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リリーの武器
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リリーたちは城下町の賑やかなバザールに到着した。物売りたちの活気ある声が飛び交っている。リリーはフレイヤと手をつなぎながら、ぼんやりと店々のある道を歩いていた。そして広場になった場所に、一際沢山の人だかりを目にした。リリーは吸い寄せられるように人だかりの方に足を進めた。
その人だかりは、大道芸人を見学する人々だった。見物客たちがぐるりと囲んだ真ん中に、今まさに弓をひこうとしている青年がいた。その青年の視線の向こうに、小さな少女が頭にりんごを乗せて立っていた。それを見たフレイヤが叫んだ。
『リリー大変!あの男が女の子に弓をいろうとしているわ!私が攻撃魔法であの男を倒すわ!』
リリーは騒ぐフレイヤを慌てて止めて言った。
「ダメよフレイヤ!これは大道芸なの。女の子に危険は無いわ」
『だいどうげい?』
「ええ、大道芸人が色々な芸をひろうするのよ?」
リリーとフレイヤが見ていると、青年は寸分たがわず少女の頭のりんごを射抜いた。観客たちから歓声が上がる。少女はポケットからりんごを取り出し、両手に持った。そのりんごも青年の弓で瞬時に射抜かれた。リリーは直感した。自分が進むべき道を。
リリーは大道芸人の芸がすべて終了するのを待ってから、弓矢の芸をした青年に声をかけた。
「あ、あの。弓矢の芸すごかったです」
青年はリリーを見て、驚いた顔をしたが微笑んでありがとうと答えた。リリーは青年に弓矢を教えてほしいと頼み込んだ。青年はしぶるそぶりを見せたが、大道芸の団長に聞いてみてくれると言った。しばらくして、六十代くらいのガッチリした男がやって来た。男はリリーとフレイヤをジロリと見てから言った。
「お前たちか、俺の団に入りたいという奴らは?」
青年がすかさず口をはさむ。
「違うよ団長。この黒髪の女の子が弓矢を習いたいんだってさ」
「はぁっ?娘っ子の手習なんかに関わってられるか!帰んな!」
「団長、いいじゃないですか?この二人すごい美人ですよ?彼女たちがいてくれれば、お客を呼び込めますよ?」
青年の口ぞえもあって、リリーとフレイヤは、大道芸の一座のお手伝いをした後なら弓矢を習っていい事になった。青年はローと言った。ローは、団長のけんまくに怯えていたリリーにコソリと耳打ちした。
「怖がらなくてもいいよ。団長は顔がおっかないけれど優しい人なんだ」
この大道芸の一座は、旅をしながら街々をまわっているのだそうだ。城下町は人が多いので、長めに滞在するらしい。ローたちは大道芸の後片付けをすると、城下町から離れた林で野宿する事にした。
ローたちはテキパキと野宿の準備をした。夕食はトマトを入れた野菜スープとパンだった。この食材は、城下町の市場で購入したのだ。ローたちは大道芸をして、投げ銭をもらって暮しているのだ。食後にローがりんごを食べさせてくれた。とても甘くて美味しかった。聞けば、ローの土魔法で作ったのだという。リリーがすごいと感嘆すると、ローは照れたように答えた。
「俺は植物魔法しか使えないんだ。しかも美味しく食べられるのはりんごだけなんだ。他の野菜は味が悪くて食べられるないんだ」
「ローのりんごはもう飽きたよ。他の果物を作ってよ?」
ローの首に抱きついて少年が言った。ローはムッとした顔で少年に答えた。
「じゃあラグはもうデザート無し!」
「ええ?!」
ラグと呼ばれた少年はがく然とした顔になって、ローにごめんなさいと言った。ラグはローの次に年長で、十三歳くらいだろうか。ラグは少しだけ火魔法が使えて、火のエネルギーを力に換える事ができるのだ。つまりラグはすごい力持ちなのだ。ローとラグはアクロバットな曲芸が得意で、高く飛び上がったローを、ラグが危なげなくキャッチして持ち上げる事ができるのだ。
ラグの下はシンという少年でとても引っ込みじあんな子だった。シンは少しだけ風魔法が使えるのだという。シンは風が運んでくる危険な気配を感じる事ができるのだ。最後はミラという女の子だ。ミラはローの弓矢を受けるため、りんごを頭に乗せていた女の子だ。
ミラはわずかに水魔法が使えるそうで、水の粒を発生させる事ができるらしい。晴れた日には虹を出す事ができるのだそうだ。シンとミラは小さいので曲芸ではなく、ローとラグのお手伝いをするのだ。
リリーの契約精霊フレイヤは小さな子供が大好きなので、シンとミラを抱っこして頬ずりをしていた。フレイヤとシンたちは会話ができないが、すぐに仲良くなった。
夕食が終わって休けいした後、ローはリリーに弓矢を教えてくれた。ローがリリーに厳しく指導したのは、弓を引く時の姿勢だった。弓を正しく引くには、正しい姿勢が不可欠なのだ。
リリーが初めて弓を引くと、とても力が必要な事がわかった。リリーはひたすら、ローの言う姿勢を練習した。そしてやっとの事で矢をつがえて、弓を引かせてもらった。だが、リリーの放った矢はヘロヘロと手前に落下してしまった。リリーはガックリと肩を落として落ち込んだ。だがローは嬉しそうに言った。
「リリー、君は弓の才能があるよ。変な力が入っていないからとても綺麗な姿勢を保っている」
ローが言うには、弓矢を引くのは腕力ではないのだそうだ。力持ちのラグは弓矢が苦手でちっとも上達しないと、ローはグチを言っていた。リリーはローに大きくうなずいてから練習を再開させた。
その人だかりは、大道芸人を見学する人々だった。見物客たちがぐるりと囲んだ真ん中に、今まさに弓をひこうとしている青年がいた。その青年の視線の向こうに、小さな少女が頭にりんごを乗せて立っていた。それを見たフレイヤが叫んだ。
『リリー大変!あの男が女の子に弓をいろうとしているわ!私が攻撃魔法であの男を倒すわ!』
リリーは騒ぐフレイヤを慌てて止めて言った。
「ダメよフレイヤ!これは大道芸なの。女の子に危険は無いわ」
『だいどうげい?』
「ええ、大道芸人が色々な芸をひろうするのよ?」
リリーとフレイヤが見ていると、青年は寸分たがわず少女の頭のりんごを射抜いた。観客たちから歓声が上がる。少女はポケットからりんごを取り出し、両手に持った。そのりんごも青年の弓で瞬時に射抜かれた。リリーは直感した。自分が進むべき道を。
リリーは大道芸人の芸がすべて終了するのを待ってから、弓矢の芸をした青年に声をかけた。
「あ、あの。弓矢の芸すごかったです」
青年はリリーを見て、驚いた顔をしたが微笑んでありがとうと答えた。リリーは青年に弓矢を教えてほしいと頼み込んだ。青年はしぶるそぶりを見せたが、大道芸の団長に聞いてみてくれると言った。しばらくして、六十代くらいのガッチリした男がやって来た。男はリリーとフレイヤをジロリと見てから言った。
「お前たちか、俺の団に入りたいという奴らは?」
青年がすかさず口をはさむ。
「違うよ団長。この黒髪の女の子が弓矢を習いたいんだってさ」
「はぁっ?娘っ子の手習なんかに関わってられるか!帰んな!」
「団長、いいじゃないですか?この二人すごい美人ですよ?彼女たちがいてくれれば、お客を呼び込めますよ?」
青年の口ぞえもあって、リリーとフレイヤは、大道芸の一座のお手伝いをした後なら弓矢を習っていい事になった。青年はローと言った。ローは、団長のけんまくに怯えていたリリーにコソリと耳打ちした。
「怖がらなくてもいいよ。団長は顔がおっかないけれど優しい人なんだ」
この大道芸の一座は、旅をしながら街々をまわっているのだそうだ。城下町は人が多いので、長めに滞在するらしい。ローたちは大道芸の後片付けをすると、城下町から離れた林で野宿する事にした。
ローたちはテキパキと野宿の準備をした。夕食はトマトを入れた野菜スープとパンだった。この食材は、城下町の市場で購入したのだ。ローたちは大道芸をして、投げ銭をもらって暮しているのだ。食後にローがりんごを食べさせてくれた。とても甘くて美味しかった。聞けば、ローの土魔法で作ったのだという。リリーがすごいと感嘆すると、ローは照れたように答えた。
「俺は植物魔法しか使えないんだ。しかも美味しく食べられるのはりんごだけなんだ。他の野菜は味が悪くて食べられるないんだ」
「ローのりんごはもう飽きたよ。他の果物を作ってよ?」
ローの首に抱きついて少年が言った。ローはムッとした顔で少年に答えた。
「じゃあラグはもうデザート無し!」
「ええ?!」
ラグと呼ばれた少年はがく然とした顔になって、ローにごめんなさいと言った。ラグはローの次に年長で、十三歳くらいだろうか。ラグは少しだけ火魔法が使えて、火のエネルギーを力に換える事ができるのだ。つまりラグはすごい力持ちなのだ。ローとラグはアクロバットな曲芸が得意で、高く飛び上がったローを、ラグが危なげなくキャッチして持ち上げる事ができるのだ。
ラグの下はシンという少年でとても引っ込みじあんな子だった。シンは少しだけ風魔法が使えるのだという。シンは風が運んでくる危険な気配を感じる事ができるのだ。最後はミラという女の子だ。ミラはローの弓矢を受けるため、りんごを頭に乗せていた女の子だ。
ミラはわずかに水魔法が使えるそうで、水の粒を発生させる事ができるらしい。晴れた日には虹を出す事ができるのだそうだ。シンとミラは小さいので曲芸ではなく、ローとラグのお手伝いをするのだ。
リリーの契約精霊フレイヤは小さな子供が大好きなので、シンとミラを抱っこして頬ずりをしていた。フレイヤとシンたちは会話ができないが、すぐに仲良くなった。
夕食が終わって休けいした後、ローはリリーに弓矢を教えてくれた。ローがリリーに厳しく指導したのは、弓を引く時の姿勢だった。弓を正しく引くには、正しい姿勢が不可欠なのだ。
リリーが初めて弓を引くと、とても力が必要な事がわかった。リリーはひたすら、ローの言う姿勢を練習した。そしてやっとの事で矢をつがえて、弓を引かせてもらった。だが、リリーの放った矢はヘロヘロと手前に落下してしまった。リリーはガックリと肩を落として落ち込んだ。だがローは嬉しそうに言った。
「リリー、君は弓の才能があるよ。変な力が入っていないからとても綺麗な姿勢を保っている」
ローが言うには、弓矢を引くのは腕力ではないのだそうだ。力持ちのラグは弓矢が苦手でちっとも上達しないと、ローはグチを言っていた。リリーはローに大きくうなずいてから練習を再開させた。
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