僕とギャングスターの大冒険

スパイと北村

北村の決着

黄島は、北村の気持ちを考えた。そして、
「よし、高野山からレンタカーを借りて、一緒に龍神温泉へ行こう。」
と、黄島が提案した。僕も、
「その方が良いと、思いました。」
と、黄島の意見を後押しした。それは、北村の想い出を整理するために、必要だと思ったのだ。

一方、野々宮と青山も、宇宙犯罪組織の出現を黄島から聞き、黄島の旅先へ後を追っていた。

高野山からの運転は、北村に任せた。
「北村、大丈夫か？」
言い出しっぺの黄島は、北村を気にかけた。
「大丈夫だ。でも、どうして、俺のことをそこまで気にかけてくれるんだ？」
北村は、黄島たちの優しさについて尋ねた。
「達だろ？それに、追われてる奴らからも、守りてえんだ。」
黄島が、素直な気持ちを伝えると、
「そっか。黄島の友情想いなとこ、昔から変わんねえんだな？見直したぜ！」
と、北村は、黄島の想いを見直した。
運転中に、北村は、菜々子との想い出を振り返った。話によると、同じく高野山から龍神温泉への移動中に、北村が事故を起こした。そして、慌てた菜々子は、突然助手席を降り、そのまま対向車に跳ねられたということだった。

龍神温泉へ向かう間に、宇宙犯罪組織も追ってきた。
「待て！貴様らの抹殺抜きでは、この星の征服は果たせぬようだな？」
組織のリーダーが、そう言って黄島たちに襲いかかってきた。黄島は、イエローギャングに変身して、応戦した。
「貴様と会わせたのが、失敗だったのだ！貴様の愛というものが、スパイの落とし穴だったのだ！」
リーダーは、そう言って北村を襲おうとした。
「何！？どういうことだ！？」
しかし、イエローが盾となり、北村を守りながら、リーダーに罵った。すると、
「スパイの最期のメッセージに、初めて感じた愛を胸に、この世を去ります、と綴られていたのだ！」
と、北村は、菜々子の愛情を、初めて目の当たりにした。そして、イエローは、北村に剣を託した。
「北村、お前が仇を打つんだ！菜々子さんの愛を胸に！」
イエローの情熱を聞いた北村は、リーダーに止めを刺した。
「お、おのれ！」
そこへ、後を追っていたレッドとブルーが合流し、北村に手錠を掛けようとした時、
「待て！北村は、知らなかったんだ。無罪じゃねえか？宇宙警察にも、そう報告しようぜ。」
と、イエローが判決を下すように伝えた。
「…そうだな。青山、行くぞ。黄島、剛史との旅行、任せるぞ。」
レッドが、ブルーとイエローに指示すると、レッドとブルーは、その場を去った。

北村が運転するレンタカーは、夜には龍神温泉に到着した。北村の寂しそうな様子は、まだ拭えきれていなかった。
「とりあえず、温泉に浸かろうぜ。」
黄島は、北村と僕に促した。そして、三人で男湯に浸かると、
「俺、良かったよ、菜々子の気持ちが分かって。本当は、俺、愛されていないと思ってたから。」
と、北村は答えた。
「どうして、愛されていないと？」
僕が、疑問に感じて尋ねると、
「…何となく。愛することを知らなそうな雰囲気だったんだ。でも、俺を愛してくれてたことを知って、俺も、結婚してて良かったって、改めて思えたんだ。」
と、黄島は、その言葉を聞いて、北村の寂しい気持ちが、ようやく拭えきれたように感じた。