鉄風雷火のフレームライダー ~少女たちの機影は遥か~

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戦闘記録:ヤヨイとコルドゥラ

壱:狂獣狩り

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 その日も、空は青く澄んでいた。雲は遠く、風は穏やか。草木は揺れ、鳥がさえずる。まさに平穏そのものと言うような光景を、一機のMFモビルフレームが、生物的な動きをする並列センサーで見据えていた。
 ふと、機体が身動ぎした。
 鋭角的な装甲に覆われた二本の脚部と共に機体が起立し、前進するべく動き始める。同時に、同様の装甲特徴を持つ胴体部と腕部が、脚部の負荷を分散させるように連動する。

「今回の標的は、標準的な汎用武装のMFが一機。それに随伴するMLが三機……で、良いのよね?」
「ああ、それでいいはずだ。武装は、いつも通りの組み合わせ。レーザーライフルを使い、MLメタルレイバーを可及的速やかに排除。その後、ブレードによる一撃でMFを撃破し、離脱する」
「了解したわ」

 そのMFの内部では、二人のライダーが会話を交わしている。
 一人は、黒のショートボブに銀眼の、利発そうな外見の少女。もう一人は、アップスタイルのプラチナブロンドに碧眼の、怜悧そうな外見の少女。
 前述の少女が、前部座席で操縦を担当し、後述の少女が、後部座席で火器管制を担当しているようだった。

「そう言えば、標的の罪状は?」
「……依頼契約違反。所属企業体に対する外患誘致。あと反社会的行為多数。有り体に言えば、ただのテロリストに成り果てた、という事だ。ヤヨイ」
「なるほど。殺してあげるのが、せめてもの情けという事ね」
「そういう事だ」
「分かっているわ。ん、目標確認。突撃する! コルドゥラ、火器の照準を。トリガーのタイミングも、そちらに一任するわ」
「了解した」

 前進を続ける機体の視界に、一機の二脚型MFと、三機の二脚型MLの機影を捉えると、ヤヨイは機体の加速を始める。彼女の操作に合わせ、背部に装備されている推進装置が起動。蒼白い噴射炎を上げて機体の速度をグンと高めた。
 同時に、腕部マニピュレータに握っているライフル型砲身の銃口に、微かな放電現象が発生し始める。数秒後。その砲身は、視界内に捉えたMLへと向けられた。

「レーザーライフル、発射」

 構えられた砲身から、青いレーザー光が一条、照射された。その光線は直進した後、照準の先に居たMLのコクピットブロックを直撃、貫通した。
 二人の網膜に投影されている戦域地図に、敵機沈黙の文字が現れる。同時に、敵性のレーダー波に捕捉されたことを伝えるビープ音が鳴り始める。
 その時点で、ヤヨイは機体を右へ旋回。コルドゥラが、次の目標へ照準しやすいように、機体を動かす。

「右から回り込んでみる。標的のMLが持っている機関砲の弾幕を散らすわ」
「分かった。照準修正、よし。レーザーライフル発射」

 機動によって、弾幕を難なく回避しながら、二射目が照射される。
 機体の動きに合わせて修正された照準によって、二射目もMLに直撃。一機目同様に爆散させた。その後、三機目も問題なく撃破した二人は、最後の標的にして本命である、MFへと向かった。

「相手は、実体弾ライフルの命中率に秀でているライダーだったわね」
「ああ。だから、敢えて接近戦を挑む。お前の腕なら、さして問題にならないだろう。ブレードの起動は、お前のトリガーに委ねてあるから、好きに使え」
「了解よ。ブレード起動後、突っ込むわ。舌、噛まないでね?」
「ふ、ぬかせ。前のような失敗はしない」

 鳴り響くビープ音の中、ヤヨイは機体の操作に集中する。
 目前で動く標的のMFは、腕部のライフル型武装を起動。銃口を真っ直ぐ、二人の機体へと向けた。
 その時。
『くそっ! この戦争管理機関の猟犬ども! 俺は死なねぇぞ!』
『同族殺し……! ここで沈めてあげるわ!』
 標的のMFに乗るライダーと思われる人物から、二人に向けて通信波が送られ、コクピット内に罵声が響き渡った。

「……」
「気にするな。始めよう」
「ええ。ブレード起動。突撃!」

 浴びせられた声に、ヤヨイは一瞬、表情を歪めたが、直ぐに機体の操縦に再集中する。
 彼女の操作に合わせて、機体腕部の内蔵機構がせり上がるように展開。そこから、青い光を帯びた実体剣が出現する。
 再び鳴り始めるビープ音。それが、敵性のロックオンを受けていることを二人に伝えた。

「来るぞ」
「大丈夫。避けられるわ」

 相手のMFのライフルが火を噴く。赤く輝く弾体が射出され、高速で飛翔しながら、ヤヨイたちのコクピットブロックへと接近していく。
 しかし、ヤヨイは意に介することなく機体を突撃。紙一重で弾体を回避した。そして、彼女の網膜に投影されている映像情報に表示された、相手との距離を睨みつける。
 そこでの加速によって、相互の距離は一気に縮まり、ブレードの有効射程へと入った。標的のMFは回避しようと動き始めるも、ヤヨイが繰り出した予測機動に追従され、あろうことか、正面に飛び出してしまった。

「貰った!」

 青く輝く実体剣が振るわれる。金属を割く独特な音が響き、ヤヨイの放った一撃は、標的MFのコクピットブロックを破砕した。

「標的、全て沈黙。離脱!」

 敵性体全機の撃破を確認したヤヨイは、そのまま機体を戦闘区域の外へと離脱させるのだった。

 それから数分後。
 戦闘区域を離脱したヤヨイたちは、推進装置の推力に身を委ねつつ、帰路についていた。見れば、機体の脚は折り畳まれ、胴体は、まるで航空機のような、空力特性を考慮した形状に変形している。

「終わったわね」
「ああ、いつも通りに。これで災厄の種は取り除かれた」
「災厄の種、か」
「どうかしたか?」
「あ、ううん。何でもないわ。これは、私たち“狩人”には不要な疑問だった。聞かなかったことにして」
「……そうだな。世界の安定に必要だからこそやっている。これは、胸を張って良いことだ。私はそうする。だから、お前もそうしろ」
「……ふふっ、分かった。そうする」
「ああ、そうしておけ」

 そのような会話を交わしつつ、二人の機体は青く澄んだ空を駆けていくのだった。
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