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エスメラルダの考え

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 プリシラは慌てて姉を止めた。

「ちょっと待って、お姉ちゃん。王女さまとネリオさんの事は解決したけど、ウィード国の脅威についてはまだ解決していないわ?」

 プリシラはチラリとドリスとネリオを見つめた。ネリオはグッと下唇を噛みながら口を開いた。

「魔女エスメラルダ殿。どうかウィード国軍に力を貸してくれないだろうか?我々は今、大きな脅威とあいまみえているのだ」

 エスメラルダは面倒くさそうにネリオに振り向いて言った。

「西の国境付近には国は無いわ。永遠と森が広がっているだけ。一体何と戦うっていうのよ?」
「相手は人間ではありません。森の民なのです」

 エスメラルダとプリシラは首をかしげて顔を見合わせた。ネリオの言葉の意味がわからなかったからだ。ネリオは実際に目にすればわかると言って、プリシラたちを兵士たちの待機場所に案内した。

 プリシラはタップを抱きながら姉と共に後に続いた。そこはたくさんの兵士が待機していて、中には休憩を取っている者たちもいた。ネリオは兵士たちに軽い会釈をされながら進んでいた。

 ドリスはフードをまぶかにかぶっていてので、兵士たちは王女と気づいていなかった。

 ネリオは黒山の人だかりとなっている場所に行き、取り囲んでいる兵士に声をかけて中に入った。プリシラたちが人の輪の中に入っていくと、そこにはずんぐりむっくりの小柄なひげ面の男が座っていた。彼はクサリでぐるぐる巻きにされていた。

 プリシラは彼の痛ましい姿に心を痛めた。取り囲む兵士たちは口々に小柄な男をののしっていた。だが男は兵士たちの言葉にまるで反応しなかった。彼はウィード国の言葉がわからないのだろうか。

 プリシラの疑問に、腕の中のタップが答えた。

『奴は人間じゃねぇ。森の民、ドワーフだ』
「ドワーフ?じゃあ私たちの国はドワーフたちと戦うの?」
『ふんっ。人間は寿命が短いが、とにかく増えるからな。ドワーフは寿命が長いが、あまり数が増えねぇんだ。森の中で穏やかに暮らしている温厚な連中だ。そんな奴らが人間に怒ってるんだ。何か人間がやらかしたんだろう』
「それなら、ドワーフさんの話しも聞かなきゃ!あっ、でも人間の言葉ではドワーフさんと話せないわね?」
『俺、ドワーフ語わかるぜ?』
「本当?!さすがタップ」

 プリシラの喜びに、タップはまんざらでもなさそうだった。プリシラはタップに言われ、ドワーフの側に近づいた。姉のエスメラルダも、プリシラを守るようについてきた。
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