あやかし学園

盛平

文字の大きさ
上 下
85 / 91

狐太郎2

しおりを挟む
 狐太郎は亜子の強い瞳に魅了された。狐太郎は心の中にある感情が生まれた。

 亜子が好きだ。がんばりやで、誰かのために一生懸命になってくれる彼女の事が好きなのだ。

 亜子は今も、狐太郎の願いを叶えるために、術返しの術をしようとしてくれている。

 狐太郎は素直に亜子に思いを伝えられた。

 俺も、一生懸命でがんばり屋の亜子が好きだよ。

 亜子は驚いたような顔をして、泣き出しそうな表情になった。それが狐太郎が最後に目にしたものだった。

 狐太郎の術が、亜子の術返しの術に弾かれ、狐太郎は封印された。

 狐太郎はぼんやりと考えた。百年後、自分の封印が解けたら、どうなっているだろうか。

 狼牙は少しは大きくなっているだろうか。狐太郎を小さい頃から守ってくれる兄であり、狐太郎の心を支えてくれる愛らしい弟でもある狼牙。

 狼牙は狐太郎を助けるために、たまに二十歳くらいの青年の姿になる。その時の狼牙はかなりの長身だ。

 百年後、狼牙の背が高かったら嫌だなと思った。狐太郎は十三歳のままだ。封印が解けた後、身長を伸ばす努力をしなければいけない。

 できれば狼牙と同じくらいの身長になりたいと思った。

 百年後、亜子はどんな女性になっているだろう。半妖は二十歳くらいの年齢になったら、その年齢の姿がずっと続く。

 亜子はきっと美しい女性に成長するだろう。心優しい亜子の事だ。もしかすると人間の男性と恋をして、結婚するかもしれない。子供も生まれているかもしれない。

 百年後の亜子のところに、十三歳の狐太郎がたずねて行っては迷惑でしかないだろう。だけど、遠くから亜子を見てみたいと思った。

 狐太郎は考え事を続け、だんだんと眠くなっていった。

 少し眠ろう。狐太郎には百年という長い時間があるのだから。

 突然、世界がまぶしい光に包まれた。肉体の無い狐太郎は、目をつむる事もできず、まぶしさに耐えた。

しおりを挟む

処理中です...