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ドウマ国

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「わかったわ、ドリス。ドウマ国の偵察に行ってくるわ。それでいいんでしょ?」
「うむ。では誰か共につけよう。チコとサラはどうだ?」
「だめよ!あの子達は足手まといよ」
「ならばウィード国お抱えの魔法使いを二人つけよう」
「そんなの不要よ。これから行ってくるわ」
「ちょっと待て!いくら最強の魔女であるお前でも、ドウマ国相手は無茶だ!」

 エスメラルダはぐだぐだとうるさいドリスを無視して空間魔法を発動させた。

 エスメラルダはウィード国の東の上空にいた。エスメラルダは空間魔法で、目的の場所や人物に目印をつければ、瞬時にその場所、人物の所まで行く事ができる。

 だがドウマ国の詳しい場所はわからないので、これから飛行魔法で現地まで飛ぶしかない。

 空はまだ闇に包まれている。今頃プリシラは夢の中だろう。

 エスメラルダはプリシラの事を考えるのはやめにして、空を飛ぶ事に集中した。眼下には広い森が広がっている。

 ドウマ国が国を名乗ってからは、東の土地は旅人も通る事を避けるようになった。

 魔力を誇示して近隣諸国に難癖をつけ、金品を要求するドウマ国は、どの国にとっても目下のたんこぶだ。

 どれほどの距離を飛んだだろうか。エスメラルダは強力な魔力の反応を感知した。

 すぐ近くに強い魔力を感じる。エスメラルダが空を飛ぶ速度をゆるめ、ゆっくりと飛行すると、町といってもいいほどの集落があった。どうやらここがドウマ国らしい。小さな集落ではあるが、魔力感知のできるエスメラルダからすれば恐ろしい場所だった。

 おそらく住人のほとんどが高い魔力を有しているのだろう。町全体にも魔力感知の魔法がほどこされており、魔法使いが近づこうものならすぐに気づかれてしまう。

 どうしたものか。エスメラルダは自身に姿隠しの魔法をほどこして、透明になった状態でドウマ国を観察した。

 一見したところ、ドウマ国には畑が無い。つまり国民が作物を生産していないという事だ。それならば、生活のために食物や生活用品をドウマ国に運ばなければならないだろう。

 エスメラルダはひたすら機会を待った。すでに日は上りあたりは明るくなっている。ドウマ国の連中は怠惰な人間が多いようだ。朝日が登ったのにも関わらず誰も起きてはこない。

 ドウマ国の民は魔力の強さを鼻にかけ、労働をしないようだ。近隣諸国を脅して金を巻き上げ、それで生活をしているようだ。これではただの強盗団と変わりない。エスメラルダはドウマ国を一掃しようと心に決めた。
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