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山彦と狐太郎
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山彦は亜子たちを連れて、学校の裏手までやって来た。ここならば、あやかし学園の生徒どころか教師もやって来ないだろう。
山彦は、亜子を見てあごをしゃくった。亜子から狐太郎に話せというのだ。戦闘訓練が終わった今、亜子はもうリーダーでもなんでもないのだが、山彦が話すとケンカ腰になると思ったので、亜子が口火を切った。
「狐太郎くん。聞きたい事があるんだけど、」
「戦闘訓練の時の俺の術の事だろ?」
亜子が聞きづらそうに言うと、狐太郎は無表情に答えた。亜子は焦って言葉を続けた。
「そ、そう!変わった術だったね?」
「ああ。俺の術はあやかしの妖術じゃない。陰陽師の術だ」
亜子はひっと小さく息を吸った。陰陽師。あやかしや半妖を捕らえ、従える術。亜子は反射的に恐怖感を覚えた。それまで後ろにひかえていた山彦が、低い声で狐太郎に言った。
「おい、狐太郎。陰陽師であるお前は、なぜこのあやかし学園に入った?俺たちを皆殺しにするためか?」
「いいや。俺は陰陽師の家に生まれたが、母は妖狐だ。だから俺も半妖だ。あやかし学園に入学しても何の不思議もないだろう?」
狐太郎のもっともな発言に、亜子はすぐさま納得した。狐太郎が亜子たちを傷つける敵だとは思いたくなかったからだ。山彦は苦虫を噛みつぶしたような表情で言った。
「それなら狐太郎、お前はこれからもずっとあやかしと半妖の味方をするという事でいいんだな?」
「何を言っているんだ、山彦。俺たちはまだ中学生だぞ?これから成長して、大人になる。きっと生きていく環境や考えは変化する。それなのに、この場であやかしや半妖に忠誠を誓うような事は無意味だ」
「それなら狐太郎、お前は俺たちの敵だ」
「山彦、お前の考えは子供じみている。物事に白か黒かなど簡単につけられるものじゃない」
山彦の顔がサッと赤くなる。ひどく怒っているようだ。亜子は慌てて狐太郎と山彦の間に入り、狐太郎に振り向いて言った。
「私は狐太郎くんが敵じゃないって信じてる。戦闘訓練の時、音子の事を心から心配してくれたよね?グループの仲間の皆だって守ってくれたよね?」
亜子はすがるように狐太郎を見た。狐太郎はハッとした表情になり、苦笑して答えた。
「ありがとう、亜子。だけど、俺の事は信用しないでくれ。俺は半妖だけど、あやかしの敵である陰陽師でもあるんだからな」
亜子は狐太郎の表情に息を飲んだ。とても悲しそうな笑顔だったからだ。狐太郎は、要件がそれだけならもういいだろうと言って、教室に帰って行った。
山彦はチッと舌打ちしてから始終無言だった悟にキツイ言葉で言った。
「悟!狐太郎の言った言葉に嘘はなかったか?!」
「う、うん。山彦くん。狐太郎は本心を言っていたよ?」
山彦は悟を疑わしそうににらんで言った。
「悟、お前を信じていいのか?お前、最近狐太郎とよく話しているよな?」
「え?、ああ、そうだね。狐太郎くんと同じグループになってから、たまに話すようになったんだ」
山彦は不安そうにしている悟をジロリとにらんでから、一人で歩いて行ってしまった。
亜子は悟が心配になり、声をかけた。
「悟くん、大丈夫?」
「うん。山彦くんは、僕が狐太郎くんとグルになっていると思っているんだ」
「グル?」
「僕が人間側に寝返ったと思っているみたい」
悟は苦笑しながら答えた。あやかし側だったり、人間側だったりと、亜子にはよくわからなかった。山彦はあやかしにつくか、人間につくか、はっきりさせなければ気が済まないらしい。亜子はあやかしの父も、人間の母も大好きだ。だからあやかしと人間には仲良くしてほしいと考えてしまうのだ。
山彦は、亜子を見てあごをしゃくった。亜子から狐太郎に話せというのだ。戦闘訓練が終わった今、亜子はもうリーダーでもなんでもないのだが、山彦が話すとケンカ腰になると思ったので、亜子が口火を切った。
「狐太郎くん。聞きたい事があるんだけど、」
「戦闘訓練の時の俺の術の事だろ?」
亜子が聞きづらそうに言うと、狐太郎は無表情に答えた。亜子は焦って言葉を続けた。
「そ、そう!変わった術だったね?」
「ああ。俺の術はあやかしの妖術じゃない。陰陽師の術だ」
亜子はひっと小さく息を吸った。陰陽師。あやかしや半妖を捕らえ、従える術。亜子は反射的に恐怖感を覚えた。それまで後ろにひかえていた山彦が、低い声で狐太郎に言った。
「おい、狐太郎。陰陽師であるお前は、なぜこのあやかし学園に入った?俺たちを皆殺しにするためか?」
「いいや。俺は陰陽師の家に生まれたが、母は妖狐だ。だから俺も半妖だ。あやかし学園に入学しても何の不思議もないだろう?」
狐太郎のもっともな発言に、亜子はすぐさま納得した。狐太郎が亜子たちを傷つける敵だとは思いたくなかったからだ。山彦は苦虫を噛みつぶしたような表情で言った。
「それなら狐太郎、お前はこれからもずっとあやかしと半妖の味方をするという事でいいんだな?」
「何を言っているんだ、山彦。俺たちはまだ中学生だぞ?これから成長して、大人になる。きっと生きていく環境や考えは変化する。それなのに、この場であやかしや半妖に忠誠を誓うような事は無意味だ」
「それなら狐太郎、お前は俺たちの敵だ」
「山彦、お前の考えは子供じみている。物事に白か黒かなど簡単につけられるものじゃない」
山彦の顔がサッと赤くなる。ひどく怒っているようだ。亜子は慌てて狐太郎と山彦の間に入り、狐太郎に振り向いて言った。
「私は狐太郎くんが敵じゃないって信じてる。戦闘訓練の時、音子の事を心から心配してくれたよね?グループの仲間の皆だって守ってくれたよね?」
亜子はすがるように狐太郎を見た。狐太郎はハッとした表情になり、苦笑して答えた。
「ありがとう、亜子。だけど、俺の事は信用しないでくれ。俺は半妖だけど、あやかしの敵である陰陽師でもあるんだからな」
亜子は狐太郎の表情に息を飲んだ。とても悲しそうな笑顔だったからだ。狐太郎は、要件がそれだけならもういいだろうと言って、教室に帰って行った。
山彦はチッと舌打ちしてから始終無言だった悟にキツイ言葉で言った。
「悟!狐太郎の言った言葉に嘘はなかったか?!」
「う、うん。山彦くん。狐太郎は本心を言っていたよ?」
山彦は悟を疑わしそうににらんで言った。
「悟、お前を信じていいのか?お前、最近狐太郎とよく話しているよな?」
「え?、ああ、そうだね。狐太郎くんと同じグループになってから、たまに話すようになったんだ」
山彦は不安そうにしている悟をジロリとにらんでから、一人で歩いて行ってしまった。
亜子は悟が心配になり、声をかけた。
「悟くん、大丈夫?」
「うん。山彦くんは、僕が狐太郎くんとグルになっていると思っているんだ」
「グル?」
「僕が人間側に寝返ったと思っているみたい」
悟は苦笑しながら答えた。あやかし側だったり、人間側だったりと、亜子にはよくわからなかった。山彦はあやかしにつくか、人間につくか、はっきりさせなければ気が済まないらしい。亜子はあやかしの父も、人間の母も大好きだ。だからあやかしと人間には仲良くしてほしいと考えてしまうのだ。
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