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フィンとブランの追撃
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サメ男はコウモリの翼を生やし、空高く登っていった。このままでは逃げられてしまう。フィンは自身の契約霊獣のブランに叫んだ。
「ブラン!植物魔法で足場を作って?!」
『ええ!』
霊獣ブランはサメ男の飛んでいる真下の地面から、巨大な植物のツルを何本も生やした。フィンはそのツルの一本に飛びつくとすばやく登り出した。ブランは何本ものツルを地面から出現させるため、サメ男は気流が乱れて上手く飛べないようだ。この瞬間にフィンがサメ男を地面に叩き落とすしかない。
フィンはサメ男が危なげに飛んでいる高さまでツタを登りきると、足場にしているツタを強くけって、サメ男に掴みかかった。サメ男は突然フィンが飛び出してきた事に驚いたようだが、何とか体勢を立て直してフィンをよけた。
肩すかしをくらったフィンは、近場のツタに飛びつくと再びツタを登った。そしてツタを足場にして、狙いをさだめてサメ男に殴りかかった。フィンのこぶしを受けたサメ男は体勢を崩した。フィンのこぶしは地上ではまったく通用しなかったが、サメ男の体勢が不安定な上空では効果があるようだ。
フィンは近場のツタに掴まろうとしたが、ツタの葉を掴みそこね、落下した。だがすかさず地上にいるブランがツタを操ってフィンを受け止める。フィンは地上のブランにありがとうと笑いかけた。
「フィン!」
地上にいるリリーが叫んだ。フィンがリリーを見ると、彼女は弓を引いていた。矢じりの部分にはリリーの火魔法が灯されていた。フィンは理解した。リリーの火魔法で、サメ男の翼を燃やそうというのだ。
フィンはブランに叫んだ。
「ブラン!僕を思いっきりサメ男に投げて!」
するとフィンを掴んだツタは、グルリとたわんでから勢いつけてフィンを投げた。ピョーンと飛んだフィンの目の先には、サメ男が飛んでいた。フィンは渾身のこぶしをサメ男の顔にめり込ませた。
フィンの攻撃を受けたサメ男はグラリと身体をゆらすと、地面に落ちていった。リリーが火魔法の矢を放つ。サメ男は火に包まれながら地面につい落した。
サメ男を殴ったフィンも重力に従って落下し始めた。すかさず近場のツタがフィンを優しく受け止めて地面に降ろしてくれた。
フィンが地面に着地すると、サメ男はフレイヤの拘束火魔法で拘束され、あお向けに倒れていた。フィンはサメ男を見下ろして言った。
「おい、観念して霊獣ハンターの事を話せ」
サメ男は、拘束され敵に囲まれているのにもかかわらず穏やかな声で答えた。
「私は組織のほんの一部にすぎません。私はただ霊獣ハンターになりそうな人間を探して勧誘するだけの存在です」
どうやら霊獣ハンターを束ねる組織はとても巨大なようだ。フィンは質問を変えた。
「ならば霊獣ハンターの組織のトップは何というんだ?」
そこでサメ男はフフと笑ってから答えた。
「霊獣ハンターを組織する者。いえ、霊獣ハンターを束ねる組織はこの世に沢山あります。私たちは氷山の一角にしかすぎません」
サメ男の言葉にフィンはげんなりしてしまい、少し言葉を和らげて言った。
「人間が霊獣を捕らえないようにするにはどうしたらいいのかな?」
「それは無理です。何故なら人間というものは、常に霊獣や精霊に魅了される生き物なのだから」
サメ男は穏やかな笑顔で言い切った。フィンはリリーたちを見回した。リリーたちも困惑ぎみだ。突然サメ男が苦しみ出した。フィンはサメ男に叫んだ。
「どうしたんだ?!」
「今、私の歯の奥につめた毒薬を飲んだのです。私はもうすぐ死にます」
サメ男の言葉を聞いたリリーが自身の契約精霊に叫んだ。
「フレイヤ!回復魔法を!」
フレイヤはサメ男の胸に手を置いてから首を振って言った。
『ダメだわ、強力な即効性の毒みたい。きっともっと前から毒を飲んでいたようね』
フレイヤの言葉にフィンは驚いてしまった。そうなるとサメ男はもっと前から死ぬ覚悟だったという事だ。フィンはサメ男に質問した。
「何故死のうとするの?」
「私はこの上もない幸せ者だからです。美しい精霊と霊獣に見守られながら死ねるのです。もう思い残す事は何もありません」
フィンはハッとした。このサメ男は霊獣や精霊に対してこの上もない執着心を持っていたが、サメ男は本心から霊獣と精霊を愛しているのだとわかった。フィンは穏やかな声で聞いた。
「貴方の名前は?」
「フアト」
フィンは痛ましそうに顔を歪めてから、自身の契約霊獣に言った。
「ブラン、お願い。この人を看取ってあげて?」
ブランはうなずくと小さな前脚をサメ男、フアトの胸にチョコンと乗せて言った。
『フアト、アタシは貴方を許します』
リリーもフレイヤにお願いした。フレイヤはうなずくと、美しい手をフアトの胸に置いて言った。
『フアト、安らかに眠りなさい』
フアトの小さなサメの目から、ツウッと涙がこぼれた。フアトは息も絶え絶えになりながらフィンに言った。
「若き召喚士よ。慈悲深いとむらいを感謝する。私の魔物の力が気になっただろう?私に魔物の力を授けた魔物は、メグリダと言っていた」
その名前にフィンはビクリとした。グッチに力を授けた魔物だ。フィンは奥歯をグッと噛んだ。フアトはそれきり息絶えた。
フアトの絶命と共に魔物の力が消え失せたとみえて、フアトはサメ男の姿から人間に戻った。人間の彼は小柄な老人だった。フィンはブランに頼んでフアトを地中深くに埋葬してもらった。
「ブラン!植物魔法で足場を作って?!」
『ええ!』
霊獣ブランはサメ男の飛んでいる真下の地面から、巨大な植物のツルを何本も生やした。フィンはそのツルの一本に飛びつくとすばやく登り出した。ブランは何本ものツルを地面から出現させるため、サメ男は気流が乱れて上手く飛べないようだ。この瞬間にフィンがサメ男を地面に叩き落とすしかない。
フィンはサメ男が危なげに飛んでいる高さまでツタを登りきると、足場にしているツタを強くけって、サメ男に掴みかかった。サメ男は突然フィンが飛び出してきた事に驚いたようだが、何とか体勢を立て直してフィンをよけた。
肩すかしをくらったフィンは、近場のツタに飛びつくと再びツタを登った。そしてツタを足場にして、狙いをさだめてサメ男に殴りかかった。フィンのこぶしを受けたサメ男は体勢を崩した。フィンのこぶしは地上ではまったく通用しなかったが、サメ男の体勢が不安定な上空では効果があるようだ。
フィンは近場のツタに掴まろうとしたが、ツタの葉を掴みそこね、落下した。だがすかさず地上にいるブランがツタを操ってフィンを受け止める。フィンは地上のブランにありがとうと笑いかけた。
「フィン!」
地上にいるリリーが叫んだ。フィンがリリーを見ると、彼女は弓を引いていた。矢じりの部分にはリリーの火魔法が灯されていた。フィンは理解した。リリーの火魔法で、サメ男の翼を燃やそうというのだ。
フィンはブランに叫んだ。
「ブラン!僕を思いっきりサメ男に投げて!」
するとフィンを掴んだツタは、グルリとたわんでから勢いつけてフィンを投げた。ピョーンと飛んだフィンの目の先には、サメ男が飛んでいた。フィンは渾身のこぶしをサメ男の顔にめり込ませた。
フィンの攻撃を受けたサメ男はグラリと身体をゆらすと、地面に落ちていった。リリーが火魔法の矢を放つ。サメ男は火に包まれながら地面につい落した。
サメ男を殴ったフィンも重力に従って落下し始めた。すかさず近場のツタがフィンを優しく受け止めて地面に降ろしてくれた。
フィンが地面に着地すると、サメ男はフレイヤの拘束火魔法で拘束され、あお向けに倒れていた。フィンはサメ男を見下ろして言った。
「おい、観念して霊獣ハンターの事を話せ」
サメ男は、拘束され敵に囲まれているのにもかかわらず穏やかな声で答えた。
「私は組織のほんの一部にすぎません。私はただ霊獣ハンターになりそうな人間を探して勧誘するだけの存在です」
どうやら霊獣ハンターを束ねる組織はとても巨大なようだ。フィンは質問を変えた。
「ならば霊獣ハンターの組織のトップは何というんだ?」
そこでサメ男はフフと笑ってから答えた。
「霊獣ハンターを組織する者。いえ、霊獣ハンターを束ねる組織はこの世に沢山あります。私たちは氷山の一角にしかすぎません」
サメ男の言葉にフィンはげんなりしてしまい、少し言葉を和らげて言った。
「人間が霊獣を捕らえないようにするにはどうしたらいいのかな?」
「それは無理です。何故なら人間というものは、常に霊獣や精霊に魅了される生き物なのだから」
サメ男は穏やかな笑顔で言い切った。フィンはリリーたちを見回した。リリーたちも困惑ぎみだ。突然サメ男が苦しみ出した。フィンはサメ男に叫んだ。
「どうしたんだ?!」
「今、私の歯の奥につめた毒薬を飲んだのです。私はもうすぐ死にます」
サメ男の言葉を聞いたリリーが自身の契約精霊に叫んだ。
「フレイヤ!回復魔法を!」
フレイヤはサメ男の胸に手を置いてから首を振って言った。
『ダメだわ、強力な即効性の毒みたい。きっともっと前から毒を飲んでいたようね』
フレイヤの言葉にフィンは驚いてしまった。そうなるとサメ男はもっと前から死ぬ覚悟だったという事だ。フィンはサメ男に質問した。
「何故死のうとするの?」
「私はこの上もない幸せ者だからです。美しい精霊と霊獣に見守られながら死ねるのです。もう思い残す事は何もありません」
フィンはハッとした。このサメ男は霊獣や精霊に対してこの上もない執着心を持っていたが、サメ男は本心から霊獣と精霊を愛しているのだとわかった。フィンは穏やかな声で聞いた。
「貴方の名前は?」
「フアト」
フィンは痛ましそうに顔を歪めてから、自身の契約霊獣に言った。
「ブラン、お願い。この人を看取ってあげて?」
ブランはうなずくと小さな前脚をサメ男、フアトの胸にチョコンと乗せて言った。
『フアト、アタシは貴方を許します』
リリーもフレイヤにお願いした。フレイヤはうなずくと、美しい手をフアトの胸に置いて言った。
『フアト、安らかに眠りなさい』
フアトの小さなサメの目から、ツウッと涙がこぼれた。フアトは息も絶え絶えになりながらフィンに言った。
「若き召喚士よ。慈悲深いとむらいを感謝する。私の魔物の力が気になっただろう?私に魔物の力を授けた魔物は、メグリダと言っていた」
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