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行方不明の狼牙
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音子が泣きそうになりながら説明するには、狼牙と二人で学園の周りを散歩していると、空に鳥が飛んでいた。
トンビだろうか、音子は指を指して狼牙に言った。
「狼牙くん、鳥が飛んでいるね?」
「とり!」
その途端、狼牙は人間の姿から、子狼の姿になって鳥を追って走って行ってしまったのだ。
音子だとて猫またの娘だ。脚力の速さは、人間の比ではない。だが狼になった狼牙の速度にはかなわなかった。音子は完全に狼牙を見失ってしまったのだ。
狐太郎は、とうとう泣き出してしまった音子に、大丈夫だと言ってか、ポケットのスマートホンを取り出して、どこかに電話した。
「悟か、済まない。狼牙がいなくなった。狼牙の思念を探してくれないか?」
狐太郎はしばらく悟と話しをしていたが、礼を言って電話を切ってから口を開いた。
「どうやら狼牙はあやかし学園の結界の外に出てしまったようだ」
亜子と音子は驚いて顔を見合わせた。校長のさわらび童子の妖術である、あやかし学園の結界は、そのまま転移装置にもなっている。街のど真ん中に存在している結界内に入ると、森の山奥に転送されるのだ。
結界の外に出たという事は、交通量の多い街のど真ん中に飛び出してしまったという事になる。亜子と音子は狼牙の身を案じて、顔を青ざめさせた。
狐太郎は大丈夫だ、と言ってポケットからチョークのようなものを取り出し、教室の床に五芒星を描き、その周りを丸くかこった。
戦闘訓練の時、悟を守るために描いた結界の円陣だ。狐太郎はすばやく呪文を唱えると、おもむろに右手の親指を歯で食いちぎった。ポタリポタリと円陣に血が滴る。
亜子と音子は同時にキャッと叫んだ。狐太郎は鋭い声で言った。
「我が眷属、狼牙。戻って来い!」
すると円陣が輝き出した。亜子はまぶしさのために、きつく目をつむった。ゆっくりと目を開くと、裸の狼牙が円陣の中にいて、ギャンギャン泣いていた。狼牙の頭から血が出ていた。
亜子たちが慌てて狼牙に駆け寄ろうとするのを、狐太郎は手で制した。狐太郎は狼牙の側にひざをつくと、頭部の傷を見ながら聞いた。
「狼牙、この傷はどうした?」
「大っきい車に当たった」
「またトラックにはねられたのか。大きなたんこぶができてる。トラックは壊れたか?」
「ピカピカ壊れた」
「ライトを壊したのか」
狐太郎はハァッとため息をついた。狼牙はトラックにはねられるという大事故だったが、たんこぶだけで済んだようだ。亜子は安どのため息をついた。
狐太郎は、治癒の術を使い、狼牙のケガを治していた。音子は狼牙を心配げに見ながら言った。
「狼牙くん、ケガさせてごめんね?」
フルフルと首を振る狼牙に変わり、狐太郎が答えた。
「音子の静止を無視して走った狼牙が悪い。狼牙、ごめんなさいは?」
狼牙は狐太郎に抱っこされながら、音子を見て言った。
「音子、言う事聞かなくてごめんなさい。また遊んでくれる?」
「うんうん、狼牙くん!また遊ぼうね?」
音子の返事に狼牙は微笑んだ。亜子が狼牙の頭と、狐太郎の指の傷を見ると、もう治癒していた。亜子は狐太郎から、陰陽師の術を習いたいと思った。
トンビだろうか、音子は指を指して狼牙に言った。
「狼牙くん、鳥が飛んでいるね?」
「とり!」
その途端、狼牙は人間の姿から、子狼の姿になって鳥を追って走って行ってしまったのだ。
音子だとて猫またの娘だ。脚力の速さは、人間の比ではない。だが狼になった狼牙の速度にはかなわなかった。音子は完全に狼牙を見失ってしまったのだ。
狐太郎は、とうとう泣き出してしまった音子に、大丈夫だと言ってか、ポケットのスマートホンを取り出して、どこかに電話した。
「悟か、済まない。狼牙がいなくなった。狼牙の思念を探してくれないか?」
狐太郎はしばらく悟と話しをしていたが、礼を言って電話を切ってから口を開いた。
「どうやら狼牙はあやかし学園の結界の外に出てしまったようだ」
亜子と音子は驚いて顔を見合わせた。校長のさわらび童子の妖術である、あやかし学園の結界は、そのまま転移装置にもなっている。街のど真ん中に存在している結界内に入ると、森の山奥に転送されるのだ。
結界の外に出たという事は、交通量の多い街のど真ん中に飛び出してしまったという事になる。亜子と音子は狼牙の身を案じて、顔を青ざめさせた。
狐太郎は大丈夫だ、と言ってポケットからチョークのようなものを取り出し、教室の床に五芒星を描き、その周りを丸くかこった。
戦闘訓練の時、悟を守るために描いた結界の円陣だ。狐太郎はすばやく呪文を唱えると、おもむろに右手の親指を歯で食いちぎった。ポタリポタリと円陣に血が滴る。
亜子と音子は同時にキャッと叫んだ。狐太郎は鋭い声で言った。
「我が眷属、狼牙。戻って来い!」
すると円陣が輝き出した。亜子はまぶしさのために、きつく目をつむった。ゆっくりと目を開くと、裸の狼牙が円陣の中にいて、ギャンギャン泣いていた。狼牙の頭から血が出ていた。
亜子たちが慌てて狼牙に駆け寄ろうとするのを、狐太郎は手で制した。狐太郎は狼牙の側にひざをつくと、頭部の傷を見ながら聞いた。
「狼牙、この傷はどうした?」
「大っきい車に当たった」
「またトラックにはねられたのか。大きなたんこぶができてる。トラックは壊れたか?」
「ピカピカ壊れた」
「ライトを壊したのか」
狐太郎はハァッとため息をついた。狼牙はトラックにはねられるという大事故だったが、たんこぶだけで済んだようだ。亜子は安どのため息をついた。
狐太郎は、治癒の術を使い、狼牙のケガを治していた。音子は狼牙を心配げに見ながら言った。
「狼牙くん、ケガさせてごめんね?」
フルフルと首を振る狼牙に変わり、狐太郎が答えた。
「音子の静止を無視して走った狼牙が悪い。狼牙、ごめんなさいは?」
狼牙は狐太郎に抱っこされながら、音子を見て言った。
「音子、言う事聞かなくてごめんなさい。また遊んでくれる?」
「うんうん、狼牙くん!また遊ぼうね?」
音子の返事に狼牙は微笑んだ。亜子が狼牙の頭と、狐太郎の指の傷を見ると、もう治癒していた。亜子は狐太郎から、陰陽師の術を習いたいと思った。
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