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リベリオの覚悟

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 エスメラルダという魔女は、リベリオが足元にもおよばない強大な魔力を持った魔女だ。リベリオがこれまで出会ったどの魔法使いよりも彼女が頭抜けて強かった。

 リベリオは悔しかった。リベリオは自分の事を天才魔法使いだと思っていた。それはうぬぼれではなく、魔法学校の教師も同級生も皆リベリオを褒めたたえていたからだ。

 リベリオは天才などではなかった。ただ少し器用な魔法使いに過ぎなかった。類まれなな天才とは、エスメラルダのような魔女をいうのだ。リベリオはどうあがいてもエスメラルダには勝てなかった。だがこの戦いから逃げるわけにはいかない。

 リベリオが心から愛しているプリシラに二度と会えなくなるかもしれな瀬戸際なのだ。エスメラルダに勝てないまでも、反撃の一つはしなければ。

 魔法使いとは、火、水、風、土すべてのエレメントの力を使える者の事をいう。だがエレメントにも相性というものがあり、良い相性のエレメントがあるのだ。

 リベリオと相性の良いエレメントは水だ。そのため火魔法は少し苦手なのだ。おそらくエスメラルダと相性の良いエレメントは火だ。だがエスメラルダはエレメントの相性を抜きにしても、すべてのエレメントの魔法を使う事ができるのだ。

 リベリオがエスメラルダに対抗できる唯一の手段は、リベリオが使える一番強い魔法を使わなくてはいけない。

 リベリオは精神を集中させ、長い呪文の詠唱を行った。この魔法は呪文に時間がかかるため、エスメラルダから距離を取る必要があった。

 ようやく呪文を唱え終えた直後、エスメラルダがあらわれた。エスメラルダは、リベリオが何らかの魔法を発動させようとしている事に気づいたようだ。距離を取って様子をうかがっている。リベリオは大量の魔力消費でひへいしながらも、表面上は余裕の笑みを浮かべた。

「やぁ、エスメラルダ。お早いおつきで。これが、俺のプリシラへの愛の大きさだよ?」

 リベリオは下げていた右腕を天に突き上げた。すると、巨大な水のドラゴンが出現した。

 リベリオが使える中で最強の魔法だ。水のドラゴンは縦横無尽に空中を飛び回った。リベリオは水のドラゴンに指示を出す。エスメラルダに攻撃を開始しろ、と。

 水のドラゴンは咆哮をあげ、エスメラルダに水攻撃魔法を放った。水はどのような形にも変化する。強力な水の勢いは、岩をも砕くのだ。

 水のドラゴンの激しい攻撃魔法を、エスメラルダは涼しい顔で、防いでいた。リベリオの最大魔法でもだめか。リベリオが落胆していると、エスメラルダの表情に変化が起きた。

 それまでの張りついたような笑顔から、心底楽しそうな表情になったのだ。

「面白い魔法じゃない。盗ませてもらうわ」

 
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