鉄風雷火のフレームライダー ~少女たちの機影は遥か~

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戦闘記録:「殲滅者《ヘルンヴォータ》が降ってくる」

終:舞い戻る鴉羽 闇に沈む思い

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 その帰還は、まるで映画のワンシーンで役目を終えた役者のように感傷的だった。
 機体の各所には、黒の塗装でも分かるほどの、熱による擦過痕があり、膨大な熱量の何かが掠めた、或いは、何かが猛烈な勢いで表面を擦っていった事を伝えている。
 それは、その傷を見た者に、機体が戦場でどのような戦いをこなしてきたかを、容易に想像させた。
「整備班は急げ!機体外装のチェックを終えたら、武装解除の後で高圧洗浄を行う!」
「機体の状態から、ライダーが予測よりも消耗している可能性が高い。医療班を直ぐにこっちに呼んでくれ!」
「馬鹿!外装チェックの前に背部武装を外すな!危ないだろうが!」
 一般の工場に偽装された整備ドックで、多数の整備員が騒いでいる。

 機体の搭乗用ハッチが解放される音。開かれた装甲から迫り出す、隠された内側。
 二人の少女が、医療班の人間に肩を借りながら降り立つ。その顔には、いつもは見せない疲労の色がはっきりと見え、機体表面の傷と合わせ、今回の戦闘がいかに綱渡りであったかを物語っていた。
 そのまま、少女二人は整備ドックに併設してある休息所へと歩き、姿を消した。

 白い壁、観葉植物、整えられたソファ、テーブル。
 すぐ隣に油臭い整備ドッグがあるとは思えない程、その部屋は清潔感に満ちていた。
「ふぅ……。お疲れ様。コルネール」
「エッダも、お疲れ様」
 簡単に体の洗浄と着替えを終えた二人は、部屋のソファに腰かけて休憩を取っていた。
 コルネールは漫画の単行本を、エッダはタブレット端末を取り出し、それぞれが理想の休息態勢を整える。
「……それにしても、今日は散々だったね」
「そうねぇ。敵部隊撤退で依頼は無事に達成。基地の人々からは感謝と称賛の嵐。本来なら諸手を挙げて歓喜するところだけど。でも、これは……」
「うん。敵は大幅な戦力の低下で撤退したけど、半分以上の戦力を残した。意図的かどうかは分からないけれど、全員が大きく損をしない終わり方に持っていかれた」
「あのMFモビルフレームのライダーって、何者ですの?私の機動や、エッダの予測を先読みするなんて」
 コルネールは単行本を置き、エッダはタブレット端末の表面に指を滑らせる。
「さっき調べてみたら、私達と同じCCs創られた子ども達の二人組がヒットしたよ。名前はそれぞれ、クロエとゼラ。演算性能に調整がされたモデル。管理機関のキャッチコピーは“獲物を逃さぬ鷹の目”」
「まさに猛禽、ということですわね。今回の『獲物』は依頼の報酬と言う点が気に喰わない感じだけど……。勝ちを譲られた立場としては、ぐうの音も出ませんわね」
「まったく、その通りだね。勝ちたい。次は……」
 二人の語らいは、休憩室内の浄化された空気に溶け、消えた。

 その頃。別の場所にて。
 まるで会社の社長室のような雰囲気の部屋に、二人の人物がいる。
 一人は野暮ったい意匠の服を上品に着こなして見せている紳士。
 もう一人は、フォーマルなスーツをきっちりと着こなした、しかし何処か人間離れした雰囲気を発している女性。
「お義父とう様。こちらが、今回の二人の戦闘記録です」
 その女性は目の前の紳士を義父と呼び、紙の資料と、タブレット端末とを提出した。
「ご苦労様、コラリー。でも、ここでは名前で呼ぶようにね。どうだった?今回のあの子たちは」
「あ、申し訳ありません。アルバン様。えー、それで。どうやら敵側に居たMFとそのライダーが強力で、予想外の苦戦を強いられたようです。機体の損傷は軽微。二人とも怪我は負っていません」
「ふむ、なるほどね。息子や君の技術も学習させたとは言え、これも仕方なしか」
 資料と報告書に目を通しながら紳士、アルバンは微笑する。
「有難う。今日はもう上がって良いよ。他の観測班にも休むよう伝えておくれ」
「承知しました」
 女性はそう言うと、一礼した後で部屋から退出した。
「……」
 その背を見送り、アルバンは資料を机の上へと置く。
「能力の高いライダーに最高品質の機体を使っても、やはり経験を積んだ相手や、突出した能力を持つ者との差は大きいということか」
 椅子に体重を預け、そう呟くと、アルバンは近くの本棚から一冊の本を取り出した。それはアルバムで、表紙には『家族写真』と書かれている。
 しかし、出生記念と書かれたページには、培養槽のある研究室の光景が写っている物ばかりだった。その中の一枚には、コルネールとエッダの名前が書かれている。
本物ヘルンヴォータに勝ち、私たち家族の最強を知らしめるためには、まだまだ実戦での経験が必要だな」
 そう言って、彼は神妙な表情を浮かべるのだった。
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