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トビーの冒険3

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「ゴンザのおっちゃん!」

 トビーが悲鳴をあげながら、ゴンザをゆり起こそうとすると、トビーの目の前に強盗の一人が立っていた。

「ガキが!ふざけたマネしやがって。ぶっ殺してやる!」

 盗賊の顔は怒りにゆがんでいた。トビーの風攻撃魔法から、意識を取り戻してしまったのだ。

 トビーは泣き出したくなった。ゴンザの治療を早くしなければいけないのに、目の前の強盗は、今にもトビーにつかみかかろうとしている。

 トビーは正義の味方などではなかった。大人に守られなければならない小さな子供だった。このままトビーは殺されてしまうのかと思った。

 トビーを命がけで守ってくれたゴンザを助けられないまま。

 ふとトビーの脳裏に、風魔法の師匠であるプリシラの姿が浮かんだ。プリシラは風魔法の指導をする時、いつも決まって言う事があった。

 トビー。私たちは風魔法が使えるわ。だけどそれは、私たちが特別なわけでも何でもない。神さまが私たちにくださった贈り物なの。

 だからね、トビー。この力は自分のために使ってはいけないの。この力は困っている誰かのために使うのよ。

 大きな力を持つという事は、大きな責任もともなうの。トビーは子供だけど、風のエレメントを操れるエレメント使いなの。

 トビーの身体の震えが止まった。師匠の言葉を忘れるところだった。トビーには助けを求める人を守る責任があるのだ。

 トビーは右手の人差し指に風魔法を集中させた。指先に小さな球体が出現した。

 トビーはその球体を、今にも自分に襲いかかってこようとする強盗の大腿部に狙って放った。

 プツッ、と穴のあく音がしたかと思うと、強盗はギャアッと悲鳴をあげ、左足を押さえてのたうち回った。おさえている手の下から、ドクドクと血が吹き出している。

「痛ぇよぉ、痛ぇよぉ。助けてくれよぉ」

 大の男が小さな子供のように泣き出した。トビーはスーッと心が冷えていくのがわかった。これは怒りの感情だ。ゴンザとトビーを平気な顔で殺そうとしたくせに、いざ自分が傷付けば、助けを求める姿が無様だった。

「太い血管は外している。自分で止血しろ。仲間を起こして病院に連れて行ってもらえ」

 トビーは低い声で、のたうち回る強盗に指示を出すと、倒れたまま動かないゴンザのケガの状況を観察した。

 ゴンザは、背後からナイフで刺されていた。強盗が、小柄なトビーを狙ったため、右腰背部に刺さっている。ドクドクと出血しているが、ナイフを抜いてはいけない。

 ナイフを抜いた途端、大量出血して失血死してしまうからだ。

 なぜトビーが外傷について知識があるかというと、プリシラに教わったのだ。

 プリシラは、トビーが危険に巻き込まれないかと、とても心配して、ケガをした時の対処法を事細かにおしえてくれた。

 トビーは、なぜプリシラに外傷の知識があるのかと聞くと、心配性の姉から教わったと答えた。

 トビーはゴンザを風浮遊魔法で空中に浮かすと、一目散にマージ運送会社まで急いだ。

 

 
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