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姉妹
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プリシラは大きくなったタップの背中に乗って、ゆっくりと夜空を飛んでいた。一人ではない。大切な姉のエスメラルダと一緒に。
いつもならエスメラルダを背中に乗せる事を断固拒否するタップだが、今は機嫌がいいのだ。
『イッヒッヒ。今思い出しても笑えるぜ!プリシラのイジワルな両親の顔色が変わる瞬間がよぉ』
タップは姿隠しの魔法を使って、ずっとベルニ子爵夫妻を観察していたのだ。
タップはベルニ子爵夫妻がプリシラを捨てた事をとても怒っていて、いつかこらしめてやると、ずっと言っていたのだ。
だがタップが手を下すまでもなく、ベルニ子爵家はウィード国王によって、取り潰しになるようだ。
プリシラはエスメラルダの事が心配になった。プリシラはパルヴィス公爵夫妻という新たな家族ができたが、エスメラルダは家族も屋敷も失ってしまう事になるのだ。それに、プリシラの事をかげになりひなたになり守ってくれた使用人たちが路頭に迷ってしまうのではないかと考えたのだ。
「お姉ちゃん、これから大丈夫?」
プリシラは、自分のとなりに座って、月夜を眺めているエスメラルダに言った。
「何が大丈夫なの?」
「だから、ベルニ子爵家が無くなってしまう事よ」
「ああ、そんな事?それなら心配ないわ。ドリスと事前に約束しておいたの。お父さまとお母さまを別荘に幽閉したら、特例措置として私一代かぎりベルニ子爵として認めてくれるわ」
エスメラルダはウィード国の王女を、まるで友人のようにぞんざいに言った。どうやらドリス王女とエスメラルダは個人的に会って話しをしているようだ。
「お姉ちゃんがベルニ子爵さまになるの?」
「本当の事を言うと、爵位もベルニ子爵家の事もどうでもいいんだけどね。だけどプリシラが大好きなメイド頭や使用人たちが困ると、プリシラ泣くでしょ?」
「お姉ちゃん!ありがとう!」
プリシラは思わず姉に抱きついた。エスメラルダはプリシラの背中に手を回して、ポンポンと優しく叩いてくれた。
「プリシラは大丈夫なの?憎いお父さまとお母さまに五年ぶりに会ったでしょ?嫌な気持ちにならなかった?」
本当の事を言うと、プリシラは実の両親に会う事が怖かった。両親に会ったらどんな気持ちになるだろうか。怒りが湧いて、どなり散らすだろうか。悔しくなって泣きわめくだろうか。
だが実際は違っていた。プリシラには守り愛してくれる父母がいるのだ。パルヴィス公爵がプリシラを抱きしめてくれ、公爵夫人がプリシラの背中に優しく手を当ててくれた。そのあたたかさがプリシラの冷えた心を溶かしてくれた。
実父母は、プリシラがパルヴィス公爵家の養女になった事を知ると、手のひらを返したようにすり寄って来た。そのゆがんだ笑顔がこっけいで、どうにもあわれに見えた。
プリシラが小さな頃、恐れ慕い求めていた両親は、とても愚かな人間たちだったのだ。
「大丈夫よ?お姉ちゃん。私には、本当に私の事を愛してくれるお父さまとお母さま、それにお姉ちゃん、弟のトビー、タップがいるもの」
プリシラの言葉に、エスメラルダはホッと安どのため息をもらした。
いつもならエスメラルダを背中に乗せる事を断固拒否するタップだが、今は機嫌がいいのだ。
『イッヒッヒ。今思い出しても笑えるぜ!プリシラのイジワルな両親の顔色が変わる瞬間がよぉ』
タップは姿隠しの魔法を使って、ずっとベルニ子爵夫妻を観察していたのだ。
タップはベルニ子爵夫妻がプリシラを捨てた事をとても怒っていて、いつかこらしめてやると、ずっと言っていたのだ。
だがタップが手を下すまでもなく、ベルニ子爵家はウィード国王によって、取り潰しになるようだ。
プリシラはエスメラルダの事が心配になった。プリシラはパルヴィス公爵夫妻という新たな家族ができたが、エスメラルダは家族も屋敷も失ってしまう事になるのだ。それに、プリシラの事をかげになりひなたになり守ってくれた使用人たちが路頭に迷ってしまうのではないかと考えたのだ。
「お姉ちゃん、これから大丈夫?」
プリシラは、自分のとなりに座って、月夜を眺めているエスメラルダに言った。
「何が大丈夫なの?」
「だから、ベルニ子爵家が無くなってしまう事よ」
「ああ、そんな事?それなら心配ないわ。ドリスと事前に約束しておいたの。お父さまとお母さまを別荘に幽閉したら、特例措置として私一代かぎりベルニ子爵として認めてくれるわ」
エスメラルダはウィード国の王女を、まるで友人のようにぞんざいに言った。どうやらドリス王女とエスメラルダは個人的に会って話しをしているようだ。
「お姉ちゃんがベルニ子爵さまになるの?」
「本当の事を言うと、爵位もベルニ子爵家の事もどうでもいいんだけどね。だけどプリシラが大好きなメイド頭や使用人たちが困ると、プリシラ泣くでしょ?」
「お姉ちゃん!ありがとう!」
プリシラは思わず姉に抱きついた。エスメラルダはプリシラの背中に手を回して、ポンポンと優しく叩いてくれた。
「プリシラは大丈夫なの?憎いお父さまとお母さまに五年ぶりに会ったでしょ?嫌な気持ちにならなかった?」
本当の事を言うと、プリシラは実の両親に会う事が怖かった。両親に会ったらどんな気持ちになるだろうか。怒りが湧いて、どなり散らすだろうか。悔しくなって泣きわめくだろうか。
だが実際は違っていた。プリシラには守り愛してくれる父母がいるのだ。パルヴィス公爵がプリシラを抱きしめてくれ、公爵夫人がプリシラの背中に優しく手を当ててくれた。そのあたたかさがプリシラの冷えた心を溶かしてくれた。
実父母は、プリシラがパルヴィス公爵家の養女になった事を知ると、手のひらを返したようにすり寄って来た。そのゆがんだ笑顔がこっけいで、どうにもあわれに見えた。
プリシラが小さな頃、恐れ慕い求めていた両親は、とても愚かな人間たちだったのだ。
「大丈夫よ?お姉ちゃん。私には、本当に私の事を愛してくれるお父さまとお母さま、それにお姉ちゃん、弟のトビー、タップがいるもの」
プリシラの言葉に、エスメラルダはホッと安どのため息をもらした。
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