦さんの家へ遊びに行くようにしている。
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