最恐魔女の姉に溺愛されている追放令嬢はどん底から成り上がる

プリシラの友達3

　チコは頭をかきながらリベリオに言った。

「私ってさぁ、こんなでしょ？だから学校でいつもいじめられてたの。お前みたいな性格の悪い奴、絶対に召喚士になんかなれないって」

　リベリオは意外に感じていた。召喚士養成学校の生徒は、皆心が綺麗な子供たちだと思っていたからだ。召喚士養成学校の中でも、いじめは存在するようだ。

「そんな時はいつもプリシラが私を守ってくれた。人の一面だけ見て、その人を決定づけるなんて愚かな事だって。チコにはたくさんのいい面があるんだって」

　プリシラの事を話すチコの表情は優しげだった。肩に乗った小人がチコの頬にキスをする。チコはくすぐったそうにしてから、小人を優しく撫でた。その後、ニヤリと笑って言った。

「まぁ、私はプッチと契約できて、私をいじめていた連中は皆召喚士になれなかったけどね。ケケケッ」

　チコは変な笑い方をして笑った。サラはそんな親友をにらんでからリベリオに視線をうつして言った。

「私だってそう。怖がりの臆病で、一人じゃ何にもできなかった。召喚士養成学校に入ってから最初の試験があったの。私たちの担任の先生の契約霊獣は雄々しいライオンだった。先生は自分の契約霊獣に触れれば試験合格だと言ったわ。きっと度胸試しだったのよ。生徒たちは怖がっていたけど、一人一人ライオンの霊獣に触れて行ったわ。だけど私はダメだった。怖くて怖くて、ブルブル震えていた。プリシラは、しきりに私に一緒に行こうと言ってくれたの。でも私は一歩も動けなかった。このままではプリシラも試験に落ちてしまうと思ったから、私に構わず行ってと言ったの。だけとプリシラは、私の手を握って言ったわ。サラと一緒って。だから私もプリシラも試験に落ちてしまった」

　リベリオは小さな頃のプリシラの話しを聞く事が嬉しかった。プリシラはそんな頃からとても優しかったのだ。リベリオがサラに話しの続きをうながすと、彼女は苦笑してから言葉を続けた。

「試験に落ちて私はとても落ち込んでいたわ。プリシラまで巻き込んでしまったし。次の日の休憩時間に、プリシラが外に行こうと言うの。私がプリシラについて行くと、そこは学校の裏にある森の中だった。プリシラが指差す先を見てみると、そこには先生の契約霊獣が日なたぼっこをしていたの。気持ちよさそうに目をつむっていたわ。プリシラが言うの。ねぇ、まるで猫ちゃんみたい。可愛いねって。プリシラは私の手を引いてライオンの霊獣の側まで行くと、ライオンの頭を撫でたの。ライオンはグルルと鳴いて喜んでいるようだった。プリシラにうながされて、私もライオンを撫でた。お日さまで温まってて、フワフワしていて気持ちよかった。これで私とプリシラも試験に合格したわ。今思えば、プリシラと先生が、私を合格させるために打ち合わせてくれたんだと思う」　

　サラはそこまで話し終えると、リベリオの目をしっけり見て言った。

「私とチコは、本来なら召喚士になれるような人間じゃないの。ひねくれてて、嫉妬深くて、自分の事が大嫌いだった。だけどね、プリシラが、サラのその考え、とても素敵よ。とか、チコのそんなところ大好きって言ってくれるの。だから私たちは、プリシラがこんな私たちを好きと言ってくれるんだから、私たちにもいいところはあるんじゃないかって思えるようになった。私たち、自分の事が少しだけ好きになれたの。だからね、私たちが召喚士になれたのはプリシラのおかげなの」

　サラはそう言って、膝の上の毛深い犬を抱きしめた。